10月は秋の運動会シーズンですが、ここ最近、運動会を巡って、ある問題が起きています。保護者による写真・ビデオ撮影について、「スマートフォンの使用を禁止」する学校があるんだそうです。つまり、デジカメやビデオカメラはOK。その背景には、保護者がSNSなどネット上に写真をアップすることによって子どもたちの個人情報が流出するリスクがあり、スマートフォンはアップロードが容易にできてしまうから、という理由があるんだとか。この動きについては、賛同する声がある一方で、スマートフォンが使用できないのは不便だという親御さんの意見もあり、議論を呼んでいます。そこで、この時間は「学校行事の写真・ビデオ事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方に回線をつないでお話を伺います。

●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん
Q1 学校行事での子どもの写真・動画の扱い、イギリスではどうですか?
A1 個人情報の取り扱いについては、原則としては日本同様だと思います。学校行事で撮った写真をネット掲載については、しないよう注意されています。特に、自分の子供であれば自己責任となりますが、クラスメートなどの写真を本人の許可なく配布もしくネットなどで載せ、何か事件が起きた場合、法的問題になるケースもあるので要注意です。また、宗教上の理由により写真を拒む方もいらっしゃるので注意が必要です。
Q2 ちなみに、イギリスでは、保護者が観覧(参加)するようなものだと、どんな行事があるのでしょうか?
A2 クリスマスの劇や、年度終わりにある卒業パフォーマンス(劇)などにはほとんどの保護者が参加します。また、社会学習の消防署見学や博物館見学、そして遠足にも何人かの保護者がクラスを代表して参加しています。先ほどコメントしましたネット掲載の禁止、関係者以外の配布禁止、不正利用しないという原則が守られる条件で、イベント会場でのカメラやスマホの使用自体は禁止されていません。遠足については、同行する保護者が代表して、遠足の風景をWhatsAppグループなどで写真やビデオを実況中継的に配信してくれてることが多く、保護者の間で好評です。もちろん、コンセンサスを取った親だけに限定されますが。
Q3 ネットへの掲載や関係者以外への配布が禁止されているということは、撮影機器による制限はない、ということでしょうか?
A3 ほとんどの方がスマホなので、そういうデバイスによる区分はないと思います。逆に、デジカメとかビデオカメラを会場で使っているほうが目立ち、他の保護者の注目を浴びているかもしれません。
Q4 学校側で写真や動画を撮影してそれを販売、配布、配信したりということはありますか?
A4 学校によるのかもしれませんが、学校が代表して撮影し配信するようなことはしていないイメージです。小・中・高の多くの学校がほぼ行っている
●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん
Q1 学校行事での生徒の写真・動画の扱いについて教えてください。
A1 ロサンゼルスの学校では、入学する際に学校から書類を渡され必要事項を記入します。その中に、『学校行事などでお子さんの写真撮影をしてもいいですか?』という質問が必ずあります。『よい』にチェックを入れると、『自分の子供の写真が学校紹介のHPや、学校から発行される雑誌などに載っても構いません』という事になります。ここで『いいえ』にチェックを入れると、一切写真は掲載されません。
Q2 アメリカ(ロサンゼルス)で保護者が観覧・参加するような学校行事は、どんなものがありますか?
A2 観覧というと、小学校ですがクリスマスコンサートがポピュラーです。各学年ごとにステージに立ってクリスマスソングを歌うというもので、こういったコンサートは春にも開かれて年に2回開催している所が多いです。あとは卒業式は華やかですね!親子でドレスアップして参加します!参加というと、ボランティアで色々な場面に関わる事が出来て、小学校の場合、フィールドトリップ(社会科見学)で子供たちのサポートをしたり、ハロウィンやサンクスギビング、クリスマスといったイベントの前にクラスでパーティーを開いたりするんですよ、アメリカって。明日も息子の学校でハロウィンパーティがあるので、私もお手伝いに行きます(笑)。あとは通常のクラスでも先生のヘルパーとして親が教室に入る事ができます。
Q3 そういった行事での保護者による写真・動画の撮影、さらにネットへのUPについてはどうなっていますか?
A3 どんな場面でも写真や動画を撮っても大丈夫です。ネットへアップする人もいますが、団体写真ではなく、自分の子供の写真だけアップしてます。暗黙の常識になってますね。ですからお子さんが友達みんなと一緒に写真を撮った後、自分の子供一人だけの写真を撮り直す親が多いです。
Q4 学校側が写真や動画を撮影して配布・配信したりするものもあるんでしょうか?
A4 先ほど親がボランティアで学校に関わる事が出来ると言いましたが、コロナ禍では学校スタッフと生徒だけしか校舎に入れなかったため、学校側が1週間の様子を文章と写真や動画で紹介するウィークリーリポートをメールで配信してくれました。でももうコロナの対応はすっかり終わっているので、今は特にこういった事は行われていません。
Q5 学校側の対応以上に、保護者側も個人情報の扱いがしっかりいている印象ですが、こういった背景について教えてください。
A5 アメリカでは性犯罪の件数が非常に多いんです。今年4月に発表された情報だと、性犯罪の件数はアメリカ国内で約76万7000件発生していて、昨年よりも2%増えています。そのうちカリフォルニア州は約6万件と、テキサス州の約10万件に次いで2位の高さになっています。また自分の住むエリアのどこに性犯罪歴のある人が住んでいるかをインターネットで検索する事も出来るほど、身近に性犯罪者がいる事を確認出来るので、身近な情報も公表したくないという親も多いようです。