さて、きのう、明治安田生命保険が発表した「子育てに関するアンケート調査」によると、育児休業、いわゆる「育休」を取得した男性は、去年に比べて2.6ポイント増えて「33.4%」に、また、育休を取得した日数の平均も、去年より1日伸びて「42日」と、いずれも過去最高を更新したそうです。

先進国の中でもトップクラスと言われているのですが、男性の育休取得率はまだまだ低い状況となっています。さて、この「育児休業」、海外ではどのような状況なのでしょうか?この時間は、「世界の育休事情」と題して、2つの国の番組通信員の方に、現地の実情を伺います。

●デンマークの首都・コペンハーゲン在住で通訳や翻訳、コーディネーターのお仕事をされているピーターセン沢田 由希子さん

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Q1 北欧・デンマーク、育児休業についてもかなり制度が進んでいるんじゃないかとイメージしますが、いかがでしょうか?

A1 デンマークの育児休暇制度は進んでいるというよりも、かなり複雑で細かく制定されていると言ったほうが正しいかもしれません。デンマークでは、両親は子供が産まれた際、合わせて52週間の有給育児休暇を取る権利があります。そして、2022年に育児休暇規則が改訂されたのですが、それまで女性と男性の間で女性の方に偏りがちだった育児休暇の分担を是正し、「労働市場や家庭において男女の平等を促進する」内容となりました。さらには、ひとり親や同性カップルに対しても、より柔軟な条件が加えられました。最大の変更点は、二人親家庭の場合、各親が性別に関係なく24週間の有給育児休暇を取得できるようになったことです。加えて出産する女性は出産前に4週間の出産休暇を取得する権利があるので、合計52週間となります。言ってみれば、男性と女性での違いというよりは、ひとり親であるか二人親かで異なる、というわけです。

Q2 そして、育休のあいだ保証される給料についてはどうでしょうか?

A2 給料というよりも育児休暇手当になります。育児休暇手当は、時給と、週に何時間育児休暇を取るかによって計算されます。2024年現在は、育児休暇手当として最高で時給126.89クローネ(税引き前、およそ2800円)を受け取ることができます。フルタイムの場合、週に37時間計算することになります。時給がそれよりも低い場合は、通常の時給分が支給されます。

Q3 会社員ではない、フリーランスの方の場合はどうでしょうか?

A3 フリーランスでも、給与所得者であれば、雇用や勤務の実態、実際に子供と過ごしているかなど、3つの条件を各育児休暇期間の開始時点で満たしている場合は、育児休暇手当を受け取ることができます。また、自営業、学生、新卒、失業中でも条件を満たせば育児休暇手当を受けられることがあります。給付するのはUdbetaling Denmarkと呼ばれるデンマーク社会保障給付機関なので、会社員、つまり給与所得者以外でも対象となりえるわけです。

Q4 では、働く現場の実態についてですが、デンマークのみなさん、積極的に育休を利用しているのでしょうか?また、男性の育休取得率は?

A4 よほどのことがない限り、男女とも取る人がほとんどです。育児休暇中であるないに限らず、男性が一人で赤ちゃんを抱っこひもやベビーカーで世話するのはよくある光景です。またファーザーズグループで親子で交流する若いパパも増えています。なお、育児休暇を取る男性は80%くらいです。とはいえ、統計上は24週の権利のうち、およそ4週間(1か月)くらいのみのようです。

●韓国・ソウル / オム・キフンさん

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Q1 韓国での育休、特に男性の育休取得が広がっている実感はありますか??

A1 ここ数年、男性の育児休業者の数が着実に増加しています。例えば2021年には男性の育児休業者が前年比5.9%%増加し、全体の育児休業者のうち男性の割合は26.3%になっています。このような増加傾向は、子供の世話を親が一緒にする文化の拡散と育児休職制度の改善のおかげではあるんですが、実際休業をちゃんと取れてると答えてる親はそんなに多くはない現状です。

Q2 日本の男性の育休取得率が33パーセント強ですので、それに比べるとまだちょっと低いようですね。ところで、先月、韓国では育児に関する法改正があったようですね?どのような変化があったのでしょうか?

A2 育児を支援するために「育児3法」が先月出来ました。まず育児休業期間の延長です。親がそれぞれ育児休業を3ヶ月以上使用したり、片親の家庭や重度の障害児がいる親は育児休業を最大1年6ヶ月までとることが出来ます。次に配偶者出産休暇が従来の10日から20日に拡大されました。最後に育児期の勤労時間短縮です。子供が小学校を卒業するまで育児期の勤労時間を短縮することが出来ます。これは1ヶ月単位で使うことが出来ます。これらの法律は、親が子供の世話をする時間を増やし、仕事をしながら家庭と過ごす時間のバランスを取るために出来ました。2024年上半期には育児期の勤労時間短縮制度を初めて利用した勤労者が前年同期比14.9%増加し、利用率はおよそ60%で次第に増加傾向にあります。

Q3 日本の出生率1.2に対して、韓国は0.7台と深刻な少子化が進む韓国、育児に関する法律はどんどん良くなっているとのことですが、実際の働く現場で育休が取りやすい環境、人間関係なども必要だと思いますが、そのあたりはいかがでしょう??

A3 実際育児休暇を使うにあたって問題が沢山あります。特に、中小企業などは育児休暇を自由に使いにくい環境です。多くの労働者が仕事を休む事に対して負担を感じるのと同僚たちの顔色を伺う理由で育児休暇の申請をためらってしまう場合が多いです。

Q4 そのあたりは日本とも共通していそうですね。では、会社員ではなく、フリーランスの人への育休期間の収入保障はあるのでしょうか??

A4 フリーランスのための育児休暇支援が少しずつ拡大しています。2025年までに雇用保険に加入したフリーランス、およびプラットフォーム労働者も育児休暇給与を受け取ることができるようになります。 育児休業期間中の給与は今まで通常収入の50%までだったのが80%に引き上げられ、最大150万ウォン、日本円にすると15万円まで支援されます。ただ、雇用保険に加入していないフリーランスの人も多いため、法律が出来ても実際の効果は分からないです。