2024.12.07 ONAIR

今回のテーマは「サウンドスケープ」

参考図書は鳥越けい子さんの『サウンドスケープ』です。

『サウンドスケープ』とは、視覚的な「景観/風景=ランドスケープ」に対して、
「耳で捉えた景観」「音の風景」を意味する言葉。
カナダの現代作曲家マリー・シェーファーが、
1960年代末から70年代にかけて初めて提唱した概念です。
今、都市デザインの分野などでも関心が高まっている。

「サウンド=音」と「サウンドスケープ=音の風景」の
基本的は違いはなんでしょうか…?

「サウンド=音」というとまずイメージするのは、
「何かの音を聞いた」といった時のような個々の音。
「サウンドスケープ」は、それらの個々の音が組み合わされた
音環境全体のことをいいます。
個別の音がどのように組み合わさってひとつの景観を形成しているのか
ということです。

シェーファーの定義によると、単なる音環境ではなく、
「個人、あるいは特定の社会がどのように知覚し、
理解しているかに強調点の置かれた音の環境」 。
特定の時代や地域の人々、特定の個人がどのような音を聞き取り、
それらをいかに意味づけしているかということ。
どのような音とどのような関係を結んでいるかを問題とします。

こう言うと、難しい感じがしますが…
◇その街で生まれ育った人と旅行でその街に来た人では聴こえる音(音環境)は異なる。
◇そして、聴こえた音に対する印象や湧き上がる感情も異なる。
ということも考えることができます。

『サウンドスケープ』という考え方に基づくデザイン活動、
それが「サウンドスケープ・デザイン」と呼ばれています。

「サウンドスケープ・デザイン」で最初にやるべきは「サウンドスケープ調査」。
特定の地域に、どんな聴覚的環境資源があるかを調べます。
この時の方法として重要なのは、対象となる地域で生活している人に対する
聞き取り調査。
他所から来た調査員が音を探し集めるのでは、
その地域の人々に、その音環境がどう知覚され理解されているかがわかりません。

例えば、
1996 年に当時の環境庁が、
「全国各地で人々が地域のソンボルとして大切にし、
将来に残していきたいと願っている音の聴こえる環境」を公募した
「日本の音風景100選」があります。

ちなみにこの「100 選」の中で選ばれている長崎県の音は、
「山王神社被爆の楠の木」、被爆した 2 本の大きな楠の木の葉ずれの音です。

同様の公募は地方自治体でも多数行われています。
「山形の音」プロジェクト 「ながさき・いい音の風景」プロジェクトがあります。

「サウンドスケープ・デザイン」には調査以外に、技術的・実践的な活動もあります。
みなさんのふるさとの大切な音、将来に残したい音はありますか?

『サウンドスケープ』についてもっと知りたい方は、
鳥越けい子さんの『サウンドスケープ』をぜひ読んでみてください。


■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる
「BOOK SHARING」

現在横須賀で開催中、「SENSE ISLAND/感覚の島と感覚の地 2024」に
参加されている、美術作家の水戸部春菜さんに
中ザワヒデキ 著
『近代美術史テキスト 印象派からポストヘーイラストレーションまで』を
ご紹介いただきました。


■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」

今回は、「ECM レコード」というジャズ・レーベルです。
この10月から公開されたミュージック・フォー・ザ・フィルム
『ECM レコード - サウンズ&サイレンス』を紹介。

ECM レコードは、1969年(当時の)西ドイツ、ミュンヘンで設立。
創設者はマンフレート・アイヒャーという人で、
ベルリンの音楽学校でコントラ・バスを学び、
ジャズに熱中するようになり、ミュージシャン活動をしていたという人物。

その後はクラシックのレコード会社でクラシック音楽のレコーディング技術を学んで、
音楽プロデューサーを目指しました。

そんなマンフレート・アイヒャーが 26 歳で設立したのが ECM レコード。
ジャズだけでなくクラシック音楽をはじめとする多様な音楽を
フュージョンさせていたので、当時の頑固なジャズファンからは
「これはジャズに非ず」と非難もされました。

そんな ECM レコードからリリースされた...
チック・コリア『リターン・トゥ・フォーエヴァー』、
キース・ジャレット『ケルン・コンサート』、
パット・メセニー『ブライト・サイズ・ライト』などなど、
名盤や大ヒット作は数知れず...

先月、10月18日から公開された映画『ECM レコード - サウンズ&サイレンス』は、
55年におよぶ ECM レコードの歴史、サウンドの魅力を描いたドキュメンタリーです。


□今週の図書
鳥越けい子『サウンドスケープ』
中ザワヒデキ『近代美術史テキスト 印象派からポストヘーイラストレーションまで』

□オンエア曲
Got my mind set on you / George Harrison
The Table / Rex orange county
My life / Billy Joel
Heaven II / Julia Michaels
Nocturne II (ノクターン第 2 番)- After Dawn / 角野隼斗
Reading Of Sacred Books / Keith Jarrett
Celebrate / Jordan Rakei