「ロンドン」
5月のロンドンは素晴らしい。
暗く低い雲が空をおおう季節が終わり、
まぶしい光が帰ってきた。
May in England
音楽が街にあふれだす。
来月には、グラストンベリー。
夏も 近い。
Theme is... LONDON
今、ベスト・シーズンを迎えているロンドン。
かつて、約1年ほどをロンドンで過ごした訓市が
そこで体験したこと、出会った人、感じたことを語ります。
ミュージック・ストリームは、ロンドンをテーマにした曲、
ロンドンの風を感じる曲を中心にセレクト!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
現在、「ドライブ」にまつわるエピソードと
その時に聴いていた曲について大募集中!
日本、海外、どちらの体験でもOKです。
今後、リスナーの皆さんの「ドライブ体験」というテーマで
ご紹介する予定!
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Warwick Avenue / Duffy
Streets Of London / Ralph McTell
Son Of A Preacher Man / Dusty Springfield
Papua New Guinea / Future Sound Of London
バラッドをお前に / The Mods
Mona Lisas And Mad Hatters / Elton John
Here's Where The Story Ends / The Sundays
Champagne Supernova / Oasis
Even After All / Finley Quaye
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
ロンドンに限らずヨーロッパの街っていうのは今がベストシーズンだと思うんですけど、考えるだけで、「僕も行きたいなぁ」と思います。高い青空、そして長い昼、萌えるような緑。とにかくこの季節のロンドンというのは本当に素晴らしいんですけど、できればあの辛い冬を過ごしてから夏を見てほしいなって僕は思います。僕は何年前かな。15?6年前、20年近く前になってきましたけども、ロンドンに1年住んでいました。友達たちが「お前は本当にロンドンに1年住むのか。冬は辛いぞ。」ってすごく言うんですね。まぁそんなに辛いわけないだろうと思って行ったんですけど。夏に引っ越しまして、楽しかったんですよ。カーニバルがあったり、パーティーもたくさんあって、言われるほどご飯もまずくないっていうか気に入りましたし。ところが、秋になって冬が来ると、まぁこんなに人間、季節で落ち込むのかっていうくらい落ち込みまして。人が作ったんじゃないかっていうくらい低く雲がびっちり空を覆うんですよね。絨毯のようなんですよ。切れ目一つないっていうか。それで夕方も4時くらいになるともうけっこう暗いですし、朝は9時くらいまでやっぱり暗いんですよ。歩いている人たちの顔は暗いし、パブなんかに行っても肩がぶつかるだけで喧嘩売ってくるみたいな感じでして。本当に辛かったんですけど、春になるといきなりその雲が散ってですね、日も長くなって、初夏の頃にはこの人たち同じ人なのかな?っていうくらい態度が違うんですよね。パブに行って肩ぶつかったりするとそのまま「ごめん、ごめん。」って言ってビール奢ってくれたりですね、口笛吹いて歌を歌いながら歩いている人もいますし、僕は季節っていうものがこれほど人の性格というかですね、暮らしに影響を与えるのかっていうこと考えたことがなくて本当に素晴らしいなと思いましたし、逆に、バックパッカーの頃にイギリス出身の人たちで、実家を出て6年になるみたいな人たちが沢山いたんですけど、その理由が分かったような気がしました。
★★★★★★★
夏のロンドンていうのはもう何て言ったらいいんですかね。天気だけでも素晴らしいし、いいところが沢山あるんですけど、音楽好きには特にたまらない街なんじゃないかなって思います。そもそもイギリス、そしてロンドンから素晴らしい音楽がたくさん生まれていると思うんですけど、僕が思うにですね、それは冬がひどいからなんですね。冬の間は大抵寒いし暗いしつまんないんでみんな家にいるんですけど、そこでお酒を飲みながらギターとか楽器をいじって現実逃避をみんなしてるんですよ。すごい美しいメロディーを考えてたりとか、美しい歌詞を考えてるんですね。辺りを見回せばそんなことが微塵にも感じられないようなハードな環境にいて。だからその美しいメロディーっていうものが生まれるんじゃないのかなと思ってます。現に僕の友達で一つ当ててすごい金持ちになったミュージシャンとかがいるんですけど、お金ができて速攻で南スペインのほうに引っ越してスタジオ付きの古い家を買っちゃいまして。で、「最高だよ、こっちは」って。天気もいいしご飯もおいしいし。ところが作る曲がみんなひどくなっちゃいましたね。やっぱり日常が素晴らしいとあんまり創作には相応しくないんじゃないのかなと思いました。なので今、曲を書いてなかなかいいのが書けないとか、いい歌詞が浮かばないっていう人がいましたらぜひとんでもないような山奥とかで電気もないようなところに3ヶ月くらいいればきっと名曲が生まれると思います。ぜんぜんロンドンの話じゃなくなっちゃったんですけど、僕がロンドンの夏好きだったのはとにかくロンドンていうのはいろんなハコとかクラブがありまして、夏の間なんか特にですけど、流行ってない音楽、最近聞けないなぁっていうようなものも必ずロンドンていうのはどこかでそういう演奏を聴くことができるのでハシゴして。それがすごく楽しかったですね。あとは芸術習慣みたいなのがありまして、そういう時っていろんなとこで国の催しがあるんですけども。例えば、「ロイヤル・アルバート・ホール」だったかな。オペラとかやる格が高いハコがあるんですけど、一週間オペラがすごく安く観られるんですよね。2階席で寝転がりながら見られるんです。ビール飲みながら。そんな環境でオペラを見に行く人がどういう人たちかというと、普通にパンクスの兄ちゃんとか退職した夫婦からいろんな人が見に来るんですよね。一年に一回くらいオペラを聴いてお酒でも飲もうじゃないかって。本当にジャンルレスにいろんな人が参加して音楽を楽しむっていうのは素晴らしいなと思いまして、東京とかでも本当はぜひそういうイベントというか、あったらいいなと僕は思うんですけど。
★★★★★★★
ロンドンの夏というと避けて通れないかなと思うのが、「グラストンベリー・フェスティバル」があります。これは2時間半とか3時間半くらいですかね、ロンドンから。「ストーンヘンジ」がある方なんですけど。3日間に渡ってロックフェスが開かれます、毎年。これが何10万人来るんだか忘れましたけど、もうそれを40年くらいやっている夏の風物詩というやつでして、フジロックが多分モデルにしたフェスなんですけども。このフェスはですね、メインステージがいくつかありまして、大トリに毎年ものすごいビッグネームが出ますし、それはそれは盛り上がるんですけど、それ以外にも無数の音楽テントが出ていまして、ありとあらゆる音楽が鳴ってます。DJからアコギの演奏の人から。年齢もものすごく幅広くてですね、子連れの人たちもいればたぶんね、40年ずっと行ってるような人もいると思います。こうやってどんな人たちも音楽を忘れないで一年に一回馬鹿騒ぎじゃないですけど、自分が買ったことがない音楽を知ったりとかっていう場を持つのは素晴らしいと思うんですけど。僕も行きましたけど、嫌な思い出もありますね。とにかくすごい大きくてですね、夜中に一回着いたんですけど、車を停めたのが小川の横だったんですよ。で、ここを目標にして帰って来ればいいと思ったんですけど、次の日雨で泥が膝くらいまでくる最悪のコンディションで、歩きながらみんな靴とかも無くしてしまってですね。座るところもないし、じゃあ帰ろうかって小川を目指してたらですね、会場の近くに小川が10個以上あったんですよ。どの小川だかわからなくなっちゃいまして靴がないのに5時間くらい車を探して歩いた記憶があります。みなさん、もし行くことがあったら一番何より大事なのは自分の車がどこにあるかっていうことです。あとは今はもう変わってしまったと思うんですけど、オーガナイザーの方たちが元々ヒッピーみたいな人たちでおおらかだったんですけど、チケットを買わないで入る不届き者がすごく多かったんですね。僕も行った時お金がないし、チケットもなかったんですけど、現地の友達が「平気だ、平気だ」って言うんで行きました。会場近くの柵のとこにいるとですね、ヒッピーみたいな格好の妖精のようなおじさんがですね「チケット持ってるか?」って来るんですよ。ダフ屋かと思いまして、「僕はチケットもないし、そんなお金もない」って言ったら、「10ポンドで入れてやる」って。そんなんだったらいいかなって。こっち来いって言われて連れてかれるんですけど。柵が少し低くなっているところがありまして、どこからともなくパートナーがすごい長い梯子を持ってくるんですよ。「早く登れ、早く登れ」みたいな。まぁ、通称「ハシゴ屋」っていう立派な商売ですね。まあハシゴか嫌いな人には「ハンコ屋」っていうのもいまして。毎年一回入場した人が手の甲に押すスタンプを見て、野菜かなんかを掘って偽造するんです。それでお金を払うとキョロキョロ人目につかないようなフリをしながら素早く「手を出せ!」って言われて手を出すとそこにスタンプを押してくれたりする・・・ イギリス人て、本当に面白いですよね。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。