ON AIR DATE
2014.11.02
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

Bruce Weber

TUDOR logo

テーマは、写真家ブルース・ウェバー

訓市が「アメリカのおじいちゃん」と慕う
写真家ブルースとの出会い、仕事、
交流について語ります。









★★★★★
番組では皆さんの「旅と音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
番組サイトの「Message」から送信できますが・・・
ハガキ、手紙も大募集!

宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

2014.11.02

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

My One And Only Love / Sting

フランク・シナトラを筆頭に、数え切れないほどのシンガー、プレーヤーが取り上げているジャズ・スタンダード。スティングのヴァージョンは、ニコラス・ケイジ主演による1995年の映画『Leaving Las Vegas』のサントラとして使われています。

2

Let's Get Lost / Chet Baker

白人ジャズ・トランペッター兼ヴォーカリスト、チェット・ベイカーの人生を撮ったドキュメンタリー映画『Let's Get Lost』... そのディレクションを手掛けたのが写真家のブルース・ウェバーです。

3

Jersey Girl / Tom Waits

アメリカのシンガーソング・ライター、トム・ウェイツのオリジナルで、1980年のアルバム『Heartattack And Vine』に収録。映画『Let's Get Lost』のサウンド・トラックでチェット・ベイカーがカバーしています。

4

Almost Blue / Elvis Costello

チェット・ベイカーが映画『Let's Get Lost』のサントラで取り上げた曲のオリジナル。切ない男心を歌ったジメジメ・ソングの名曲!映画『Let's Get Lost』のサントラに収められたチェット・ベイカーのヴァージョンも切なさ120%!

5

Life Is Just A Bowl Of Cherries / Doris Day

アメリカの白人女性ヴォーカリスト、ドリス・デイ... 1967年のアルバム『The Love Album』に収録されています。

6

Blue Spanish Sky / Chris Isaak

写真家ブルース・ウェバーがミュージック・ヴィデオのディレクションを手掛けた曲から... アメリカのカントリー系シンガーソング・ライター、クリス・アイザックの曲。

7

I Get Along / Pet Shop Boys

ブルース・ウェバーが手掛けたミュージック・ヴィデオの中で最もポピュラーな作品のひとつがこちら。ペット・ショップ・ボーイズの2002年のアルバム『Release』に収録されています。

8

Blue Eyes / Elton John

ブルース・ウェバーの監督作品、映画『トゥルーへの手紙』の中で使われている曲で、オリジナルは1982年にシングル盤でリリースされ、その後、アルバム『Jump!』にも収録されました。

9

Stay Gold / Stevie Wonder

マット・ディロンの出世作、1983年の映画『The Outsiders』の主題歌。日本ではテレビCMソングとしてもお馴染みの曲です。

2014.11.02

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

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今日は写真をテーマに話すということで、僕は一番好きなフォトグラファーにブルース・ウェイバーというアメリカのフォトグラファーがいます。みなさんに名前を言ってすぐに分かる方と分からない方がいると思うんですけど、Kalvin KleinやRalph Laurenとか、Abercrombie & Fitchのキャンペーンは全部、ブルースが撮っていて、写真を見ると「あーこの写真か!」ってみんな分かると思うんですけど。本人はサンタクロースみたいな格好をした、白い髭を生やした太ったおじいさんで、頭にいつも青いバンダナを巻いてるのがトレードマークのすごく素敵な人です。僕は仕事で出会ってからもう10年以上経ちました。アメリカ行った時の僕のおじいちゃんっていうことになってます。「なんで俺がお前のおじいちゃんなんだ?」って聞かれたことがあるんですが、知り合いの中で一番まともな仕事をしているし、金持ちだって言ったら、笑って「分かった。今日からお前のおじいちゃんだ」って言ってくれました。

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僕は小さい頃から写真に詳しかった訳ではないんですけど、洋雑誌とかをよく見ているちょっとませた子供でして、小学校・中学校の頃かな、最初に見た雑誌で「なんて素敵な写真なんだろう」と思って見たのが、たまたま、ブルース・ウェイバーの写真でした。それは、当時、売れ出したマット・ディロンの写真とか、ハリウッドの若い俳優とか、今でいうとRed Hot Chili Peppersのフリーっていうベーシストとか、ああいう人たちを撮ったり。もちろんゴージャスな女優さんや俳優さんも撮っていて、それも素敵だったんですけど。とにかくブルースが撮る写真の中のアメリカっていうのは夢の国みたいな、素晴らしい風景とか服装から場所、表情全てが素晴らしくって、いつか僕もこの国に行って住んでみたいと思わせるのに十分な説得力があったんですね。

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僕が最初にブルースとコンタクトを取ったのは、僕が「ブルータス」っていう雑誌でサーフィンの特集を作ってる時でした。いろんな人に出てもらったんですけど、その表紙を考えている時に、どんな人がこの特集を全部カバーするというか、代表する人になるかって、誰も思い浮かばなかったんですね。人が駄目なら波の写真にしようと思って、じゃあサーフィンを代表する波はハワイなのか、メキシコなのかって考えたときに、これも浮かばなくって。雑誌界で言われてることなんですけど、困った時の表紙は子供か動物っていうのがあったんですね。どっちもウケがいいっていう、横縞な考えなんですけど。そんな時にブルース・ウェイバーがちょうど犬の映画を撮っているって聞いたんです。彼なら海でもよく写真を撮りますし、絶対に犬とサーフィンの写真を撮ってるんじゃないかと思って探したらやっぱりあって。ニューヨークに連絡して、「こういう特集をするんだけど、写真を貸してくれないか」と聞いたところ、たまたま出てる人たちが彼の友達とすごく被ってまして、「素晴らしいセンスだな。このラインナップは。ぜひ写真も貸すし、序文も書いてやろうと」言って序文まで書いてもらったのが付き合いの始まりでした。

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今夜は写真家、ブルース・ウェイバーについてお話しています。最初にコンタクトを撮ったのは、雑誌「BRUTUS」のサーフィン特集号を作っている時だったんですけど、その後すぐ、映画会社から連絡がありました。「『トゥルーへの手紙』という映画をこれから日本で公開するにあたってプロモーションとか手伝わないか?」という連絡で、僕が作った雑誌を見て、「なんでこの子はこの映画をやるということを知ってるのか」ってびっくりしたみたなんですけど。”犬とサーフィン”の写真ていうのはその映画からきていた訳です。その後8ヶ月くらいはがむしゃらに働きました。自分が好きなフォトグラファーと仕事ができるっていうのも嬉しかったですし、ブルースが一度も日本に来たことがなかったんですね。そうするとすごく愛国心みたいなのが出てきて、なんとか日本と好きになってもらいたいし、プロジェクトがうまくいって喜んで帰ってもらいたい。最初はその情熱だけでやっていたんですけど、だんだん正気になってくると、これ結構大変だな、と。ファンは多いですけど、写真展をやるっていったらファンだけに頼れないですし。結局、雑誌の手配、どこでやろうかっていう場所ですね。今、青山に紀伊国屋っていうスーパーがありますけど、あそこが一時期、駐車場だったので、オーナーを見つけてそこに仮設でギャラリーを建ててしまったり、ドッグランを作って犬を一緒に連れてきても、犬を放している間に見れるっていうふうにもしました。

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ボクが最初にブルース・ウェイバーに会ったのはそのプロモーションの仕事をするっていうのが決まった時で、マイアミに会いに来いっていうので行きました。周りの人が彼を守っているので、中々、本人に会える人じゃないんですね。マイアミにあるビーチ沿いの別荘で、しばらく待てって言われて「嫌われたら嫌だな」とか考えながら波打ち際に座っていました。すると年老いたラブラドルが来て隣に座ったんでずっとなでていたんですね。これが有名なブルースのラブラドルかって。ブルースは愛犬家として有名で、常にラブラドルを5?6匹飼っていて、彼らと一緒にアメリカ中を旅するんですね。僕らよりも良いものを食べてるっていう、本当に毛並みの良い犬たちで。その後、打ち合わせがある所に連れて行かれて、僕はプロジェクトを失敗させたくなかったので、思ったことは言おうと思って自分の意見を言ったんですね。そしたら本人達はそれがあまり面白くなかったみたいで機嫌が悪くなってしまったんですね。自分の好きな人に機嫌が悪くなられてしまうなんですごく寂しくて・・・どうしようって思っていたんですが、「君の言うことは分かるから、その通りにしよう」っていう話になって。後で、なんで聞いてくれたのか?っていうのをブルースに尋ねたら、僕の隣にいた犬っていうのがポーラベアっていう名前の一番年寄りのラブラドルだったんですけど、彼は一切人に懐かない犬で、知り合いじゃないと近づかない。彼が僕の隣に来たのを窓から見ていたようで、「犬が信用したから彼は信用出来るだろう」と。なので、僕は自分のプランが素晴らしいから受け入れてもらえたのかと思っていたのですが、決め手は犬でした。でも犬と子供に好かれて悪いことはないので、みなさん常に犬と子供には優しくしてください。

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実際に映画『トゥルーへの手紙』が公開されて、ブルースも日本に来て写真展をやってすごくうまくいって、僕の実家にも来たんですけど、嬉しかったのは、「日本はすごくいいところで、また帰ってきたい」とそう言ってくれて。帰った後は虚脱状態でしたけど。十年以上経った今でもよく会いますし、1年に何度かポストカードをくれます。ブルースはアメリカ中を旅して、ヨーロッパ行ったりして撮影をしているんですけど、そのポストカードが自分で撮影した犬のポストカードで、本当にずるいんですよ、本当に素敵で。たまにアシスタントから電話がありまして、「今ブルースが横にいるから替わるね」って。風の音がバンバン聞こえて「今どこにいるの?」って聞くと、カリブの島の浜辺とかホワイトサンズとか。世界中を旅する人からの手紙とか電話は臨場感もあるし、うらやましくもあるし。そういうことを10年間ずっと続けてくれる人をおじいちゃんとして持てるということもすごくラッキーだなと思っているんですけど。自分もいつか犬を飼って海辺でのんびりしながらポストカードを書いたりするような、そんなおじいちゃんになりたいなと思います。