TRAVELLING WITHOUT MOVING
第1回目のテーマは、番組タイトルにもなっている「TRAVELLING WITHOUT MOVING」=動かない旅...そこに込められた思いを野村訓市が語ります。
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Travelling Without Moving / Opik
>>> See On Air Notes 『Feed Your Head』というタイトルのチルアウト系コンピレーション・アルバムに収録されています。
Motion Pictures (For Carrie) / Neil Young
1974年にリリースされたアルバム『On The Beach?渚にて』の収録曲。訓市はこの曲を聴くと「ウィスキー・コーク」が飲みたくなる・・・とか。海の家「スプートニック」の定番曲でした。
Dawn / Hiroshi Fujiwara
藤原ヒロシの2枚組ベスト・アルバムに収録。「Dawn」タイトル通り、夜明け時の徐々に空の色が変化していく様子を描写したような名曲!
Luv(sic) Pt.2 / Shingo2
訓市曰く、「バックトラックがおセンチでGood!」
Cantimilla / Tranquility Bass
訓市がアメリカの友人宅で聴かせてもらって一発で気に入った曲。ポイントは「子供の声」...
Walk On The Wild Side / TOK TOK TOK
オリジナルはルー・リードで、1972年のセカンド・アルバムに収録。TOK TOK TOKは女性ヴォーカルをフィーチャーしたソウルフルでジャジーなテイストが魅力のドイツのグループです。
Busride / Ry Cooder
ウォン・カーワイ監督の映画『My Blueberry Nights』に収録されているライ・クーダーによるインスト曲。
Pink Moon / Nick Drake
ニック・ドレイクはイギリス人シンガーソングライターで、170年代前半に活躍するも、弱冠26歳という若さでこの世を去った伝説的ミュージシャン。
A Love Song / Ego-Wrappin'
中納良恵と森雅樹の2人によるユニット、エゴ・ラッピン。キーワードは昭和歌謡??
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking (1)
「Travelling Without Moving」っていうのは曲のタイトル・・・曲だって言うと普通、「Jamiroquaiですか?」って言われることが多いんですけど、Opikというアーティストの曲です。90年代のChill outの曲で、タイトルの意味は「動かない旅」っていう。僕は昔すごく遠くに行きたくて、これはサハラ砂漠に行った時にヘッドホンで聴いて、目を閉じていると、世界一周の様な気分になって、わざわざサハラまで来る意味がなかったなぁって思うようになったきっかけの曲です。
この曲は90年代にNew Ageというヒッピーの流れの人たちがまた盛り上がって流行った時代にPlanet Dogというレーベルから作品をリリースしたユニットですが、この曲以外は何にも知らないんですけど。ただ、この曲を聴いてると世界中の街の音とか雨の音とか子どもの声とかが、公園で録ってる、流れてくるんで、音の風景というかそういうモノが見えてくる曲なのかなと僕は思っています。砂丘がずっと続くチュニジアの国境の近くの砂漠に寝っ転がって一人でヘッドホンで空を見ながら聴いていました。
KUNICHI was talking (2)
今回は初回、ということで番組タイトルでもある “Travelling Without Moving”、「動かない旅」をテーマにお届けしています。僕がこの言葉にすごく引っ掛かるようになったっていうのはもう15年ぐらい前なんですけども、旅から帰ってきてやることがない時に、機会があって湘南の方で海の家をやることがあったんです。海の家の名前に『スプートニク』っていう一番最初の人口衛星の名前を付けたんですけど、どういう場所にしようかなと思った時に、僕らがずっとやってたのが旅だったので、その旅の状況というか、自分たちが好きな旅の部分てなんなんだろうっていうのをすごく考えたんですね。その時に、僕たちは史跡を見たり素敵な風景を見たりするのもすごく好きだったんですけども、いろんな人たちが集まって、ジャンル関係なく出会えて、一緒に夕焼けを見て音楽を聴けたりするっていうのが、すごく好きだったので、じゃあそういう自分たちの好きな旅の状況っていうのをこの場所でできないのかなと思った時に、海の家のテーマとして ”Travelling Without Moving” っていうのを付けたんです。それは今も変わらないというか、実際に体を動かす旅も好きですけど、気持ちだけでもどこか遠くに飛ばしたりするのも旅なんじゃないのかなと思っています。
海の家をやろうと思ったきっかけが、もともと海で焼きそばを売りたいとか、サザンをかけたいとか、そういう希望があったわけでは全然ないんですけど、6年くらい旅行をずっと続けていたので、それしか知らなかったんですよね。なにか人が集まれる場所っていうのを作ってみたいなあと思った時に、 “Travelling Without Moving” っていう考えが頭に浮かんで、どこだったらいろんな人があんまり構えることなく集まれる場所ができるだろうと思った時に、東京で何かやるっていうと、例えばスーツの人達だけが集まってきたり、スケーターだけが集まったりとか、特定の人が集まりやすいですけど、海行くとみんな海パン一丁ですよね。ユニフォームがないっていうのが一番いいのかなと思って、海の家にしました。それで海の家をやろうと思った時に、世界中まわってて、こういう場所で音楽を聴いて夕日を見たり、人とお酒を飲むのが楽しかったなあという場所がたくさんあったんですけども、それをリミックスというか、搔い摘んでいいとこ取りですけども、作ってみようかなと思いまして。例えば、インドにあったサンセットバーが階段があってみんなそこで夕日を見たりっていうのがあったので、絶対階段を作ろうと思って、人力で砂を毎日掻いだり。あとはバーニングマンていうネバダで砂漠でやるパーティーがあるんですけど、そこではいろんな人が中古のパラシュートを使ってドームを作ったりしていたので、自分たちもそれを見よう見まねでドームを作ってみたり、あとハンモックをたくさん吊るして自由に使ってくださいっていう。最初のうちは誰も使ってくれなくてですね、なんで使ってくれないんだろうと思ったら、タダっていうのが海はありえないんですよね。「これ1日2500円なの?兄ちゃん。」て言われて「いや、タダです。」って言ったらすごい怪訝な顔をされたり。あとは囲炉裏を作って毎晩焚き火をしながらボーッと火を眺めてましたね。
音楽は1日中かけてて、音楽がないと暑くてやってけないっていうのもあったんですけど、昔は海の家っていうと例えばレゲエしかかけない店とか、例えば本当にサザンとかJ−POPがかかるお店とか、音楽でも分かれてたんですけど、僕ら「旅」っていうテーマだったので、いろんなジャンルの音楽をいろんな人たちにあんまり偏見なく聴いてもらいたいなあっていうのがあったので、ずいぶんいろんな知り合いに声をかけて毎晩違った音楽をかけるようにしていましたね。
KUNICHI was talking (3)
今回は初回ということで、番組タイトルでもある “Travelling Without Moving” をテーマにお届けしています。旅というと、僕はまだ月一くらいで海外に出かけています。年間で考えると2週間くらい飛行機の中にいるということで、人生こんなに無駄にしていいのかって最近考えちゃったりもするんですけど、昔は一回旅に出ると月単位で出かけて一個の街を隅々まで自分で歩いてみたりとか、いろんな人と友達になってそこからその人の家に転がり込んだりとか、すごい自由な時間を過ごしましたけど、今はね長くいれても5日とか6日とか1週間以上なかなか時間が取れないというオトナになってしまいました。昔は家もないし、荷物もカバン一個くらいだったんで、すごく身軽でしたけど、歳を重ねるうちに物が増えて、贅肉みたいのが付いてきたっていうか、自分自身がすごく腰が重くなってきたなっていうのは感じています。50くらいになったら全部捨てて、インドの修行僧みたいと思うんですけど、一回酒を飲んでる時にそれを家で口走ったら家族にものすごい目で見られたので今はそれ黙っていますけど、いつかはでも出家のような感じで身軽になりたいな、そう思っています。
KUNICHI was talking (4)
今夜は Travelling Without Moving をキーワードにお話してきましたが、こうやって考えてみると、しょっちゅう自分は旅をしているんですけど、それよりか現実逃避の、妄想の動かない旅のほうが実は多いんだなっていうのに今日気づきましたね。1日の間に何度かヘッドホンを付けて、会社の人間とか電話がかかってきたのを気づかないフリをして、白昼夢の中に自分が泳いでいるっていうことがよくあるんですけども、みなさんどうしょうか?旅の話とか雑誌とかでよく旅特集っていうのも見て、よくみなさん手に取るっていうか、人気があるそうなんですけど、なかなかまとまった休みっていうのは取れないと思うんですけど。ただ、次はいつか行こうとか、せめて妄想して、自分が遠くにいる姿を思い浮かべたりするっていうのはすごく大事なトレーニングだと思います。僕もプライベートというか、すきな所に行ってのんびりするっていう旅が次いつできるかっていうのは全く分からないんですけど。次行ったとしたら、ビーチでハンモックで寝てやるぞとか、その時にはこういう本を読んでやろうっていうリストだけは常に持っています。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。