8月15日は「終戦の日」でした。終戦から79年を迎えたきのう、日本武道館では政府主催の「全国戦没者追悼式」が行われ、およそ4300人が参列。従来の形としては5年ぶりの開催でした。また、全国各地で追悼行事もおこなわれ、先の大戦で犠牲となった方々を悼みました。

ポツダム宣言を受諾した翌日、ラジオで放送された昭和天皇の「玉音放送」によって、日本の無条件降伏が国民に公表されたのが8月15日で、日本ではこの日を「終戦の日」としていますが、海外では違うようです。戦勝国となった国では戦いが終結した日を「戦勝記念日」と制定しています。そこで、この時間は、2つの国の番組通信員の方にそれぞれの「終戦記念日」について、お話を伺います。

●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん

Q1 アメリカで、第二次世界大戦の終戦を記念する日について教えてください。

A1 アメリカでは戦勝記念日です。英語でVictory Days 略してVDAYVDAYには、2つあって、ひとつはヨーロッパでナチスドイツが降伏した1945年5月8日。この日を、正確にはVE DAYと呼び、日本が無条件降伏して玉音放送が流れた1945年の8月15日はVJ DAYと呼びます。さらに日本の降伏調印が同年9月2日だったため、9月2日のこともVJ DAYと呼んでいます。

Q2 対日戦勝記念日=VJ DAYが2つあるということですか?

A2 どちらも勝利の日ですね。両日とも特に公的な式典が行われるわけではありませんが軍隊では記念日として祝福されるようです。

Q3 アメリカの人々にとって「V DAY」は、どんな日なのでしょうか?

A3 アメリカも、日本とは比べ物にはなりませんが、第二次大戦中は、挙国一致の軍事体制で国民も苦しい統制生活を強いられていたので、そこからの解放には大きな喜びがあったと思います。8月15日は、暗黒の戦争時代の終わりであると同時に、平和の時代の幕開けでした。「今日という日は、この地球上における自由の歴史の新たな始まりです。私たちの世界的な勝利は、自由な男女の勇気とスタミナ、そして闘う決意で団結した精神からもたらされたのです」というトルーマン大統領の勝利宣言もあるように、「戦い」や「争い」を否定する空気は微塵もなく、戦死者への哀悼は後回しになっています。その後アメリカは、米ソ冷戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク侵攻はもとより世界中の紛争や戦争に関わり、第二次世界大戦時をはるかに上回る犠牲者を出して今現在もウクライナやイスラエルの戦争にどっぷり絡んでいます。ニューヨークに住めば住むほど戦勝記念日というのはどうよ?との思いが強くなりますね。実際に、アメリカではVJ、VEの日に関心が薄れてきた感もあって、それはそれでいいような気もします。

Q4 少し話題変わりますが、第二次世界大戦の終戦当時、ニューヨークでVJ Dayを象徴する写真が撮られたとか?

A4 はい。長身の海兵隊の水兵と、小柄な一般女性がタイムズスクエアの真ん中で喜びの「のけぞりキス」を交わす瞬間を捉えた写真。英語ではThe Kiss。日本語タイトルは「勝利のキス」です。当時、写真誌LIFEの記者だったアルフレッド・アイゼンスタットが撮影しました。米国の戦勝を象徴する一枚で、世界中に拡散されました。

Q5 2人は恋人同士だったんでしょうか?

A5 誰でもそう思いますよね。ところが違うんです。細かい話になりますが、写真を撮られたのは(時差の関係もあって)1945年8月14日。午後7時にトルーマン大統領の勝利宣言がラジオで放送されるや、人々は屋外に飛び出して、辺り構わず抱き合って喜びに浸ったそうです。タイムズスクエア周辺も例外ではなく、写真の海兵隊員はお芝居を観ていたブロードウェイ劇場を飛び出して、いちもくさんにタイムズスクエアに向かったそうです。そこは、もう歓喜の渦巻く大広場で、カップルだけでなく見知らぬ男女同士が路上でキスをしまくっていました。海兵隊員も、たまたま、すれ違った女性を抱きしめて唇をうばった次第。後で判明したのですが、女性は、決して同意したわけでなく「イヤイヤ」だったそうです。なので、#MeToo運動の流れもあって、近年この写真は必ずしも礼賛されていません。

●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん

Q1 イギリスの第一次世界大戦の「終戦記念日」について教えてください。

A1 第一次世界大戦ではイギリスは連合国として戦い、19181111日にドイツならび枢軸国に勝利し終戦を迎えました。イギリスならび英連邦加盟国では、この日を戦没者記念日・Remembrance Dayとして、全国で朝11時に2分間の黙とうをささげ、その週の日曜日朝11時に、国王、首相、退役軍人が参加し、戦没者記念式典がロンドン市内で行われています。現在ではこのRemembrance Dayは、第一次世界だけでなく、第二次世界大戦、フォークランド紛争はじめその後の戦争で亡くなった方も含めた記念式典となっています。イギリスは戦勝国ですが、この行事は戦争に勝ったことを祝うものでなく、あくまでも戦争で犠牲になった方、そして戦後苦しんだ人々を追悼する記念式典となっています。

Q2 このRemembrance Dayの時期にする慣習があるとか?

A2 Remembrance Dayが行われる11月の時期、イギリスならび英国連邦の多くの国では、ポピーの花の形をしたバッジを身につける方がいらっしゃいます。ポピーは、悲惨な戦いが繰り広げられ、荒地となった西部戦前のフランス・ベルギー国境付近で、戦争終了後、爆弾や戦車などにより砕いた土を好む、真っ赤なポピーの花が野原一面に咲いた風景に表したもので、ポピーを身に着けることは、戦争で命を失った方への敬意と、平和な未来を願う気持ちを込めていて、販売されたポピーの飾りは戦没者支援のための基金に充てられています。しかし、戦争を賛美するものとして、つけることを拒否している方も多く、最近では平和な世界を祈る白のポピーをつける方もいるようです。

Q3 第二次世界大戦では、日本とイギリスは敵味方に分かれて戦いましたが、第二次世界大戦の戦没者記念日は、イギリスではどのような行事が行われているのでしょうか?

A3 第二次世界大戦のドイツとの戦争が終わった5月8日を(先ほどのアメリカと同じく)VE Day (Vicory in Europe)、8月15日の日本終戦をVJ Day (Victory in Japan)として、2つの戦没者記念式典が開かれています。規模的には、欧州域内の激しい戦いとなったVE Dayが大きく、その反省から戦後EUが生まれたように、欧州各国間の平和を永続を願う行事がイギリスはじめ欧州各地で開かれています。アジアにおる対日戦争では、映画の戦場のメリークリスマス(1983年公開)に描かれているように、戦死者だけでなく、捕虜となり、数多くの方が命を落とした戦争であったため、アジアで従軍したイギリスならび連邦の退役軍人、遺族により式典が行われています。75周年の2020年には、当時のチャールズ皇太子が出席し特別式典が催されました。

Q4 来年は第二次世界大戦の終結から80年となりますが、何か特別なことが予定されているのでしょうか?

A4 来年2025年の5月8日は、80周年のVE Dayとして、特別に国の祝日となる予定です。式典は、イギリス国内だけでなく、各国の首脳が参加し、戦没者追悼式典や平和を祈る集会が各地で催される予定です。