「建築」
真新しいピカピカのビルではなく、
時を経て、少し色あせた、少し くたびれた建築。
過去を含んでいる建物に 心がひかれる。
そして そうした 時間を旅した建物こそが 街並をつくるのだ。
新しい街をつくるときには、思い出してほしい。
積み重なった時間は、すぐに作ることはできない。
時間は、再開発できない。
Theme is... Architecture
この春から... 【J-WAVE】と【FM802】をつないでオンエア中!
ショップやレストランなどの「内装デザイン」も手掛ける
野村訓市が世界各都市で見た「建築」の魅力、
そして、長年にわたって憧れていた
ニューヨークにある「建物」の内部を巡回する
見学ツアーに参加したエピソード...
その時に感じたことを語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
現在、「ドライブ」にまつわるエピソードと
その時に聴いていた曲について大募集中!
日本、海外、どちらの体験でもOKです。
今後、リスナーの皆さんの「ドライブ体験」
というテーマでお送りする予定!
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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スタッフ一同、お待ちしてます!!!
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Lights / Journey
サンフランシスコ出身のアメリカン・ロック・バンド、ジャーニー。ヴォーカリストのスティーヴ・ペリーが新加入後、初のアルバムで1978年にリリースされた『Infinity』のオープニングを飾る曲。バンドはこれ以降、80年代前半にかけて黄金時代を迎えました。なお、グループはオリジナル・メンバーでギタリストのニール・ショーンを中心に現在も活動中です。
We've Got Tonight / Bob Seger
アメリカのシンガー・ソング・ライター、ボブ・シーガー。ザ・シルバー・バレット・バンドを率いていた1978年のアルバム『Stranger In Town』に収録されている曲で、タイトルの通りの歌詞・・・
Make It Real / The Jets
米ミネアポリスの兄弟姉妹8人で構成されたファミリー・グループ、ザ・ジェッツ。世界的ヒットを記録した1987年のアルバム『Magic』に収録されているこの曲は、当時、日本のラジオでもオンエアされました。80年代後期の「アーバン感」が漂うポップ・チューンです。
Nite And Day / Al B.Sure
米ニュージャージー出身の黒人R&Bシンガー、アル・B・シュアが1988年にリリースしたデビュー・アルバム『In Effect Mode』に収録の曲。
She's Got A Way / Billy Joel
ニューヨーク、サウス・ブロンクス出身のヴォーカリストでピアニストのビリー・ジョエル。彼の華々しいキャリアの出発点となったデビュー・アルバム『Cold Spring Harbor』のオープニングを飾っている曲。
Let 'Em In / Paul McCartney & Wings
ポール・マッカートニーがビートルズ解散後に結成したバンド、ウイングス名義で1976年にリリースしたアルバム『Wings At Speed Of Sound』に収録されている曲で、邦題は「幸せのノック」。
Runnin / Visioneers
1990年代に絶大な人気を誇ったトリップ・ホップ系ユニット、4HEROのメンバーであるマーク・マックによるヒップ・ホップ・プロジェクト、Visioneers。2006年のアルバム『Dirty Old Hip Hop』に収録されています。
Sing Along / Billy Crudup
2014年のミュージカル映画『Rudderless』の劇中で、俳優ビリー・クラダップが歌っている曲です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
僕は内装のデザインとかをします。大抵はお店、レストラン、洋服屋さんなどで、たまにオフィスとかもやったりするんですけど。よく、どういうテイストが好きなのか?と聞かれますが、あんまり新しいものが好きじゃなくてですね、有名建築家が建てたとか・・・そういうものには余り興味がないんですね。では、どいういうものが好きなのかというと、まあ細かい好みとかはないんですけど。例えば、女の子の好みで人によっては髪の毛が長くて足首が細くないとダメだ、とか細かいことを言う人がいると思うんですけど、僕はそういうのはありません。とにかく新しくてピカピカしていたり、作った人が主張するようなものがあんまり好きではなくてですね。10年、20年と時間が経った時に街と同化するような建物が好きです。ですから、旅行に行く時もどちらかというとその街にある古い街並とか商店街とか、カフェとかでも新しいお店よりは、もうその場に40年50年、もしくは100年くらいある建物で、破れたドアとか、パーツが時間の経過とともに味が出てきてるところが1番好きですね。今っていうのはどこの大都市も同じだと思うんですけど、色々なところにお金が入ってきて再開発になってしまっているんで、ちょっと歩いて感じがいいなぁとか、その街ならではの街並っていうのがどんどん無くなっていまして、それがすごく悲しいなと思うんですけど。僕はよくニューヨークに行きますが、ダウンタウンていうのはチャイナタウンがあって、倉庫街があってみんなそこを改造して住んでいたんですけど、最近、どんどんそういうレンガの建物を壊してしまってですね、新しいコンドミニアムとかが建つんですよ。そういう所には必ず富の象徴というか、鉄筋にガラスむき出しでビカビカしてるんですよね。いかにお金をかけたかを見せていると思うんですけど、そういうビルが100年経ったときにニューヨークの顔としてちゃんと残るのかなと思うとすごく疑問に思います。
★★★★★★★
僕はあまり有名建築家の建物とか、最新の店っていうのを見に行くことがなくてですね、大抵、古い街並やチョッと古い所をとにかくぶらぶらするのが好きなんですけど。こないだ久しぶりにニューヨークに行った時にすごい僕らしくない経験をしたので、それを話そうかなと思います。僕は二ヶ月に1度位の割合でニューヨークに行きます。仕事でニューヨークによく行く男というと金融の男みたいな感じで大人っぽい良い響きだと子どもの頃は思っていたんですけど、こうしょっちゅう行くとだんだん疲れてきまして、毎月ブルートレインで鹿児島に行くようなものですよね。片道十何時間かけて。友達に会ってお酒を飲んだり、まあ楽しいは楽しいんですけど、あんまりどこかを見に行くということがなくなっていました。そういう中でニューヨークに昔、ドナルド・ジャッドというアーティストが住んでいました。元々評論家上がりで、その評論を書いているうちに自分もアート作品を作るようになって、「ミニマリズム」。すごくシンプルな物を作る人なんですけど、アメリカの近代アートを代表する人で僕も勝手にすごく影響を受けまして。心の師匠というかですね、何かを考える時に彼の本を見て、「ああ、俺はちょっといろんな物を作りすぎてしまった。削ぎ落とさなければ」とか、折に触れて作品を見てまいした。彼が1960年代の終わりかな。SOHO、今はもう一大商業地になりましたけど、そこの元工場後を買って住居として、そしてアトリエとして住んでいたんですね。3年位前から「ジャッド・ファンデーション」というのが運営されるようになりまして、そこのアトリエが開放されるようになりました。ただ、週に5日ツアーで見られるのかな。全部予約制で、今、予約しても2年後、ということで僕は諦めてたんですね、ここに行くっていうのは。で、SOHOに買い物に行く時にいつも窓から1階だけは覗いて、「いつかここに入りたいなぁ」と思っていました。それをちょうどアメリカの友達と話していたら「ああ、ジャッド好きなの?俺、友達がその財団にいるよ」って急に言うので、「そんなこと言うなら、そのパワーを俺に見せつけてみろ」と。そしたらiPhoneでメールをし始めまして、速攻で僕宛にも返事が来て、「明日の昼12時のツアーに無理矢理つっこんであげる」って。すごく喜んだんですけど、悩んでしまいまして。というのも、その日の夜は大酒飲みの友達と朝まで飲むことになっていたんですね。昼の12時って結構微妙な時間じゃないですか。悩みに悩んだんですけど、もちろん「伺わせていただきます」と返事をしました。
★★★★★★★
ジャッドのスタジオを昼の12時に見に行く。その前の晩というのはすごくヒヤヒヤしていまして。一緒に飲んでたのがノーマン・リーダスっていう、今『Walking Dead』というドラマで大人気になってしまった奴なんですけど、だいたい朝までになっちゃうんですよね・・・飲むと。その日だけは絶対に早く帰ろうと思っていたんですけど、待ち合わせ場所に行ったら既にノーマンが出来上がってですね、もう道に出てきて僕が着くのを待っていて、通行人に見つかってサインの嵐なんですけど、全員にしながら「今日は飲むから全然いいよ」みたいな。これはまずいノリだなと思って、その時、氷点下だったんですけど店を4軒位はしごしまして、まあ店が全部終わってたたき出されたんですけど、結局、ノーマンの家に行ってそこから泊まっているホテルに帰ろうとしたら「泊まってけ」とか、酔っぱらっちゃって最後は自分のポルシェの鍵までくれちゃって、とにかく結局朝まで飲んでですね、10時間。必至にホテルの部屋に帰って、もうその時点ではジャッドは諦めてたんですけど。なぜか11時に目が覚めてしまうんですよね。今から急いでシャワーを浴びて歩けば間に合ってしまう時間。一度、目を瞑ったんですけど、今後、果たしてこのチャンスがもう一回あるのかどうかと思って。「やっぱりこんなに憧れていたものだから見た方がいいんじゃないか」「いや、お前は写真集たくさん持ってるだろう。今更見たって変わんないよ」っていう心のせめぎ合いの中でなんとか天使が勝ちまして、道に出ました。普段だったら15分とかその位で着く道のりなんですけども、がっつり30分かかりましたね。もう蒼い顔してジャッドのスタジオに着きまして。世界中から集まっているその予約客っていうのが8?9人、1階にいまして。そこから1時間半、ガイドさんと一緒に全部で5階建てなんですけどワンフロアずつ見ます。まあ自分は今まで飽きるほど写真集を見ていたんですけど、自分が実際その空間の中で彼の作品を見るっていうのが、こんなにも違うものなのかっていう。なんていうんですかね、とても言葉じゃ言い表せないくらい感動してしまいまして。ジャッドっていうのは空間の中に置いてある物と他の物との関係性。例えば、大きさとか距離感ていうのを物凄く大事にする人だったんですけど、分かったつもりでいたんですけど全然写真で見るのと実際自分がその場で見るっていうのが違いまして。多分、僕は今までニューヨークに80回位行ってると思うんですけど、この過去10年間の中で1番いいことをしたな、と。ジャッドのスタジオに実際に足を運んだということがですね。これがやっぱり旅の醍醐味というか、旅の素晴らしさっていうのは「百聞は一見に如かず」。これに尽きるのかなと思うんですけど。どんなに本を読んだり、映像を見たり、人の話しを聞いてわかった気になっても、実際に自分がそこに行って見た、一目見たことがそのすべてを覆したりですね、それ以上のことを与えてくれたりするのが旅なのかなということを、今回、凄く感じました。「書を捨てよ、町に出よう」と言ったのは寺山修司ですけど、自分のコンピュータを1回離れて街に出るというのがすごく大事なんだなぁ?って、改めて思いました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。