きょう5月3日は「憲法記念日」、あす5月4日は「みどりの日」です。そして、あすは「名刺の日」でもあります。5月を英語で「May」、4日で「し」、「メイ、シ」ということで、「名刺の日」。日本名刺研究会が制定した記念日なんだそうです。日本のビジネスシーンでは欠かせない名刺交換。海外ではどうなっているのでしょうか?そこで、この時間は、「世界の名刺事情」と題して、2つの国の番組通信員の方にお話を伺います。

●アメリカ・シカゴ在住 / 川平謙慈さん

Q1 アメリカのビジネスシーンで、紙の名刺を交換する慣習は今もあるのでしょうか?

A1 あります。ビジネスシーンで初対面の人と名刺を交換するのは今でも一般的です。

Q2 日本だと名刺は両手で渡す、目下の人間は下から差し出す、など独特なマナーもありますが、アメリカではどうでしょうか?

A2 細かいしきたりやマナーは特にありません。序列を見える化する儀式やしきたりが日本に比べると希薄なので、並べる順序なんかを気にするアメリカ人はまずいません。でも、もちろん、手渡された名刺をぞんざいに扱ったりするのは失礼だと思われます。例えば、見もせず直ぐにポケットに入れてしまうとか。あるいはテーブルの向こうに座っている人に自分の名刺を投げ渡すとか。また、いかにカジュアルな文化と雰囲気のアメリカでも、いきなり名刺を差し出すことはあまりありません。むしろ、マナーとして、まず相手に「名刺を頂けますか」とお願いをした後に、「それでは私も」という感じで渡すのが礼儀のあるスタイルです。

Q3 名刺に記載されている内容、デザインで日本と違うところはありますか?

A3 ほとんど同じです。社名、名前、肩書、連絡先ですね。メールアドレスと携帯番号はほとんどの場合含まれます。しかし、最近の傾向では住所が含まれていないケースが増えている感じです。実際に郵便を使うシーンは今ではほとんどありませんし、在宅ワークが増えているので、会社の住所の意味が薄れてきています。最近見るようになったのがQRコードです。これで自社の伝えたい情報を見てもらうのが目的の様です。また、日本と比べるとカラフルな名刺が多い感じです。

Q4 デジタル上で連絡先を交換することも増えているとか?

A4 紙の名刺を貰った後に、世界最大級のビジネス特化型SNSであるLinkedInでフォローするスタイルが一般的になりつつあります。

Q5 そのほか、名刺や連絡先交換について感じることはありますか?

A5 名刺は、実際に顔を合わせる相手としか交換できないので、顔を合わせない人達と連絡先交換の場合は基本的にメールとなります。国が広いからなのでしょうか、ウェブ会議でしか顔を見たことがない人達と付き合うケースがたくさんあります。そのため、しっかりした企業や団体ほど、メールの一番下にある署名欄のフォーマットに気を使っている様です。すなわち、社員個人に任せているのではなく、会社としてきちんとしたフォーマットをもっていて、必要な情報を読みやすく、企業のブランド感を伝える統一されたデザインを全員が使っています。個人的な印象ですが、この点はまだ日本の企業には浸透していない様です。同じ会社なのに、てんでばらばらなのが多いです。

中国・北京在住のライター、斎藤 淳子さん

Q1 中国のビジネスシーンで、名刺交換の慣習はあるのでしょうか?

A1 昔はありましたが、今は日本人コミュニティーを除いて、ほとんどデジタルでのやり取りです。日本人同士では、業界によってはまだまだ使っているよという方もいますが、もう持っていないという人もいます。中国の方で名刺をくれる方は1割位でしょうか。かなりマイノリティです。

Q2 ちなみに、名刺がデジタルに移行したのはいつ頃でしょうか?

A2 QRコードの交換が一般的になったのはだいたい2015年以降です。もちろん、一気に以降したのではなく、だんだんと、という感じです。

Q3 では、まだ紙の名刺が主流だった使っていた頃、日本のようなマナーはありましたか?

A3 元々、中国は質実剛健で、形をあまり問わないです。スーツ姿も少なく、官公庁でもカジュアルな格好の方が多いですし、日本程礼儀にはこだわらないです。名刺交換に関しても同じで、例えば、日本ではNGな座ったままテーブル越しに渡すことなども普通にありました。

Q4 では、話を現代に戻して、デジタルでの連絡先の交換、どのようにおこなうのでしょうか?

A4 国民的アプリのWeChatの自分のQRコードを示して、もう一人がそれをスキャンする形で二人が繋がります。こちらが名刺を渡しても、大抵先方は持っていないので「じゃあ、WeChatでつながりましょう」となるのが一般的です。WeChatで繋がったあと、更に、写真に撮ったデジタル名刺を送り合うこともあります。これは最近少しずつ増えている感じです。

Q5 日本でいうと、ビジネスシーンでLINE交換する感じですね。日本ではビジネスの場で得た個人情報は"会社の資産"として管理する傾向がありますが、中国ではどうですか?

A5 あんまり聞かないですね。顧客管理データを作っている会社や、ホームページを見た人をAI分析するなどはありますが、みんなで名刺を共有というのはあまりききません。また、基本的に米国と同様に個人プレーの文化なので、シェアして共有するという考え方自体があまりなさそうです。逆に、会社を辞める時に、顧客をごっそり連れて辞めた、なんていうトラブルも聞いたことがあります。