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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ストーンズ『メイン・ストリートのならず者』ジャケット撮影をした写真家が逝去
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Theme is... Robert Frank
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---- 訓市にアメリカを教えた写真家 ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、はがき、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その度に紐付いたリクエスト曲をオンエア!
後半のテーマは「写真家 ロバート・フランク」。
若かりし頃の訓市が大きな影響を受けた写真集、
『THE AMERICANS』で有名な写真家ロバート・フランクの
逝去を受けて追悼の気持ちを込めて語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてま〜す!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Far From Home / Calypso Rose
Stay (I Missed You) (Living Room Mix) / Lisa Loeb
Education Sentimentale / Maxime Le Forestier
Falling Rain Fall In Love / Misi Ke
めぐりあい / 井上大輔
Uptight (Everything's Alright) / Stevie Wonder
Summer Cannibals / Patti Smith
Run / New Order
Waiting For That Day / George Michael
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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この番組でも何度も写真について話していますが、僕は写真は最早iPhone以外では撮ることのない、いわゆる普通の人間なんですけれど、他の人の撮る写真がとても好きです。写真好きが高じて先日も写真展を企画したり、雑誌でも色んな写真家を取材したり、特集を作ってきました。僕が最初に写真というものの魅力に気付いたのは小さい時、スケートボードやBMXにどハマりした時のことです。カルフォルニアで始まったこれらのことを知りたくても情報が全く無い中で、たまに知り合いが手に入れる洋雑誌をそれこそボロボロになるまで見返して一つの情報も残さない、なんならページごと何が載っているのか丸暗記するほどでした。まぁあれほど集中して見ていればですね教科書でも、僕の人生はまるで違ったものになったと思うんですけど…。もちろん英語はよく分かりませんから単語以外は想像で、あとどうやって勉強したかっていうと、それは写真でした。“この写真はどこで撮られたんだろう?”“スケートの板に貼ってあるこのステッカーは見たことないな”“この服はどこのだ?”。1枚の写真というのは毎日眺めていると実はとんでもないくらいの情報量があるのです。僕にとって写真との出会いはこうした雑誌の写真と、同じ頃に読んだノンフィクション全集に載っていた戦場カメラマンのロバート・キャパの写真でした。戦争の最前線に従軍して、そこでの瞬間を切り取る写真というのは情報量というより、どんな長い文章を読むよりその背景を一瞬で説明できるような強さがありました。例えば学校の授業で太平洋戦争でこういう悲惨なことがあって、この戦いでは何人が死んで…などと文字だけで長い説明を読むより、その時の写真1枚を見たほうが、どんなに酷いものだったかっていうのが瞬時に理解出来たりしたのです。そういうことに気付いてしまって僕は写真の魅力に取り憑かれるようになりました。もちろん昔の好きなロックバンドのドキュメンタリーフォトなども見るようになりましたし、それから昔の街のスナップ写真を集めたものも見るようになりました。本で読んで、頭の中で想像することしか出来なかった過去の時代の街やそこの住人たちっていうのをそのまま見ることの出来る写真っていうのは僕の妄想に膨らみに膨らんだ頭を満たしてくれる最良のご飯のようなものでした。小説を読んでは、それに合う写真集を見る、僕にとってそれは本当におかずとご飯のような補完関係にありました。
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僕が若い頃に影響を受けた本に『路上』、新訳ですと原題どおり『On The Road』があります。ジャック・ケルアックという青年が色んな人と出会い、車でアメリカを放浪する「ビート」と呼ばれる文学の代表格です。典型的な背伸びをしたがる10代だった僕はとにかくメジャーよりアングラ、ポップスよりパンク、マジョリティよりマイノリティのほうが必ず優れていると思う、いや思おうと努める人間でした。もし当時の僕が今ラジオをやらせてもらっているとしたら、日曜日の夜にゆったりとした音楽を、なんていうのは当然のごとく不可能で、きっと格好つけてわざと難解だったり騒がしい音楽をかけていたと思います。まぁ通に思われたいって若い頃は思うじゃないですか。なのでカウンターカルチャーの出発点として有名だった「ビート文学」は僕にとって避けて通れないものでした。まぁところが、一文一文の文章は長いし、訳は古くて難解だし一発で読み切るようなものでは当然ありませんでしたが、諦めるわけにはいかない、どうしても読み切って好きにならなければならないのだ。そんな使命感もあって読むうちに本当に好きになりました。まぁマルボロライトと一緒ですね、気づいたら好きになっていたという。出版は50年代ですが、書かれたのは40年代。作者も若く、その日暮らし的だったり、他人をつぶさに観察してみたり、とにかく意味も無く遠くへ遠くへというその感じがとても当時の自分にしっくりきました。“ケルアックが見たアメリカとはどんな風景だったんだろう?” いつしかアメリカを車で横断することが僕の夢となりましたが、その景色を垣間見せてくれた写真集がありました。それがロバート・フランクの『THE AMERICANS』という本でした。実際に序文をケルアック自身が書いてもいるんですけれど、スイスから移民としてアメリカにやってきたフランクが1年半かな? 長い時間をかけ撮ったリアルなアメリカの風景・・・アメリカというと頭に浮かぶのは人それぞれ違うと思います。例えばそれが映画の1シーンだったり、自分が訪れた街、ハワイかもしれないしニューヨークかもしれない。けれども僕にとっては“アメリカの風景は?”と言われると自分が見た風景でもないのに、この本を思い浮かべてしまうほど強い影響を受けました。いつかインタビューをしたい、そう思い続けて20年。まぁ彼は世捨て人みたいなところも少しありまして、時間ばかりが経った挙句、先日94歳で亡くなってしまいました。本当に写真も素晴らしいんですけど映像も素晴らしいものがあります。まぁ94歳といえば大往生だと思います。きっと生き切った人生だったと思うんですが、今頃先に亡くなってしまったお子さんたちと天国で車に乗りながら、アメリカの風景の景色をきっと撮っているんじゃないでしょうか。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。