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Let's travel, Grab your music!
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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--- Good to see you, KUN ---
訓市が映画『Lost In Translation』の
製作に関わった時に知り合い、
ウェス・アンダーソン監督作品『犬が島』でも
共演したことで親しくなったアメリカの名俳優
ニューヨークの「カーライルホテル」で
一緒に飲んだマティーニから数年・・・
今回は、東京。
間違い電話かと思ったら本人が東京に滞在中!
とあるバーで久しぶりに再会を果たして
過ごした夜
「サントリータイム」で知られるこの俳優は・・・
酒飲みの鏡
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リスナーの皆さんからお寄せいただいた
“お便り”の中から訓市が独断でセレクトして
紹介します。
旅の話はもちろん、仕事、進路、人間関係から
恋愛、夫婦・親子関係まで・・・
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲のオーダーにもお応えします。
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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の20時に最新版をアップします。
こちらも聴いてください〜
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
そして、旅の話だけでなく、
仕事、進路、人間関係から恋愛、夫婦・親子関係まで
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲のオーダーにもお応えします。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Here, There And Everywhere / The Beatles

Song For Junior / Beastie Boys

Merchant Of Love / Joan Armatrading

Roslyn / Bon Iver & St. Vincent

寂しくて眠れない夜 / Aimer

Asleep From Day / Chemical Brothers

Wading In Waist-High Water / Fleet Foxes

Beanie / Chezile

Lovely Sky Boat / Alice Coltrane

ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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今年に入って色んな人が東京を訪れますが、それにしてもその頻度というのが加速度的に増してるなというか、ほぼこれ東京だけどニューヨークにいるみたいだと思うほど毎週、向こうの友達が来て時間を過ごす度に、「これぞTRAVELLING WITHOUT MOVINGだ!」なんて思っていたりします。そんな中、先日、不思議なことがありました。世界中の大都市にはその街を代表する老舗ホテルというものがあったりします。他に替えの効かない、その歴史の重みを残すためか、古いまま余計な変更をしない建物。これは日本に対しての皮肉ですけども、変わらないサービス、そしてそこに集う独特な人々、それが一体となってその街の老舗ホテルというものが生まれるわけです。その中でニューヨークには「カーライルホテル」という有名なホテルがあります。東京で言ったら何ですかね、ホテルが古いので「山の上ホテル」みたいな。もっと大きいですけど。「ホテルオークラ」とか建て替え前の「帝国ホテル」のような、そんなものを掛け合わせたようなホテルです。とにかく、著名な映画監督からハリウッドの名優、ミュージシャン・・・そんな人たちに愛されて、行けば本当に普通に彼らを目にしたりします。じゃあそういうエンタメだけかというとそうでもなくて、例えばニューヨークのスケートブランドでSupreme。買収された時1000億とか2000億だったと思うんですけど、そこを買ったアメリカの有名なファンドがあるんですけども、そのファンドの名前も「カーライル」と言って、そのホテルで一緒に酒を飲むためにみたいな理由で名前がついてるぐらい、とにかくニューヨーカーにとってはとても有名なホテルなんですよ。昔はウッディ・アレンが冬になるとジャズバンドを率いて、目と鼻の先でライブをしていましたし、知りたい方はこの「カーライルホテル」についてのドキュメンタリーもあるのでぜひ見てほしいんですが、そんなカーライルも15年前か、ローズウッドという香港のホテル会社の配下に入りました。それでもいまだに当時のままで、フランチャイズにもならずに存続しているんですけども、そのローズウッドグループが日本にとうとう進出するんですね。宮古島に開くんですけども、ローズウッドの上陸記念ということで、その記念ディナーとパーティーに呼ばれたんですよ。普段はそういうところは余程の理由とかがないと行かないんですけども、カーライルを買ったローズウッドか、すごい大きい会社なので一体どんな人たちが運営してるのかと興味があって出向くことにしました。フォーマルな格好ばかりの人たちの着席ディナーで、ものすごくカジュアルな格好で行ってしまい、失敗したなって感じだったんですが、席について会場の真ん中にバンドの楽器がセットされていることに気付きました。やがてミュージシャンが集まってきてアナウンスが入ると、「我が社の誇り、カーライルからジャズバンドを呼び寄せました」と。そして演奏が始まりました。僕は1人興奮して、最後にカーライルに行った時のことを思い出していました。あれは6年前、ウェス・アンダーソン監督の映画『犬が島』のプレミアをメトロポリタン美術館で開催した時のことです。プレミアに壇に上がるなんて一生に1度のことだろうと思っていましたし、原作者の1人として参加さしてもらい自分の仲間も招待していいよと言われて、まあ晴れ舞台ですよね、要は、スーツ着て。本当に思い出深い夜を過ごしました。そして、次の日に2次会がありまして、へべれけに酔っ払って1人2人と皆、姿を消していく中で何事もなかったように酒を飲み続ける人がいました。それが俳優のビル・マーレー。僕は『ロスト・イン・トランスレーション』という映画の撮影の時から一緒だったので知っていましたが、“サントリータイム”で有名なこの人は伊達じゃないというか、本当に底無しに飲めるんです。
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2次会の店が閉まり、日曜日の夜だったと思うんですけどね、雪が降ってて、お開きかと思った時、残ったゾンビたちとビルのリムジンに乗せられました。「もう1件行くぞ」。もちろん帰るなんて言えませんよ。そして向かった先が「カーライル・ホテル」でした。着くと、もう外から見ても中の電気が落とされ人気の無いのが分かりますが、「ちょっと聞いて来るね」と言って僕は車を降りました。中に入ると思った通りとっくに閉店だと言われ、すごすごと車に戻るとビルはこう僕に言いました。「閉店だと?ちょっと待っていろ」。ビルは1人でホテルに入って行きました。すると何ということでしょう、中のライトが点いていくではないですか。僕らは付いて行くとビルは「マティーニを人数分」、ビルがそう注文して閉店のはずのカーライルで飲むことができたんです。アメリカでそれってすごくないですか?要はタイムカード終わってるんですよ。「彼が有名だから店を開けたんじゃない。彼が過去何十年もここで飲み、俺たちに良くしてくれているから開けたんだ」。従業員がそう言いました。酒飲みの鏡。そんなことを僕は思い出しながらジャズバンドを聴いていたんです。すると携帯が突然鳴りワンギリされました。誰だろう、海外の詐欺電話かな?携帯を見るとビル・マーレイと表示されているじゃないですか。ニューヨークで携帯番号を渡され、それを見ていた周りの俳優たちに「お前はすごいラッキーだ。ビル・ファッキン・マーレーの番号をゲットしたぞ!」と言われながら、もちろん1度も連絡したことも連絡が来たことも、この6年間無かった番号。こんなすごいタイミングで間違い電話が来るなんて!とそれで僕はびっくりしながら喜んでいました。だってカーライルホテルのバンドが東京にいて演奏している最中にビルから間違い電話が来るんですよ。ところが、それは間違い電話ではありませんでした。「ハイ、ビルだ。野球の試合を見に来ている。ハイボールをまた一緒に飲めたら嬉しい。ビル・マーレー」とテキストが来たのです。もうこれは…「飲むしかないでしょう!サントリータイム」と答えました。それから自分が行くバーの住所を送りました。その知り合いのバーの周年の日だったからです。「時差ぼけで疲れてもいるから、寝るかも」という返事の後に連絡が途絶えたので、まあそうだよな、あのビルももう70歳半ばを過ぎてるはず…と思っていると、夜中を過ぎたころ、バーの入り口にいた子から「訓市さんの知り合いという方が」と呼ぶので振り向くと、そこにはハットを被った大男がニコニコと笑って立っていました。ビルでした。僕は駆け寄って大きなハグをしましたし、ビルも大きな体を曲げてグッと長いハグをしてくれました。「Good to see you again Kun」、「good to see you Bill」。とても簡単な挨拶でしたがグッと来るものがありました。元気でこうして滅多に会えない人と会えたのです。ハイボールを頼みました。チェイサーにシャンパンも飲みました。乾杯をしてカラオケをしました。ビルにマイクを渡すと色んな歌を歌ってくれました。そうなんですよ、ビルと酒を飲むと楽しいんです。ちゃんと回りが楽しくやっているか必ず確認するんですよ。そして眠そうな人がいると盛り上げたりする。朝に近づき「そろそろ帰るよ」と言うのでタクシーまで送りました。70過ぎで、ものすごい体力だけれどさすがに時差ぼけでそのまま寝るよなと思ったら、「これからホテルに帰って、ジムで汗を流すよ」と言われました。ああビル、酒飲みの鏡。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。