ON AIR DATE
2018.07.29
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54
TUDOR logo

Theme is... ロックフェスの思い出

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソード、そして、その旅にひも付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「ロック・フェスの思い出」。
訓市が20代の終わり頃、ナッシュビルの「ボルナー・フェスティバル」に
行った時の思い出を語る。
現地に到着する前の空港で訓市がとった親切な行動とは?
同い年の友達で映画監督の【ハーモニー・コリン】と現地で過ごした
今でも忘れられない無駄に過ごした大切な時間、
そして、その時のことを思い出さずにはいられない「名曲」について語ります。


★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.07.29

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Partly Summer / Joey Pecoraro

2

Robberts / The 1975

3

Jungleland / Bruce Springsteen

4

California / Perry Blake

5

Pool / スピッツ

6

Heaven Knows I'm Miserable Now / The Smiths

7

Cry / The Sundays

8

Lullabye / Concrete Blonde

9

Find The River (Unplugged Vers.) / R.E.M.

2018.07.29

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★★★

『ボナルー・フェスティバル』。これはテネシー州でやっているフェスなんですが、もともとジャムバンドが多く出て即興で長く演奏するということで知名度が上がったフェスティバルです。それがだんだん大きくなって、出演者としていろんな人たちを呼びつつ、さらには世界中からもお客さんを呼びたい。そこで主催の人たちは日本からも自分たちのフェスに参加してもらって、それについて書いて告知してくれる人を探していたんです。飛行機代と宿代、それに3日間のバックステージ・パスを渡す。条件といえばそれだけで、あとはどっかの媒体にそれを日本で紹介してくれっていうことだったんですが、カメラマンを連れて行く予算がなかったんです。どうしようと思ってアメリカの友達を呼ぼうと思っても、だいたいみんなニューヨークとかロサンゼルスに住んでいて、そこからテネシーまで来てもらうのもそんなに安くはなかったんです。そんな時にひらめいたのが映画監督のハーモニー・コリンにカメラマンを頼むということでした。ハーモニーはちょうど僕と同い年で、しかもニューヨークから引き上げて、かつて住んでいたナッシュビルに引っ越してきたばかりでした。「3日間、僕と一緒にフェスに行って写真を撮る。ギャラは150ドルしか払えないけど、どうだ?」とメールをすると、「俺はフェスなんか嫌いだし興味もないし、行きたいと思ったこともない。けど、いいよ」っていう返事が来ました。“面白いことになるぞ”と思って、デトロイト経由の飛行機に乗ったんですが、この時、オーバーブッキングで泣いている日本人の女の子がいました。彼女は携帯もなくて、「ナッシュビルで友達と待ち合わせているんだけど、このまま翌日の飛行機に振り替えで飛ぶと会えなくなってしまうし、彼らは先にフェスに行ってしまう」。可哀想だなと思って担当の女性の方に必死に僕が交渉して、彼女は乗れることになったんです。「本当に、本当にありがとうございます。ご恩は忘れません!」という感じで彼女が乗り込んでいって、その担当の女性にも「あなた、赤の他人にそんなに親切にして素晴らしく優しい人ね」って言われて、“一日一善をしたぞ”と自己満の善意に酔いしれつつ僕も乗ろうとしました。すると、「あなたは乗れないわよ」。要は、僕の席が彼女にいったんですよね。そこからすごくごねて、なんとかセントルイス経由でナッシュビルに行けることになりました。僕も携帯もないし待ち合わせの時間からすごく遅れていてちょっと焦ったんですけど、ちゃんとハーモニーと彼の弟や仲間たちが待っていてくれて、無事にフェスに行けることになりました。



★★★★★★★★★★

フェスに一度でも行ったことある人だったら分かると思うんですが、フェスで何を着ればいいのかというのはすごく難しくて、ボナルーに行ったときの初日は滅茶苦茶暑かったんです。フェスに行ったことのないハーモニーたちは黒いTシャツにブラックデニム、それにブーツかなんか履いて現れまして、「こんなに暑いのは音楽がどんなに良くたって、耐えられん。早く帰ろう」ということで、初日は早めに退散しました。2日目は、「俺もようやくフェスに慣れたというか、コツをつかんだぜ!」と、サンダルに短パン、Tシャツで現れました。すると、雹が降るくらいの土砂降りになって「寒くていられんから帰ろう」と、その日も早めに退散しました。でも、ほぼ男だけの同い年4人で観たフェスはすごく楽しくて、デヴィッド・バーンのライブを観たり、ボブ・ディランのライブで盛り上がったり、それをステージ脇から観たり素晴らしかったです。でも、僕が楽しみにしていたのはハーモニーが撮る写真で、彼はアーティストでもありますから素敵な写真を撮るんじゃないかと。特に、呼んでくれたオーガナイザーたちはこのフェスの素晴らしさを日本の若者にぜひ写真と文章で伝えてくれということでバックステージパスをくれたんです。でも、ハーモニーは当然のごとくすごく変わっているというかひねくれている人で、ライブの後にナッシュビルで60分の急速現像ですぐ写真を現像して確認したんですけど、ゴミの山のクローズ・アップとか、ホットドックをむさぼり食う男の子がいて、食べるたびに口の周りにケチャップがついてくんですけど、それを連続で激写してたり。あとでオーガナイザーにそれを見せたら僕はものすごく怒られましたけれど、彼が撮った写真を見ると、今でも逆にその時のフェスのことがすごくよく思い出せるんです。ステージから撮ったアーティストの写真とかより、よっぽどその時の空間とか雰囲気というのを切り取っていて、やっぱり面白い奴だなと思いました。なぜかこういう昔の写真とか、そういうフェスの写真を見ると、僕はいつもR.E.M.の『Nightswimming』という曲を思い出します。この歌は“10代の終わり、夏の思い出”ということで昔を振り返ると、本当に素晴らしい歌詞なんです。これを聴くと10代の終わりの無駄にした大事な時間というのを思い出して、胸が切ない感じになるんですが、僕がナッシュビルのフェスのこと思うと『Nightswimming』をよく思い出すのは、この歌のように、僕らも街道沿いにあったモーテルにハーモニーがいきなり車を停めて、フェンスをよじ登りながら「プールがあるから飛び込もうぜ!」って全員で飛び込んだからだと思います。夜に泳ぐというのは本当に危ないし、あんまり薦められたことじゃないんですけれども、若い頃って無知じゃないですか。いろんな所で飛び込みました。海とか湖に飛び込んだり、もちろんプールにも飛び込みました。愚かでナイーブということなんでしょうけど、ずぶ濡れになった後にみんなで震えながら話をしたり、何をするでもなく夜明けを迎えるというのは10代の特権なのかなと思います。でも、僕らはそれを20代の終わりにこのナッシュビルでやっていたわけです。服を着たまま奇声をあげて飛び込んだ者。素っ裸になって飛び込んだ者。アメリカ南部の肌に湿気がまとわりつくような日中の日差しがまだプールの水温には残っていて、明かりもなくて月だけが水面を照らしていたんです。その時に僕は「こういう“時”というのはいつまで持てるんだろう。こんな旅を男友達とできて、馬鹿みたいに騒ぐ。そして、濡れたままプールサイドでビールなんか飲んでくだらないゴシップを、いつまで話せるんだろう?」と思いました。その時、ハーモニーは家が火事で燃えて自分の思い出の物や記憶が写ってるものが全部燃えてしまったっていう話をしていたんですけども、そんなことや、これからどこに向かって何をするんだろうっていうこと話しました。幸いあれからずいぶん時間が経ちましたが、僕はまだそんな時間が持てているなと思いました。そう、それは『フジロック』のおかげです。