「海風」
夏の海岸線。
そこには、写真には写し込めないものがある。
それは、夏の匂いと 海の風。
海岸線を走るなら、冷房は止めて、窓を開けよう。
音楽のボリュームをあげれば、きっと聞こえてくる。
終わらない夏の メロディが。
Theme is ... SEA BREEZE
「海の日」を翌日に控え・・・ テーマは、「海風」。
世界約50ヶ国を旅した訓市が各国、各地の海で感じた風・・・
そこで体験したユニークなエピソードを語る。
「海風」を感じるおススメのドライブ・ルート、
夏のヴァケーションにピッタリの島もご紹介します。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聞きたい」
というリクエストも随時募集しています。
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Don't Worry Baby / Vapour Trails
I Love Your Smile / Shanice
I Wanna Sex You Up / Color Me Badd
No Time To Play / GURU
風の回廊 / 山下達郎
Ventura Highway / America
Baby Hold On / Eddie Money
On The Beach / Chris Rea
The Wind / Cat Stevens
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking ...
★★★★★★★
海風。もちろんビーチで身体に受けるのもいいんですけど、僕が好きなのはやっぱり車とかバイクで海岸沿いを走って受ける海風です。特に夏の時期っていうのはバイクが一番気持ちいいのかなって思います。夏を感じるのにこれ以上の過ごし方はないのかなと思うんですけども。思い出深いのは、昔、よくインドに行ってたんですけど、それも南インドの方。そこの海岸線をバイクで走るっていうのが本当に気持ちよかったですね。赤土むき出しの未舗装の道もたくさんありますし、あとは砂が浮いた様なアスファルトの道もありまして、かなり滑って危ないんですけども。周りに高いヤシの木があって、そこから漏れる木漏れ日の下をこう一直線に走るっていうのはね、なんですかね、タイムレスというか。自分が1時間走っているのか、半日走っているのか分かんないような気分でした。特に南インドの海岸線に行くと丘があるんですけど、海岸線沿いから丘に向かって一直線に走っていくと、空にそのまま吸い込まれるような気分がしまして気持ちよかったですね。ヘルメットもいらないですし、上着も着ないで上半身裸でビーサンていう格好で、もう全身で風を浴びるっていうか。もちろんオススメの格好ではないわけで、事故ったら本当に危ないというか、足なんて持ってかれちゃいますからね。ちゃんとしたブーツとか長ズボン、長袖にヘルメットで、皆さんぜひ試してほしいと思いますけど。僕はそういうことが全然、頭に浮かんではいたんですけど、ほぼ素っ裸のほうが気持ち良いに決まってるだろうと思って、一切そんな格好をして走ったことはなかったんですけどもね。当然、肩なんて直射日光で真っ赤になってズルむけに剥けちゃうんですけども、それも気にならないというか。それよりもその海の風を受けながら海岸沿いを走るっていう気持ちの良さに全て負けてしまいました。一番最初にインドに行った時に僕は、今も一緒に働いている親友を連れて行ったんですけど、彼は海外旅行に一回も行ったことがなくて、初めての旅行がその南インドでした。バイクを借りて、その友達をケツに乗っけて丘の道を真昼間にすっ飛ばしてたんですけど、その友たちが顔を耳に近づけてきてですね、「訓ちゃん、訓ちゃん」て言うんですよ。「どうした?」って言ったら、「俺たち、天国にいるよね。自由の風が吹いてるよ」って言うんですよ。「大丈夫?お前」みたいな。そんなクサイこと言っちゃって、だいたいここが天国だったら、まずいだろ。俺たち死んでるぞ!っていう話になったんですけど。彼がそう言ったことをバカにしましたが、内心、僕も同じことを考えていました。そのくらい気持ち良かったです。
★★★★★★★
海の風を一番味わえる素敵な旅先っていいますと、カリフォルニアのロサンゼルスとサンフランシスコの間かな。「ハイウェイ 1」という高速道路があります。すごく遠回りになる道で、もし車でロスからサンフランシスコまで行こうとするとインターステイトのハイウェイ。要は州と州を結ぶ動脈のようなハイウェイがありまして、「45号線」かな。内陸を一気に一直線に上がるので、飛ばせば5時間とかで着いてしまうんですけど、逆に風景も何もないというかですね、つまらないです。その点、「ハイウェイ 1」を通ると、これはロスからシスコまで海岸線をずっと上がっていく道でして、あの海岸沿いっていうのは実はリアス式海岸のようにすごくうねっていて、日光のいろは坂みたい道もたくさんあります。なので、どんなに飛ばしても8時間以上はかかりますし、ゆっくりその風景を見ながら行こうとすると、どうしても一泊とか2日かけていくのが一番いいと思うんですけど。この道を夏に走って行くっていうのはもう本当に最高でして、僕は何回やってるのかな、随分やってます。ロスからシスコへ行く時にその道で行くこともあれば、逆にシスコにいてそこからロスに行く時に下がってくというのもやったことがあります。ロサンゼルスのマリブの方からどんどん上がって行ってですね、途中アウトドアの有名なあの「Patagonia」の本社があるベンチュラとか、そこもすごく有名なサーフスポットです。それからサンタバーバラ。もともとリタイアした人たちが多い所ですけど、すごく裕福で波乗りで有名な町があります。それから草原地帯を通ったり、途中、「ビッグ・サー」っていう、かなり上のほうなんですけど有名な町もあります。ここはビートニクの人たちがずっと住んでた村みたいなんですけど、とても美しい場所で、有名な2組くらいしか泊まれないホテルなんかもあります。それから、海岸の「ビッグ・サー」の近くなんですけど、崖を降りると、「マーベリック」っていうものすごい有名なサーフスポットがあります。昔は地図にも載っけないで知る人ぞ知るっていうか、人に言ってはいけないっていうスポットでして。北米で一番大きい波が立つって、3メートル位の。名前の由来は犬のマーベリックくんから取ったらしいんですけど、世界中のサーファーがやっぱりそういうところを狙ってくるんで、サーフ・トリップの人たちにたくさん出会ったりします。こんな道を窓を全開にしてラジオをフル・ボリュームで走るっていうのは、もう何て言うんですかね? もし、アメリカが好きだったり、旅が好きだったり、勿論その海の風を感じて、夏を感じたいっていう人がいたらぜひ一回でいいからやってみてください。レンタカーでも今は乗り捨てができるので、例えばハーツとかに行ってロスで借りてサンフランシスコで車をドロップするというのでも全然できるので、やってみると本当にいいと思います。僕は74年製のワーゲンのバスを持っていたんですけど、もう途中でカーステも壊れてしまって、エアコンもないです。ただ窓を全開にしてギターとタイコを持った友達たちとずっとそこで歌を歌いながら海岸沿いを走りました。きっとそういう体験をすれば、なんでエンドレス・サマー、終わらない夏をずっと探すっていう人がいますけど、そんな気持ちをどこか感じられる旅になると思います。
★★★★★★★
これからヨーロッパに行くっていう人たちは、ぜひ地中海の海岸線を旅してほしいなって思います。地中海の海岸というのは何ていうんですかねぇ? ヨーロッパっていう言葉のせいかどうだかわかりませんけども、磯臭さがないですね。すごいさらっとしていて、おしゃれな海風が吹いています。僕がすごい気に入ってたのは「ギリシャ」。特に島なんですけど、「ミコノス島」や「サントリーニ島」。ああいうところに行くと港の近くで絶対にオートバイやスクーターを借りられます。それで自分で好きなところに行くっていうのが一番ラクな移動手段というか。まあ、よく迷ってしまうんですけど、標識も読めないし迷って人に道を聞いても何言ってるかさっぱり分からないんですけど。その辺あせらずゆっくり行けるっていうのが旅の醍醐味でして、白い漆喰の家と坂を登って行って突然崖が切れると真っ青なエーゲ海が見えるんで、それはそれは美しくて・・・。自分が持ってきた服はいつも間違ってたなぁと思うんですけど、ゴミみたいな服しか着てなかったので。ヨーロッパのいろんな人たちがやっぱり自分のバイクや、レンタバイクですごい大きいBMWのバイクなんかを借りて島でよく乗ってました。白い麻のシャツと麻のズボンに皮のサンダルみたいので。で、後ろに同じ素材のワンピースを着た女性がいてですね、「トップ・ガン」みたいなナス型のサングラス。僕らがかけるとしばしばパンダみたになるやつですよ。あれをびしっとかけて全身で風を浴びて走っているとこっちは口開けてポカーンですよね。とにかくそういう人たちが多くて。きっと北ヨーロッパの人たちなんですけど、短い夏の間にとにかく夏を満喫したくて海の方に出てきてバイクやオープンカーに乗って風を受けてます。僕もその気持ちはすごくわかるというか。昔、バルセロナにいてここからもう日本に帰ろうと思ってたんですけども、港にいて海風を浴びていたら・・・9月の半ばくらいだったのかな? 夏が終わっちゃうと思って、急に、「やだ、そんなの!来年まで待てない!」と思って、イビザ行きのフェリーに乗ってしまいました。帰るはずが。もうこうなったら夏をもう一度満喫するぞと思ってデッキに出て風をずっと浴びてて、そろそろ寒くなったと思ってラウンジに入ったらびっくりしちゃったんですよね。ラウンジが革ジャンを着た大男でむせかえっていて、よく見たら「ヘルズ・エンジェルス」っていう有名なバイカーがいるんですけど、そのオランダとデンマーク支部かなんかの合同夏の走り合宿みたいなのにぶち当たってしまいまして。2メートル近い大男の革ジャンがカウンターも占拠していて、サンダルに短パン、Tシャツの僕なんか居場所ないですよね。ただすごく格好よかったのは、翌朝、イビザの港に着くんですけど、6時くらいかな。降りて船の前で見ていたら、ゲートが開くと1台ずつ仰々しいんですけどまるで戦闘機が離陸するように1台1台ヘルズ・エンジェルスたちが大きいハーレーにキーを入れてエンジンをブオン!て鳴らして1人ずつ出てくるんですよ。船であった時は皆いかつい顔をしていておっかない感じでしたけど、船から出てきて風を浴びながら出てくるときの彼らの口元がすごい幸せそうでにやけちゃってるんですね。こういう人たちもやっぱり夏とこの海の近くで過ごしたいんだな?ってすごくそれを実感できて、今でも印象深いというか忘れられない光景です。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。