「ドライブ」
エンジンに火を入れて、低くうなる音を背景にして 車を走らせる。
夜の街を ただ走る。
目的も、目的地も、ない。
音楽があれば、さらにいい。
大丈夫。
どこかにはたどりつく。
日曜の夜、日常からのささやかな脱出を試みよう。
Theme is... DRIVE
テーマは、「ドライブ」
一年の内でも特に心地よく、過ごしやすい時期を迎え、
ドライブ日和の今日この頃・・・
大の車好きでもある訓市が、国内外で体験した
「ドライブ」のエピソードを語ります。
ミュージック・ストリームは、ドライブにおススメの曲をセレクト!
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
現在、「ドライブ」にまつわるエピソードと
その時に聴いていた曲について大募集中!
日本、海外、どちらの体験でもOKです。
今後、リスナーの皆さんの「ドライブ体験」というテーマで
ご紹介する予定!
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Road To Nowhere / Talking Heads
ヴォーカリストのデヴィッド・バーンを中心としたニューヨーク・ベースのロック・バンドで、1970年代半ばから80年代に名作を生み、1991年に解散したトーキング・ヘッズ。1985年にリリースされたアルバム『Little Creatures』に収録の曲です。
Chasing Cars / Snow Patrol
英国スコットランドをベースにする5人組の現役ロック・バンド、スノウ・パトロール。2006年のアルバム『Eyes Open』から。
Heroes / David Bowie
1977年にリリースされたアルバムのタイトル・トラックで、邦題は『英雄夢語り』。エマ・ワトソンが主演した青春映画『ウォールフラワー』の中で、若い子はみんな車に乗って、この曲を聴きながら窓から手を出しているシーンがあり・・・ 訓市はすごく甘酸っぱい感じがして、1人でやってみたとのこと。
Free Fallin' / Tom Petty
アメリカのロック・ミュージシャン、トム・ペティが1989年にリリースしたアルバム『Full Moon Fever』に収録されている曲。訓市がドライブする時に聴く定番アーティストの一人がトム・ペティとか。
Fast Car / Tracy Chapman
「あなた、速い車(Fast Car)を持っているでしょう? 私をここから連れ出してちょうだい!」という歌詞も素晴らしい曲で、1988年にリリースされたトレイシー・チャップマンのデビュー・アルバムに収められています。
Street Lights / Kanye West
プロデューサー、コンポーザーとしても大活躍しているカニエ・ウェスト。2008年にリリースされたアルバム『808s & Heartbreak』に収録されている曲です。
Throwing It All Away / Genesis
イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、ジェネシスが1986年にリリースしたアルバム『Invisible Touch』はグループとして最大のヒットを記録しました。「ギターのループがドライブに合う」とは訓市のコメント。
Please Please Please Let Me Get What I Want! / The smith
ヴォーカルのモリッシーとギターのジョニー・マーを中心としたイギリスのロック・バンド、ザ・スミス。1984年にリリースされたデビュー・アルバム『The Smith』に収録されている曲です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
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日常における一番身近な旅というのがドライブなんじゃないかと思います。もちろん、海外に行って車を借りてドライブに出かけるなんていうのも素敵なんですけども、ちょっとね、煙草を買いに行くっていうのにわざわざ車を出してすぐに帰らないで30分走るとか、そういうのもすごく気分がいいと思います。僕は古いアメ車に乗っているんですけども、エンジンをかけて、V8のエンジンが唸りだすとどこかに行きたくなって、目的のないドライブというのが大好きです。だいたい日常というのは仕事をしているといちいちやることに目的があったり、意味があることをしようとしがちですけど、意味がないことをするっていうのが、実はすごく意味があるんじゃないのかと僕は思っています。そういう時にしか得られない喜びっていうんですかね。僕が車を運転するのが一番好きなのは1人で日曜の夜に走ることで、みなさん早く家に帰りたいものですから遅い時間といっても10時くらいから道がすごくすいてですね、誰もいない。それをエンジン音だけ聞いてもいいですし、自分の好きな曲を爆音でかけて意味もなく煙草を吸いながら走るっていうのが僕にとっての一番のドライブです。10代でアメリカのテキサスに住んでいた頃は僕の一番の仲良しはデイブという友達だったんですけど、彼と二人でよくドライブに出かけました。デイブの親父のフランクっていうのがよく言う「ガレージビルダー」というものでして、自宅にガレージがあって自分で工具も持ってですね、ジャンクヤードで古いクズ車っていうのを買ってきて自分で溶接して直す人でして、デイブの車もそのフランクが作った1955年か56年製のシボレーでした。アメグラみたいでしたね、「アメリカン・グラフィティ」。それをテキサスなんていうと道がまっすぐで曲がる必要なんかないんで、荒地がただ上下する道を二人ですっとばして意味もなく走りました。だいたいテキサスに行くと、ドラムが一定のエイト・ビートが異常に合うというかですね、ZZトップとかトム・ペティとかAC/DCなんかを爆音で聴きながらですね、窓を開けて手でドアを叩いてリズムをとりながらそれに合わせて合唱するっていうのがすごく楽しかったです。今となってはテキサスを爆走するっていうのはできないので、よく、「山手通り」をですね、僕は1人で窓を開けて大声をあげて歌ったりしています。だいたい信号で止まって横を見るとタクシーの運転手が「この人大丈夫か?」っていう顔でこっちを見てたりしまして、目が合ってこっちが深く頷いたりすると、向こうもわけも分からず頷いて、「おお…」みたいな感じのところでもう一度あいさつをして、そのままアクセルで抜き去っていくのが僕の喜びです。
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長いドライブっていうのをしたこがあります。それも2カ月半くらいなんですけども。もう十年以上経ちました。僕は夏の間、海の家をやっていたんですが、毎年夏の間、同じビーチにいるのに飽きまして、この夏はちょっと皆を訪ねようということで、ロンドンで走っている2階建てのバス「ダブル・デッカー」というのがあります。あれを手に入れまして改造して外にスピーカーが付くようにして、二階はそのままDJができるように改造しまして。2ヶ月半、高速が走れないので国道のみを仲間の男の子と総勢13人で北海道から沖縄まで旅をしました。週末はフリーパーティーをしましたし、本当になんて言うんですか。終わらない修学旅行みたいな夏でしたね。きっかけっていうのは、昔、ケン・キージーという「カッコーの巣の上で」という本を書いた作家がいるんですけども、彼が1960年代に仲間のヒッピーとスクールバスを改造して西海岸から東まで横断した旅がありまして、それが本になっているんですけど。それを若いころに読んで、「いつかこういうバス旅行がしたいなぁ」と。で、自分が旅行している時にそういうヒッピーに乗っけてもらおうという魂胆だったんですけど、誰も乗っけてくれずにですね・・・ 結局、気づいたら自分が30歳を超えたので、そろそろやらないとまずいなあということでやってみました。最初はスクールバスでもいいのかなと思ったんですけど、バス旅行といったらちょっと小さいバスを手に入れて「バスだ!」というのもかっこ悪いじゃないですか。象徴的なバスがいいなあと思ったら、2階建てバスよりすごいバスはないだろうと。誰がどう見ても360度どの角度から見てもバスだぞ、これ。というので「ダブル・デッカー」にしました。本当に面白かったですよ。寝るのが道の駅の駐車場だったり、走ってて滝とかを見つけるとすぐ停めて皆でそのまま素っ裸で飛び込んだりですね。週末は音楽でパーティーをしてっていうのをですね、2カ月半。終わった時にはもう無一文になってましたけども。まあ、人生一度ですからね。これをやったときはすごい満足感もありましたし、抜け殻のようになってしまいましたけどね。またやりたいなあと思っています、いつか。僕の計画では30代がそのバスで、40代になったら漁船を買って漁船で一周したかったんですけど、ひょんなことから子どもを持って、責任感のある親父になったので・・・。ちょろっと行ったことあるんですけどね。「いつか漁船を買って、日本一周したいんだよなぁ?」。まぁ、すればって感じですよね(笑)。
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ドライブ。それ以外にもまあまあ長いドライブっていうのは海外でも沢山やっているんですけど、今日、ちょっと思い出したのはこれまた10年くらい前ですかね。アメリカのテネシーの「ナッシュビル」に行った時の話をしようかなと。それは仕事で、「ボナルー」という3日間のフェスがありまして、それを取材に来てくれないかっていうことで、面白そうだから行こうと思って1人で出かけました。ヘッドライナーがボブ・ディランとかグレイトフル・デッドとか、あとデヴィッド・バーンなんかもいまして、すごくいいなと思ったんですけど。予算が全然なくてですね、カメラマンをどうしようっていうことになったんですよね。日本から連れて行くお金もないし、アメリカのカメラマンを雇うとしてもナッシュビルなので、どこから連れてこようかなと思った時に、「ああそういえばハーモニーがいる!」と思って。ハーモニーというのは『KIDS』っていう映画の脚本を書いたり、『Mr.Lonely』とか『Spring Breakers』っていう映画を撮った監督なんですけど。彼がナッシュビル出身で、丁度その半年前にニューヨークから故郷に引っ込んだ時だったんですね。で、電話をかけまして「元気か?」って話から、「ロックフェスがあるんだけど、俺と一緒に行かないか?」って言ったら、「俺は自然が嫌いだ。行きたくない」って言われまして。「いやいや、ボブ・ディランも出るし、プレス・パスがあるから後ろから撮り放題だぜ」と。「まぁ、じゃあ行くか」みたいになりまして。「ギャラは?」って聞くんで、「3日で150ドル」、1万5千円ですよね。そしたら「いいよ、いいよ」って受けてくれました。実際その150ドルの中には車を借りて、僕を空港に迎えにきて、そこから現地にかけて何時間も運転するっていうのも全部込み込みパックでした。すごいそれでも面白かったんですけど。空港について迎えに来てくれまして。あと友達のジェームスとデイビッドっていうのと4人で行ったんですけど。そこからずっとドライブしている時っていうのはすごい楽しくって、ハーモニーが運転しながら自分の好きな曲をガンガンかけていくんですね。それがブラック・サバスだったり、AC/DCだったり、あとは訳の分かんないノイズとかハードコアとかをかけて、それを全員で大合唱しながらハンドルをバンバン叩いたりですね。そのうちリクエストをするようになって、僕は「そろそろ、ザ・スミスとかを聴きたい」って言ったんですよ。そうしたら、「そんなもの有るわけないだろう。訓、お前はゲイだったのか?」って。ザ・スミスというのはアメリカだとゲイにも大人気だったんでそう言ったんでしょうけど、「まあ、そうか」と。僕は時差ボケもあってそのうち眠くなりまして、後ろの席で横になってうとうとし出したんですよ。そうすると前の二人が僕が寝たと思って「寝てるな、あいつ。飛行機で着いたばかりだもんな。時差ボケだししょうがないか。」みたいな話をしてるんですよ。そしたら音楽のボリュームがちょっと小さくなって気を使ってくれてるのかと思ったらいそいそとテープを替えて、聴いてるのがザ・スミスなんですよね。小さい声で前でずっと嬉しそうに歌ってて、僕はそれを寝た振りをしながらずっと聞いてたんですけど、なんでわざわざ嘘つくっていうか、隠すんだろうって。僕はザ・スミスのことを「アメリカの尾崎豊」と言っていたんですけど。昔、僕が高校くらいの時っていうのは、すごい尾崎豊の隠れファンが多かったんですけど、なんか湿っぽいと思って絶対みんな人に言わないんですよね。先輩の家に行っても「俺はR&Bとかヒップホップしか聞かない」とか言って、先輩がトイレに行ってる間にCDの棚をごそごそやると後ろに尾崎豊が全部入ってたりとか。「こいつ偉そうなこと言って、毎日泣いてんじゃんこれで」みたいな。僕は薄眼を開けながら寝た振りをして、南部のその夜の風景を見ながらザ・スミスをずっと聴いてドライブしたんですけど、その時の光景がどうしても頭から消せません。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。