J-WAVEでは、8月30日から9月5日の「防災週間」に合わせて、防災キャンペーン「STAY READY WITH J-WAVE ~安全な未来のために~」を実施します。

今年1月に発生した能登半島地震、度重なる台風や大雨の被害、台風10号の動きも気になります。そして、首都直下型大地震や南海トラフ大地震への警戒も相まって、首都圏を中心に、これまで以上に防災意識が高まっています。そのような背景のもと、災害についての認識を深め、備える「防災週間」に、防災に関する最新情報、役立つヒント、緊急時の対応方法など、知っておきたい防災情報について、この番組をはじめ、J-WAVEの各ワイド番組を中心に発信していきます。

さて、この時間は、「世界の防災事情」と題して、どのような災害を想定し、どんな対策が行われているのか、2つの国の番組通信員の方に、お話を伺います。

●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん

Q1 アメリカ西海岸はもともと地震の多いエリア。最近も少し大きめの地震がありましたし、次、来るかもしれない大地震をThe Big Oneと称しているくらい、みなさん意識されているようですね。

A1 ロサンゼルスはちょうど30年前の1994年にロサンゼルス大地震とも呼ばれる直下型の『ノースリッジ地震』が起きました。カリフォルニア州は北米プレートと太平洋プレートの境界付近に位置するため、日本と同じように地震多発地帯となっています。最近では、今月12日のお昼ごろにM4.4の地震がありまして震源の深さが浅く、ロサンゼルスでも人口が密集した場所で起きたため、広範囲で揺れが感じられました。その前の7月下旬、そして8月初旬にもロサンゼルスで地震が起きています。

Q2 ロサンゼルスにお住いの皆さん、食料や防災グッズなどを備えたりする動きはあったのでしょうか?

A2 こんな状況なのでホームセンターで災害用キット(防災リュック)が売れているのか尋ねてみましたが、以前とあまり変わらないようで、住民の危機感、今現在はそれほど高くないようです。

Q3 州政府やLA市、自治体から市民のみなさんへ、防災への備えについての呼びかけはあるのでしょうか?

A3 ロサンゼルスの郡政府は、The Big One大地震に備えるべき項目をウェブサイトに詳しく掲載しています。政府は最低でも10日間分の十分な食料、水、薬を用意するよう伝えています。具体的には

・水は1人1日1ガロン(約3.8リットル)→10日間で10ガロン(38リットル) (大家族だとかなりスペースが必要)

・食事も家族それぞれの10日分の食料+ペットフードも含まれます。

・アメリカらしいところでは『キャッシュ』『重要な書類』という項目も。カード社会なのでカードが使えない時のための『キャッシュ』。『重要な書類』というのは『出生証明書』『納税申告書』『保険証書』『医療証明カード』など、何でも証明が必要なアメリカらしい項目だと思います。このサイトを見て感じるのが『とにかく自分の身は自分で守って下さい!』という事です。倒壊しない家の建設情報から、地震アラートのアプリの紹介、万が一の地震保険、大地震が起きた場所・・・自宅、オフィス、運転中、海のそば、スタジアムなど、シーン別の対応なども事細かに紹介されています。

Q4 食料などは分かりますが、重要書類を用意しておく、なんて呼びかけもあるんですね! そのほか、公共レベルではどんな防災対策、備蓄などが行われているのでしょうか?

A4 日本では県や市などが災害時の救援物資などを準備していますが、ロサンゼルスではそのような対応は『American Red Cross』=アメリカ赤十字社のロサンゼルス地区が担っています。自然災害から人為的災害などで避難している個人や家族を24時間365日支援するとしています。

Q5 今後、ロサンゼルスで地震が起こる可能性はどのように報じられていますか?

A4 アメリカの地質学調査の報告によりますと、今後30年以内にM6.5レベルの地震(人が立っている事が困難なほどの揺れ)が起こる可能性が、ロサンゼルスエリアで60%、同じカリフォルニア州のサンフランシスコで72%となっています。30年と言っても、30年後かもしれませんし、明日かもしれませんので、備えなければいけないと私も今回改めて感じました。

●フィリピン・マニラ在住 / 澤田 公伸さん

Q1 フィリピンも自然災害の多い国と言われますが、国や自治体レベルではどのような防災対策や備蓄がおこなわれていますか?

A1 フィリピンは火山や台風、洪水などの自然災害が本当に多い国です。そのため、国はまず法律ですべての州や市町などの地方自治体が歳入の5%を災害リスク軽減活動のために防災基金として確保することを義務付けています。この防災基金のうち3割ほどは緊急対応基金として災害宣言を出した後ですぐに救援活動や救援物資の配布が行えるように支出します。また、自治体は救命ボートや救急隊員の確保、避難所の備品の購入、食料の備蓄などを普段から行なっているようです。

Q2 災害を想定してしっかり予算を組んでいるのですね。ほかに、フィリピンではどんな防災対策が行われているのでしょうか?

A2 首都圏マリキナ市ではマリキナ川の氾濫による洪水被害が頻繁に起きるため、川の上昇水位に合わせて3段階の避難警報サイレン(避難準備開始、自主的避難開始、強制避難の3種類のサイレン)を鳴らすなどして住民たちの自主的避難を促し、市役所職員たちが迅速に避難所を設置して、低地に住むペットも含めた全住民の避難を確実に実施する態勢を整えています。この市では3カ月に1回の割合で避難所の設置や避難の訓練、防災セミナーなどを行っているため、小学校低学年の生徒でも一人で避難できるといいます。また、この市では避難所設置から2時間以内に1万食の食事が用意できるよう炊き出しの担当者や炊き出し場所、食料備蓄体制も整えています。

Q3 ちなみに、個人や家庭レベルでの防災対策はどうなんでしょうか?

A3 フィリピンでは貧困層が多いため、個人・家庭レベルでの防災体制や備蓄はそれほど進んでいないようです。しかし、その代わりに災害時にはカトリック教会の支援団体や市民団体、NGOなどが積極的に支援活動を行っており、災害が発生した際の支援物資や食料品の配付などをいつも迅速に手配できるよう準備しています。

Q4 市民の皆さん同士で食料などをシェアする運動も生まれているとか?

A4 コロナ禍以降、フィリピンでは仕事を失った人が一気に増え、政府による現金給付などの支援事業も十分ではありませんでした。その時に自然発生的に住民たちの間で自分の住むコミュニティーの中での助け合い運動が起こりました。典型的なのが「コミュニティーパントリー」(共同体食堂)と呼ばれる地域の人たちが自分たちの持っている食料や必需品を持ち寄って必要とする人に分ける食料等無料配布所の運営でした。また、最近、マニラ首都圏に近いタール火山が噴火した際にも、避難する住民たちを無料で受け入れ食事を提供したり、宿を提供したりする食堂や宿泊施設が首都圏を含めて各地で登場するなど、市民の間の無償奉仕の精神が強いのもフィリピンの特徴かと思います。