desert
Theme is... Desert
テーマは「砂漠」
かつて、野村訓市が旅した「サハラ」を
始め、世界各地の「砂漠」体験を
語ります。
Music Streamは彼が砂漠の中で
聴いていた曲を中心とした
セレクション!
2月15日・日曜日の夜8時から・・・
check it!!!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージを
お待ちしています。
番組サイトの「Message」から
送信してください。
また、ハガキ、手紙も大募集!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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スタッフ一同、お待ちしてます!!!
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
A Horse With No Name / America
1970年代に活躍したバンド「アメリカ」が1972年にリリースした曲で、全米ナンバーワンを記録し、グラミーの新人賞も受賞しました。「砂漠」では誰もが「名前のない馬」という歌詞の曲で、訓市は「砂漠」に入る時に聴きたくなるとか・・・。
Moon & Sand / Chet Baker
不世出のジャズ・トランペッター&ヴォーカリスト、チェット・ベイカーの人生を記録したドキュメンタリー映画『Let’s Get Lost』のサントラに収録されている曲。チェットの歌とトランペットの双方が楽しめる名パフォーマンスです。
Moon River / Audrey Hepburn
永遠の美女優オードリー・ヘップバーンが主演した1961年の映画『ティファニーで朝食を』との時にレコーディングされた、彼女自身が歌っているヴァージョンで、サントラを手掛けているのは名匠ヘンリー・マンシーニです。
Quicksand / Seu Jorge
今、最注目のウェス・アンダーソン監督が手掛けた映画『ライフ・アクアティック』のサントラで、全編、デヴィッド・ボウイの楽曲をポルトガル語でカバーするという・・・コンセプト・アルバムとしても楽しめる1枚から。セウ・ジョルジはブラジル出身のシンガー・ソング・ライターです。
Across The Universe / Fiona Apple
米ニューヨーク出身の女性シンガー・ソング・ライターで、1998年には「グラミー・アウォード」の<ベスト・ニュー・アーティスト賞>にも輝いているフィオナ・アップル。この曲はザ・ビートルズのカバーで、映画『カラー・オブ・ハート』の為にレコーディングされたヴァージョンです。
Fade Into You / Mazzy Star
女性ヴォーカリストのホープ・サンドヴァルが1980年代末に結成したオルタナティヴ・ロック・バンド、マジー・スターが1994年にリリースしたアルバム『So Tonight That I Might See』に収録されている曲です。
Ecstasy symphony / Spacemen 3
1980年代初めにイギリスで結成されたバンドで、「スペース・ロック」と呼ばれるジャンルにカテゴライズされる作品をリリースしています。訓市は「砂漠にいると宇宙=Spaceを感じる」とか。
Moonlight Mile / The Rolling Stones
世界最高峰の現役ロック・バンド、ザ・ローリング・ストーンズが1971年にリリースした名盤『Sticky Fingers』のラストに収録されている曲。ストリングスを入れた豪華なトラックです。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
砂漠ってラクダが列を成して歩いていて、月が煌々と照らしているイメージだと思うんですけど、僕が最初に見た砂漠のイメージも、何で見たのか覚えていないんですが同じでした。ラクダが歩いているっていう。砂漠っていう言葉を聞くと遠い国を思い出すっていうか、想像しますけど。それはきっと日本に砂漠っていうものがなくて、森や海に囲まれてとても自然豊かな国だからかもしれません。
一番最初に砂漠を意識するようになったのは、実家に【サン=テグジュペリ】というフランスの作家の『星の王子様』という本がありまして、それを読んでからどうしてもサハラ砂漠に行きたくなりました。テグジュペリというのは筋金入りの飛行機乗りでして、戦争前のまだ飛行機に乗るのが冒険家だった時に郵便飛行でサハラ砂漠の上を飛んだり、南米を飛んだりした人で、必ず作品に砂漠が出てきます。その人気が全くない砂漠を1人で夜飛行機で飛ぶっていうイメージがすごく心に残りまして、いつか行きたいと思ったのがきっかけでした。二十歳そこそこでどうしてもモロッコに行ってみたいなと思いまして、スペインに行ってそこの南の端にアルヘシラスという街があるんですけど、そこからフェリーに乗って港町であるタンジェっていう所まで向かいました。『シェルタリング・スカイ』という映画とかにも出てきますが、そこから今度は夜行列車に乗ってマラケシまで行って、そこから今度バスに乗って、ワルザザートっていう街だったと思いますけど南の方に行って、そこからまたバスを乗り継いでタクシーに乗って。アルジェリアだったかな、セネガルかな。国境近くまで行きまして、そこから遊牧民であるベドウィン族のガイドと一緒にサハラ砂漠に入りました。
「サハラ」というのは皆、「サハラ砂漠」と言いますが、現地の言葉で『荒れ地・砂漠』という意味らしくて、サハラ砂漠って言うと「砂漠 砂漠」となるのでみなさん注意してください。
★★★★★★★
モロッコの「サハラ」。簡単に行けると思っていたんですけど。砂漠っていうとついつい砂丘があって、ところどころにオアシスがあるなんて考えちゃうんですけど、実際の砂漠っていうのはごつごつした荒れ地だったり、ちょっとした低木があったりとかそういう場所の方がほとんどで、砂丘が連なる所に行くというのはすごく大変なんですよね。モロッコの場合はすごく奥地の方まで行かないとそういう砂丘がなくって、行くのが結構大変でした。着いたら着いたで砂漠は景色はいいんですけど、やっぱりすごく辛い場所でして。昼間と夜の寒暖差が大きいので、昼間40℃だと、夜30℃くらい違うので10℃くらいなんです。そうすると人ってやっぱり凍死してしまうらしくて。直射日光も浴びられないので昼間は肌を隠して、夜は毛布を被ってブルブル震えてましたね。焚き火を作って火に当たって、あとはラクダにくっついたりとかですね。また風が吹くとすぐ砂嵐になって、息もできないし視界もぜんぜん見えないので、本当に辛くって。僕はラクダに乗ってたんですけど、そのラクダの乗り心地というのが異常に悪いんですよ。腰を振って歩くんで、こっちの腰が砕けそうで、降りて歩こうにも砂嵐で危ないから「降りちゃダメだ」と言われまして。乗ってるのも辛いし、歩くのもそれはそれで辛いし。なんで自分のお金使ってこんな所に来てしまったんだろうと思いまして。そう思ってましたが、砂嵐が来たからオアシスに避難するぞっていうことになりまして目指してたんですけど、本当に絵に描いたようなオアシスがあるんですよね。砂漠の真ん中にナツメヤシのヤシの木が生えていて、池まであるんですよ。「ああ、助かった!」と思って。ちょうどその頃は風も止んでたんで、ラクダから飛び降りてそのまま池の方まで走っていって中に飛び込もうと思ってたんですけど。ベドウィンのガイドの男が「やめろやめろ!」って止めるんですね。きっと飲み水の池だから飛び込んだら悪いのかなと思ったら、落ちてたヤシの葉っぱで池の底をツンツンやるんですよ。風で揺れる水面で底の水草みたいなのが揺れてると思ってたんですけど、よく見たらそれは全部蛭でした。飛び込んだら僕はインディージョーンズ状態というかランボーですか。蛭まみれになるところでしたね。
★★★★★★★
砂漠は辛い所を越えるとご褒美があります。とにかく素晴らしい景色ですよね。僕がモロッコにいた時はベドウィン族のガイドがいたんですけど、何が素晴らしいって喉が乾くとお茶を作ってくれるんですけど。それが焚き火で急須みたいなのにお茶を入れて、それからものすごい量のミントを入れるんですね。一束とか。その後見たこともないような角砂糖、というよりは砂糖のブロックですね。それをごそっと入れて撹拌して。硝子のコップをドラえもんみたいにどこかからか出してきて入れてくれて。飲むと本当にミントと砂糖の甘みと。おいしくって。このお茶どこのお茶なんだって聞いたら「市場で売ってる中国茶だ」って言われてがっかりしたんですけど。でも本当においしいですね。
砂漠で1番何が素晴らしいかというと、僕らガイドと一緒に野宿してたんですけど、ある晩、風が全部止んで、完璧な無風状態が続いたんですよ。雲も本当に一つもない。そうすると当たりが本当に真っ暗で、なんにも見えなくなるんですけど、上を見上げますと今度は星がとんでもないことになってるんですね。僕もいろんなところで星を見てきました。ヒマラヤにも行ったことがありますし、どこも綺麗ですけど、風が止まったサハラ砂漠というのは、視界360°、上180°全て星で。星座もたくさんあるんですけど星が多すぎて何が星座だって言えないくらい見えるんですね。唯一わかったのが天の川で、なんで天の川をミルキーウェイというのかがその時初めてわかったというか。本当にミルクをこぼしたようで。そして宇宙は真っ黒だと思ってると思うんですけど、実は星座とかがあって色が着いているんですけど、それが感じられるというか。宇宙って真っ黒じゃないんだなっていうことにその時初めて気づきました。そしてそういう所に僕はいて、焚き火から離れたところに行ったんですけど、無音なんでそのうち自分の心音だけがものすごく大きく聞こえてきて、そのうちそれもどこか遠くに行ってしまうと100%静寂の中で、自分対星みたいになるので、どれだけ孤独で自分が宇宙の一部だっていうことを同時に感じられるっていうか。いろんな悩みがある人とかこれからどうしようという人がいるかもしれませんが、一度砂漠に行って1人になってみるというのはすごくいい経験だと思います。それはとても孤独は感じますけど怖いことではなくて、逆にいろんなものがクリアーに見えてくるんじゃないでしょうか。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。