今回のテーマは「欲望のエデュケーション」
参考図書は原研哉さんの『デザインのデザイン』です。
『欲望のエデュケーション』というのは、原研哉さんが考えるデザインの意義や、
今後の方向性を表した言葉。
現在、商品開発は精密なマーケティングに基づいて行われています。
消費者の欲望や求めるものを精密にスキャンし、それが商品に反映されているのです。
参考図書で挙げられている例は、クルマ。
国産車は、海外のクルマと比べて美意識が足りない、
哲学が不足しているというような批判があります。
しかし、日本のクルマが現在のようになったのは、
日本人の欲求に寄り添った結果です。
日本人はクルマに、性能が良く、燃費がよく、故障の少ないことを求めたといいます。
一方、外国のクルマは、日本人をターゲットにしていないため、
違和感があり、時にエキゾチックに見えるに過ぎないと考えられています。
例えば、ヨーロッパ市場の欲求に寄り添ったクルマに、
一部の人が欲求を感じているだけならば、問題はありません。
しかし、そこに多くの人が欲求を感じるようになったら問題が生じてしまうのです。
センスの悪い国で精密なマーケディングをすれば、センスの悪い商品が作られ、
その国ではよく売れます。
そしてセンスの良い国でマーケティングをすれば、センスの良い商品が作られ、
その国では売れると思われます。
商品の流通がグローバルにならなければ問題はないですが、
センスの悪い国にセンスの良い国の商品が入ってきた場合、
センスの悪い国の人たちは、入ってきた商品に触発されて、
外から来た商品に欲望を抱くようになります。
その結果、もともと売れていた国内の商品が駆逐されていってしまうという現象が
起きているということになります。
グローバルに市場で優位に立つ商品を開発するためには、
国内市場の欲求が洗練されていて、意識水準が高いことが必要です。
『欲望のエデュケーション』とは、人々の欲求を洗練し、
意識水準を高めていくということ。
それが、原さんの考える、今後のデザインの行方。果たす役割だと思われます。
エデュケーションといっても、教育的に上から教え授けるということではなく、
潜在的にある能力を芽吹かせ、開花させるというニュアンスで使われています。
デザインによって、欲望が洗練されるとは限りません。
欲望はルーズな方向に向かっていくこともあります。
例えば、スーパーに売られている商品のパッケージ。
食欲をダイレクトに刺激するようなパッケージは、欲望をルーズにしてしまいます。
欲望がルーズになると、それに合わせたルーズなデザインが出現。
これが繰り返されることは、社会や文化の洗練度を下げることなりかねません。
このことを忘れてはいけないと考えられます。
キーワード『欲望のエデュケーション』についてもっと知りたい方は、
原研哉さんの『デザインのデザイン』をぜひ読んでみてください。
■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる
「BOOK SHARING」
シンガーソングライターの小林柊矢さんに、
Mr.Childrenの全曲詩集、『Your Song』 をご紹介いただきました。
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レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」
フリートウッド・マックの先日リリースされた、
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『ミラージュ』を引っ提げてのツアーの模様をCD2枚に収めた、
全曲未発表のライブ・アルバムです!
□今週の図書
原研哉『デザインのデザイン』
Mr.Children全曲詩集『Your Song』
□オンエア曲
1999 / Prince
Don’t let it go to your head / Jean Carn
Only love can break your heart / Neil Young
Taste / Sabrina Carpenter
ハイライト / 小林柊矢
Hold Me / Fleetwood Mac
28 / Zack Bryan