毎日いろんな記念日がありますが、おととい、9月11日は「公衆電話の日」でした。明治33年=1900年のこの日、日本初の自動公衆電話が、東京の新橋と上野駅前に設置されたことにちなんで制定されました。1984年のピーク時には日本全国で93万台を超える数の公衆電話がありましたが、携帯電話・スマートフォンの普及にともない減少、2024年3月末時点で11万台ほど、となっています。ちなみに東京都で13000台余り。この公衆電話、海外ではどうなっているのでしょうか?2つの国の番組通信員の方に、現地の公衆電話についてお話を伺います。
●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん
Q1 イギリスでも公衆電話は減ってるんですよね?
A1 日本と状況は同じです。イギリスの大手通信会社ブリティッシュ・テレコム(BT)によると、携帯電話が本格的に普及する前の1990年代前半には全国で10万台あったそうですが、現在は、2万台まで減少し、そのうち、3000台が伝統的な赤の電話ボックスのようです。
Q2 たしかにイギリスの公衆電話といえば、赤い電話ボックスのイメージがありますね。
A2 赤い電話ボックスが誕生したのが1924年。今年で100周年を迎えるそうです。最初の赤い電話ボックスはK2型と呼ばれ、イギリスの建築家Gilies Gilbert Scott(ジャイルズ・ギルバード・スコッツ)氏によりデザインされました。色が赤なのは、郵便ポスト同様、遠くから見つけやすいという理由だったそうです。この初期型のK2は約1700個製造され、第一号のボックスがロンドンの美術館に展示されている他、市内に数か所、現在でも使える状態で設置され、イギリスの文化資産として、Grade IIの認証を受けています。特に人気なのが、同じくアイコンとして有名なビックベンのある国会議事堂近くに設置されている赤い電話ボックスで、写真を撮って、SNSにアップしたいという観光客に大人気で、いつも長蛇の列ができています。
Q3 イギリスの公衆電話は、番号で電話を受けられたりしましたか?
A3 一つ一つに固定電話番号があり、かけることもできます。よくスパイ映画で指定した時間にかけてきたというシーンがありますね。私も真似してスパイごっこしてました。
Q4 では、使われなくなった電話ボックスはどうなっているのでしょうか?
A4 赤い電話ボックスを文化遺産として後世に残すため、ブリティッシュ・テレコム(BT)は、1ポンド(190円)で、市や地域のコミュニティーに売却し、地域の活性化に役立てるプログラムをローンチしています。売却された電話ボックスは、市民間で本を無料で交換しあうミニ・ライブラリー、困った方を助けるフードバンク、心拍停止の救助に使われるAED(自動体外式除細動器)の設置場所などとして活用されています。また、都心では、カフェやケーキ屋さんになどに改造され、人気のスポットとなっています。ちなみに、後期型の赤い電話ボックスは、オークションなどでも買うことできます。お値段は約3000ポンド(日本円で約60万円)で、国内外のバイヤーが購入されているようです。買った方は、ガーデンのオブジェにしたり、中にはトイレやシャワーに改造して使っている人もいるそうです。カビラさんもいかがですか?
Q5 駅やホテルなど、公共施設の中の公衆電話はどうなっていますか?
A5 空港や鉄道駅、そして病院のロビーなどには設置されているところはありますが、数は少なくなっています。ホテルは基本的に宿泊客を対象としているので、設置されていません。
●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん
Q1 ニューヨークの街には全盛期、どのくらいの電話ボックスがあったんでしょうか??
A1 NY市の公衆電話の台数で言えば、最盛期には3万台あったと言われています。ところが21世紀初頭の携帯電話普及にともなって急激に減少をはじめ、それでも、12年前の2012年7月の時点では、約13000台もあったそうです。2014年に電話会社との契約期限が満了して、NYの公衆電話は機能停止しました。
Q2 ニューヨークの電話ボックスはどんなタイプのものだったのでしょうか?
A2 今思い出しても、日本のようなボックスで保護された電話は少なく、縦長の電話機が無造作に壁にかかっている、あるいは屋外だとポールにかけられているようなスタイルが中心でしたね。電話帳を置く台もなければ、メモなどとるスペースもない、囲われてないので会話も筒抜け、という実に素朴なものでした。古い映画やドラマにはNYの公衆電話がよく登場するのですが、記憶にのこっているのが「ダイハード3」。犯人が爆破予告とともにしょうもない無茶振りクイズをブルース・ウィリス扮するマクレーン刑事に出すのですが、やりとりに、路上の公衆電話がつかわれていました。
Q3 NY(アメリカの)公衆電話にはその電話自体の番号が前面に表記されていて、公衆電話で電話をうけられる形態でしたよね?
A3 受けられましたね。悪い事に使う人がいましたよね。こっちにきてショックでしたよ。公衆電話が鳴ってる?!鳴るんだ!!と。
スパイ映画アクション映画でよく見るシーン。・・・・ダイハード3ですよ!! もうこういったシーンもなくなるんですよね。
Q4 現在、ニューヨークの街には電話ボックスは完全になくなってしまったそうですね?!
A4 はい。公衆電話が2014年に廃止されて以来、少しずつ撤去され、2022年の5月23日にマンハッタンは7番街の西49丁目と西50丁目の間にあった最後の公衆電話が撤去されました。最後の公衆電話機はニューヨーク市博物館に保存されています。
Q5 以前電話ボックスがあったところは現在どうなっていますか?
A5 LinkNYCというWiFiのホットスポットになっています。電話の代わりに高さ3メートル幅1.2メートルのキオスクが立っていて、そこでは無料でWiFiがひろえるほか、全米に無料で長距離電話ができる、携帯の充電ができる、といった機能が集約されています。NY市の主導で2014年の11月からサービスが開始されました。2020年時点で1869箇所という数字が出てますから、いまでは2000箇所近くあるのではないでしょうか?
Q6 駅やホテルなどの公共施設の中の公衆電話についてはどうですか?
A6 かつては、公衆電話というと公共施設の中にずらっとならんだイメージがありましたが、これらもすべて撤去されていまでは、「電話を借りにホテルに駆け込む」ような光景はなくなりました。公共施設の公衆電話跡地には、LinkNYCも立たず、そこに電話があった歴史は人々の意識からは消えました。