「南仏」
ニースで何をしていたのか、思い出すのは難しい。
海岸を歩いて、よさそうな店があれば そこで心ゆくまで飲んで、食べた。
窓を開けっ放しにして寝た。
それ以外は、何もない。
思い出せない 夏の記憶。
人はそれを バカンスと呼ぶのかもしれない。
Theme is... SOUTH FRANCE
サマー・ヴァケーションのシーズンを控え、
避暑地の定番でもある「南仏」をテーマにお送りします。
女性誌などで取り上げられるスポットではない、
野村訓市ならではのユニークな「南仏」体験エピソード・・・
そして、理想的な過ごし方について語ります。
ミュージック・ストリームは、「南仏」で豊かな時間を過ごす時に
おススメの曲をセレクト!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聞きたい」
というリクエストも随時募集しています。
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
The Big Blue Overture / Eric Serra
フランス出身の作曲家、エリック・セラが手掛けた1988年の映画『グラン・ブルー』のサウンド・トラックからオープニング・トラック。幻想的です。
How Deep Is Your Love / Bee Gees
イギリスのギブ3兄弟によるヴォーカル・グループ、ビージーズ。1977年に全世界で大ヒットを記録した映画『サタデー・ナイト・フィーバー』のサントラに収録されているメローな曲。
Summer In The City / Quincy Jones
この曲のオリジナルは1966年にヒットを記録したラヴィン・スプーンフルで、クインシー・ジョーンズは1973年のアルバム『You’ve Got It Bad Girl』でカバーしています。
La Ritournelle / Sebastian Tellier
フランス出身のヴォーカリストで、ギター、ベース、ピアノなどもこなすマルチ・ミュージシャン、セバスチャン・テリエ。2005年にリリースされたセカンド・アルバム『Politics』に収録されている曲で、大ヒットを記録しました。
夏の終わり (Instrumental Version) / Moomin
DJ、MC、プロデューサー、トラック・メーカーとして活躍し、今年5月に惜しまれつつこの世を去ったアーティスト、DEV LARGEが手掛けたメローなトラックです。R.I.P.
Against All Odds / Phil Collins
イギリス出身のアーティストで、1980年代に頂点を極めたフィル・コリンズの代表曲で、映画『カリブの熱い夜?Against All Odds』のサントラに収録されています。
Stumblin' In / Suzi Quatro & Chris Norman
アメリカの女性ロック・シンガーでベーシストのスージー・クアトロ。1978年のアルバム『If You Knew Suzi』に収録されている曲で、デュエットの相手クリス・ノーマン&スージー・クアトロ名義でシングル・カットされ、大ヒットを記録しました。
Georgy Porgy / TOTO
アメリカ西海岸のトップ・セッション・ミュージシャンによって1970年代後半に結成され、80年代に入ってヒット曲を連発したバンド、TOTO。この曲は1978年リリースのデビュー・アルバム『TOTO?宇宙の騎士』に収録されています。
Let It Loose / The Rolling Stones
ザ・ローリング・ストーンズの1972年リリースのアルバム『Exile On Main St.』(邦題:メインストリートのならず者)に収録されている曲。このアルバムは当時、2枚組で発売されました。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★★
南仏というと僕の知り合いはきっと、僕とはすごくかけ離れていると思うと思うんですけど。実際は何度も行ったことがあってすごくいいところなんですけども。南仏というとだいたい女性誌が特集してますよね。これはもう定番というか、何度食べても飽きないごはんみたいなもので、1年2年おきくらいに必ず南仏特集はやってます。プロバンスの暮らしだのなんだのっていうタイトルが付いてるんですけど。なんですかね、男性誌で南仏特集というのは見たことがないんですけど。南仏っていうのは多分、女性の方が引っかかるキーワードがたくさんあるんだと思うんですよね。綺麗な景色とお庭と、少し古いヨーロッパ製の木のテーブルにカーテンが揺れてお茶でも飲んでるみたいな雰囲気なんでしょうか?まあ「俺には全く関係ないぞ、南仏なんて」っていう男性リスナーも多いと思うんですが、まあ実際行ってみると男の人がすごく気に入る場所だと思います。南仏っていうのはだいたいコートダジュールと呼ばれていますけど、日本語で紺碧海岸という意味ですね。その名の通り海もすごく綺麗ですし、それから地中海の空の色っていうのはすごく独特の青で、昼間からみなさんキンキンに冷えたワインなんかを飲んでましてね。そこに一緒に入ってまず一杯目は一気に飲んでそれから二杯目からこうゆっくりちびちび飲みながらタバコを吸う人なんかはこうゴロワーズなんか吸ってのんびりすると気分は一気にアランドロンみたいな感じになってきます。
僕は南仏へは飛行機でも行ったことがあるんですけど。それが一番早くて便利っていうのは確かなんですが、夜行列車っていうのもあるのでそれでヨーロッパを旅するっていうのもなかなか乙なことだと思います。最初にパリで何日がふらふらして、パリには4つ大きい駅があるんですけど、そのうち南行きの電車っていうのはだいたいリヨン駅という大きい駅から出てます。そこから乗ればTGVという日本の新幹線みたいな電車もありますけど、多分今も夜行があると思うのでそれに乗ると朝にはニースの方に着くと思います。南仏の入り口というのはニースという街が一番大きい街でして、どこに行くにも玄関口となっています。世界中から観光客が集まってくる高級避暑地ですかね。宿もこの時期っていうのはいっぱいなんですけど、それでも安い安宿っていうのはあります。僕が行った時はツーリストインフォメーションに行って安いのを幾つか印してもらってそれを歩きながら訪ねて行って「空いてるか?」って。「いや、空いてない」って言ったら、じゃあ次行こうっていうので探して止まったこともあります。海まで歩いたり夜はこう、窓を開けっ放しにしてぐっすり寝る。避暑地の夏っていうのはこういう時間の過ごし方なのかなって思います。
★★★★★★★★
南仏の海岸。記憶があまり定かじゃないんですけど、たしか砂浜じゃなくて小さい石だった気がするんですがすごく長いです。そこをテクテク歩いたり近くのカフェやバールに入ってお酒を飲んだり、何をするわけじゃなくてそんなに長くはいなかったんですけど。実際その滞在中に毎回何をしていたんだろうと思うと全く覚えていません。ただそれがバカンスの仕方なのかなと思うんですけど。フランス人の人たちはちゃんと夏の間数週間休みを取ります。日本がフランスと同じようなことをしたら国がどうなってしまうのか。多分心配でみんな病気になると思うんですけど、そんなに休んでしまったら。でもそうやってのんびりできるっていうのはすごく素晴らしいことだと思います。ニースのあたりっていうのは昔から古い豪邸が多くてですね、お金持ちがたくさんいたらしいんですけど。最近はその海岸沿いの一番いいところっていうのはロシア人たちが買い占めたりしていてフランス人は住めなくなってると聞きました。それはどこの大都市でも言えるんですけど、ロンドンでもニューヨークでも。地価がこれから変わらないっていうか下がることはないだろうっていうところにはどんどんお金持ちが入ってきてそこを買い占めてますね。資本主義としてしょうがないと思うんですけど。ちょっと残念に思います。観光客としてフランスの避暑地に来たら、「トレビアン、トレビアン」って言ってるフランス人がそこらへんにいてセントジェームズのTシャツかなんかでワインを飲んでてほしいんですよね。そこがハラショーではないのかなと勝手に思うんですけど。ニースから右のほうにずっと行きますとイタリアにそのまま行くんですけども、その周りには有名なところですとカンヌとかカジノのあるモナコなんていうのもあるのでニースを拠点にぶらぶらするっていうのもすごくいいんじゃないかと思います。カンヌはカンヌ映画祭ですごく有名ですけども、普段はすごく静かな第二の高級リゾートという感じです。僕は一度だけカンヌの映画祭に行ったことがあるんですけど、ちょうど仕事で南仏にいるときにソフィアコッポラ監督が2作目の作品なんでマリーアントワネットの公開かな。で、「スクリーニングがあるんで近くにいるなら来ないか?」って言うんで行ってみました。スクリーニングっていっても映画祭の間っていうのはものすごい数をやるので彼女の映画は上映開始が8時とかすごく早くて。僕は6時くらいにカンヌに着いたんですけど、タクシーで降りたら本当に砂浜の前に降ろされてどこに行けばいいのかなって思ってたら、目の前からタキシード着た金髪の男が金髪の女を抱いてるんですよ。それも黒いワンピースで手にハイヒールを持って。で、男の片手にはまだドンペリですかねえ。シャンパンボトルを持ってその前の夜のパーティーがその二人だけ終わってないんですよね。抱きしめて腰を持ってキスなんかしていて。僕には「映画みたいだなあ」とも思ったんですけど。思い出したのは岡田眞澄さんがやっていたマドラスのCMで、これって本当の世界なんだなあって思ったことを覚えています。
★★★★★★★★
何度か行ったことがある南仏ですけど僕が一番気に入ったのは、一回しか行ったことありませんが島です。コルシカ島ってみなさん聞いたことあるかな、名前だけは知っている人が多いと思うんですけど。隣にサルディニア島というイタリア領の島がありまして、フランスなんですけどもうかなりイタリア寄りですね。携帯持って行ったときにも場所によって電波がフランスになったりイタリアになったりするくらいの場所です。日本のみなさんでコルシカというと「あぁ、教科書に出てたけどナポレオンが生まれた島ね。」くらいで終わってしまうことが多いんですけど。実際僕も行くまであまり知らなくてですね、仕事でいろんなのを取材しているときにですね「コルシカ島も行ってみようか」って行ったのがきっかけでした。すごい大きな島でして多分地中海でも1番目だか2番目に大きな島です。北はわりかし独立運動派の人が昔いたりだとか、まぁローカルな感じで観光っていうのはだいたい南なんですけども、本当に綺麗なとこで古い崖の上に街があったり、ボニファシオっていうんですけど、だいたい観光っていうのはそのへん一体を中心にするんですけど。まあね、仕事で撮ってもらった宿もすごいよかったですし、ちょっと贅沢をするというと港に行くとスピードボートをチャーターできるんですよ、1日とか。例えば1日とかになるのでご飯が欲しいっていうとちゃんとホテルとかでバスケットでランチを作ってくれるんですね。バゲットのサンドイッチとかと、よく冷えたワインとボトルに入ったミネラルウォーター。それで無人島巡りをするんですよ、地中海で。それはそれは本当に綺麗で、絵に描いたような映画みたいな地中海で船が遭難して美女と二人みたいので想像したらここだろうっていう島しかないです。連れがみんなおっさんだったんでそこに残りたいとは思わなかったんですけど。まぁ自分のお金でしようと思ったらなかなかのお値段になってしまうと思うんですけど。安くしようと思ったらね、例えば他の観光客もボートを借りたいっていうときはシェアとかできるので、ぜひ南仏に行く際はコルシカまで行ってボートをチャーターしたりとかしてほしいんですけど。それとコルシカで何が気に入ったかっていうと、ごはんがすごく美味しくてですね。栗が有名だったり、はちみつとかチーズも有名です。ワインもコルシカでしか使わないぶどうがあるらしくてすごいコクがあるワインを作ってたんですけど。まあ僕は一杯目以降味がわからなくなるんでなんでもいいんで、酔っ払えば。そこまでワイン詳しくみなかったんですけど、何が美味しいって豚肉です。放牧した、自然の中で育てた豚なんですけど、ちゃんとしたやつですと餌がほぼ栗だけらしいんですよ。栗だけ食べた栗豚。それのハムとかソテーとかもう塩と胡椒だけで死ぬほど美味しいんですね。柔らかくって。僕の今の夢は夏絶対休ませてもらえなさそうですけど、コルシカに行ってパン粉とウスターソースを持ってとんかつで食べることです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。