さて、きょうを入れて、今年も残り5日となりました。メディアでは、今年の世相を振り返る特集が増える時期ですね。この時間は、先週に引き続き、「2024年の振り返り」と題して、2つの国の番組通信員の方にお話を伺います。
●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん
Q1 アメリカの2024年といえば、なんといっても大統領選挙。民主党候補のカマラ・ハリス氏を破って、共和党のドナルド・トランプ前大統領が返り咲きとなりました。この一連の流れ、中村さんも取材されていたそうですが、振り返ってみていかがでしょうか??
A1 初期には、現職大統領バイデンの高齢化でトランプ圧倒的優勢だった大統領戦ですが、その後、トランプ暗殺未遂、バイデン選挙離脱、カマラ立候補、活気付く民主党、テイラー・スウィフトらをはじめとするセレブの民主党支持、イーロン・マスクのトランプ支持、右へ左へと大波に揺さぶられる感じで、エキサイトしましたが、テレビ番組の取材で激戦区を歩くうちに、やはりトランプ再選か?との予感が高まり、結局は、米国史2度目の2期不連続再選大統領が生まれました。トランプの支持集会にも何度か足を運んで老若男女に話を聞きましたが、誰もがトランプの言葉をおうむ返しのように語るだけで説得力のある意見は聞けませんでした。民主党は一生懸命トランプに染まった若者たちを改宗させようとしていますが、共和党の側には、対する民主党支持者を説得論破しようとする意欲が欠落しているように思えました。ただただ「今がいやだから。いまの経済状況が思わしくないから→売電政権否定→トランプ支持」という浅はかな考えが横行しているように思えました。政治の話題は、あまり感情的になってはいけないと注意しながら話そうと思いますが、結論から言うと「分断」とか「対立」とかよくメディアは騒ぎますが、とくに今始まったことではなく、アメリカは南北戦争以来2つの大きな値観がぶつかり合いながら、政治や経済が進歩してきた国なので、また一つページが開いたと言う感じです。ここからが共和党のお手並み拝見というところでしょう。
Q2 1月220日のトランプ氏就任を前にいろいろ動きもあると思いますが、アメリカ国内でいま注目されているのはどんなことでしょうか?
A2 一番の関心事は、就任初日から実行すると息巻いている
1)不法移民を強制送還させるという選挙での公約。
2)外国製品(特にカナダ。メキシコ、中国製品)に関税を課するという公約。
この2点です。強制送還に関しては、4年間で日本の年間国家予算にも匹敵する額の経費がかかると言われています。これを国民に負担させるのか?関税に関しては、中国製品に本気で税金をかけると、米国内のすべての消費財の価格に反映されます。小売最大手の「ウォルマート」CEOははなからこの政策に反対しています。物価高抑制どころか、確実に消費者物価は値上がりします。これに支持者たちが耐えられるのか?他にも、イスラエル、ウクライナの和平交渉やLGBTQ教育の制限、医療保険の見直しなどなど、トランプの行動からは目が離せないのですが、かと言って国民、少なくともニューヨーカーは割と楽観的です。今年の年末商戦も(昨年には劣るけど)全般に好調。消費の自信はそこそこあります。
Q3 いっぽう、大統領関連以外で、2024年大きな話題となった出来事といえば?
A3 大統領選ほど大きく騒がれた話題は少なかったですが、しいていえば、今月初に市内で起きた医療保険会社「ユナイテッドヘルス」CEOの暗殺事件。保険制度への不満が渦巻いている昨今だけに、暗殺犯に対する同情や共感も少なくなく、大きな波紋を呼んでいます。
●韓国・ソウル / オム・キフンさん
Q1 韓国の2024年といえば、なんといっても今月3日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳を宣布する」と談話で発表したことにはじまった混乱ですが、現在の韓国国内の状況はいかがでしょうか?
A1 14日に国会で弾劾起訴案が可決されたので現在は少し落ち着いていますが、ユン大統領が調査のための出席要求に応じていないのと、非常戒厳に動員された軍の幹部達の取り調べなどである程度まだ混乱は続いています。
Q2 日本でニュースを見る限りでも、市民も多くの方々が声を上げ、デモに参加していましたよね?
A2 12月7日と14日にソウル汝矣島(ヨイド)の国会前で「内乱罪」ユン大統領退陣! 国民主権実現!国民ろうそく大行進集会」がありました。この日の集会はユン大統領の弾劾訴追案の表決を控えて開かれ汝矣島の国会前を埋め尽くした数万人の市民は「尹錫悦 退陣!」「尹錫悦 弾劾せよ!」というスローガンを叫びました。国会で行われた弾劾訴追案の表決は議決定足数の不足により結局失敗に終わり、それによって市民の怒りはさらに激しくなりました。市民達は与党議員達が投票を拒否して退場した事に対し違憲政党は解散せよと怒りをあらわにしましたソウルだけで約200万人が集まったとされる集会は毎週末全国で行われました。
Q3 まさにきょうから弾劾裁判が始まるとされていますが、今後、どんな動きがあると言われていますか?
A3 弾劾起訴案対してユン大統領は最後まで戦うと宣言しましたので、野党はさらに強力な法的手段を取るとみられています。今現在権限代行している国務総理も大統領の味方をしているとの事で弾劾するという声が出ています。またこれによって大規模な集会も再び全国で行われるかもしれません。
Q4 いっぽう、大統領関連以外で、2024年、韓国で印象的だった出来事はありますか?
A4 小説家のハン・ガン氏が韓国人として初めてノーベル文学賞を受賞しました。これは韓国の国民に大きな喜びを与えました。また、ウクライナ戦争で北朝鮮の大規模な軍事活動が確認されたので、韓国の国民はとても驚いています。これにより韓国軍は以前に増して警戒を強めています。