TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING

Theme is... HEADPHONE

『Travelling Without Moving』＝「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードと、その旅に紐付いた思い出の曲をお届けします。

後半のテーマは、「ヘッドフォン」。
初代ウォークマンの時代から現在に至るまで、常に手放さず、
数え切れないほど旅をしている訓市にとっての必携グッズ・・・
いつ、どこで、ヘッドフォンを耳に当て、
どの様な音楽を聴き、何を感じたのか？
夏の夜、ほろ酔い気分で歩いて帰宅する時におススメの
今、お気に入りの音楽も紹介します。


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK！

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ＆リクエスト・・・　
お待ちしてます！


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna＊ TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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Kunichi was talking …


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僕にとってリラックスというのは、夜にお酒飲んで踊ったりするのが一番なんですが、そんなことは毎晩できないですし、やっていたら仕事にならないと言いつつ、でもやってます。それ以外だとやっぱり音楽。この間、珍しいメンバーで友達たちが1人の事務所に集まって、酒を飲んで音楽を聴いていて、「ぜひ、訓ちゃんも来てくれ」と言われまして行きました。テキーラのボトルを何本も用意して、それを飲みながら音楽を聴いていたようで、着いたときには年甲斐もなく完全にできあがっていました。あまりのテンションの差に、最初はちょっと腰が引けてたんですが、僕は僕であっという間に追いついてしまって。その事務所には古いCDが大量にあって、それを片っ端からかけちゃ、「これは懐かしい、あれも懐かしい」という、完全懐メロ大会になっていました。こんな週末に40歳オーバーの野郎ばかりが集まって、キャッキャキャッキャとCDをかけて喜んで、何やってんだかなぁと思っているうちに、確かに懐かしい曲ばかりかかるので、だんだんこっちも色んなことを思い出してきてしまいました。学生の頃に流行ったヒップホップやグランジ、それからちょっとお洒落だといってみんなが聞いたトリップホップ。「あぁ、懐かしいね。あの時に聞いたね！」って言いながら酒をグビグビ。「これも聞いたね！」と、またグビグビ。具体的な思い出を話しだすやつが出てくると、話はさらに止まりません。「覚えてる？訓ちゃん。これあの時の帰り道に誰々が車に乗ってて、そこで訓ちゃんがおもむろにこれをかけて、みんなで歌ったとき、外にあれが見えて！」みたいな。たまにいるんですよね、そういうめちゃくちゃ細かい思い出を話す人っていうのが。すっかり楽しい時間を過ごしたんですが、その事務所は禁煙で、タバコを吸うためには必ず外の踊り場に出ないといけません。面倒くさいなぁと思いながら出ていたんですが、最後にふと出たときに、ちょうど夜明け寸前の時間でした。なんとも言えない、まだ薄暗い感じの空で、鳥がちょうど鳴き出して、僕は首から下げていたヘッドフォンでフランク・オーシャンの曲を聞いていました。2年前にフランク・オーシャンが映像アルバムを出して、その時、それはいらないかなと思って手を出してなかったんですが、今年、普通の音源として限定リリースされたんです。僕はすっかりそれを気に入ってしまって、その中の1曲をかけながらタバコを吸っていたんです。すると、その曲と、鳥の声と、空の色と、外の気温。そして、酒の飲み過ぎで温かくなった僕の体温が完全なバランスを見出してしまいまして、気付いたらそのまま30分ほど歩いて、勝手に家に帰ってしまいました。残ったみんなは「訓ちゃんが行方不明になった。どこへ行ってしまったんだ。潰れてしまったのか？」と騒いでいたらしいですが、僕はそんな人の気も知らずに、ただ気持ちよくヘッドフォンの音楽を聞きながらご機嫌で歩いて帰りました。家までの道というのはいつも歩いている通りなんですが、音楽を聞きながら歩いていると、どこの国のどこの道を歩いてるのか分からない。そんな、とても素敵な朝でした。



★★★★★★★★

僕がバックパックを始めた頃は、まだカセットのウォークマンでした。それがCDになり、MDになって、今ではiPodやiPhoneになりましたが、機械は変わってもずっとヘッドフォンだけは持っていて、それ無しで旅行に行ったことって1回もないな、ということに気づきました。耳にかけて音楽を聴くだけで、突然、外の世界から遮断されて全く違う景色を見せてくれるものがヘッドフォンだと思います。時間つぶしの空港でボケっと聴くとか、そういうのも勿論ありますが、落ち込んでる時とか疲れ果てている時、海外でどの位ヘッドフォンに救われたかと思うと、もう数え切れない位です。明るい曲や足が前に進むような曲で気持ちを入れ替えたり、逆に海外に1人でいて、すごく悲しくて、誰も自分の気持ちを理解してくれる人がいなかったり、友達もいないなんていう時に、そんな自分を慰めてくれるのも音楽しかありません。移動中の電車や飛行機の中、雑踏の中を歩いている時とか、どこにいてもまるで自分の部屋に1人でいて、守られているような気分で音楽を聞かせてくれるもの。それがヘッドフォンだと思います。すごく褒めちぎってますけど、でも、僕は本当にそのぐらいすごい発明だと思うんです。
僕が最初に本の仕事をして、アポなしで色んな所に出かけて取材をしようと悪戦苦闘した時に、一番初めにいたのがロンドンだったんです。最初は「しょうがないよな、どこの誰だか分かんない日本人がいきなり連絡してきて、取材をホイホイ受けてくれるわけないよな」と思ってたんですが、1週間位続くと、それが己の無力感というものに変わってきました。しかも、ちょうど秋から冬になる、日がどんどん短くなって気分が落ちる季節だったんです。一日中歩き回って疲れて地下鉄に乗るんですが、ロンドンの地下鉄って世界最古なだけあって、古い線は一番小さいサイズで作ったらしいです。なので、セントラルラインとかはものすごく小さいんですが、そこに夕暮れ時、帰宅ラッシュの時に乗ったりすると、なんとも言えない圧迫感。仕事終わりで疲れている無表情なイギリス人たちに囲まれて、「俺はなんて1人ぼっちなんだ」とか、「こんなに人がいるけど誰も俺を助けてくれない、というか一つもうまくいかない」・・・そんなふう思って、「もう何もできなくても、日本に帰った方がいいのかな」と思ったりもしました。そんな時に、イカンイカンと思って、ヘッドフォンをつけて音楽をかけた瞬間に、冷たく見えていた人たちの表情が急に暖かく見えたり、「頑張って働いて疲れてるから、家に帰ってゆっくりしたいんだろうな〜」とか、好意的に見えたり。なぜか乗客の人たちが映画の登場人物みたいに見えて、「俺も頑張るか」なんて気分にしてくれて、実際にそこからがむしゃらにやって上手くいきました。だから、今でも本当に音楽とヘッドフォンが有るだけで、どんな時でもやっていけるんじゃないのかなと僕は思ってます。旅の時、興奮して音楽なんか聴かないっていう人もいるかもしれませんが、出かける時は忘れずに。