「アート」
ニューヨーク、ロンドン、パリ。
世界の名だたる大都市では、
アートが 街に暮らす人の近くにある。
その理由はきっと、人々のなかに
アートを楽しもうという想いが あふれているからだ。
写真集でも、ポストカードでも、何だっていい。
心にアートを。
いつもの景色が 少し違って見えてくるはずだ。
Theme is... ART
★★★★★
テーマは、「アート」。
訓市がニューヨークやロンドンを始め世界各地で訪れた
ミュージーアムやギャラリーで感じたこと・・・
長年にわたって作品をコレクトしているアーティストとは?
「アーティストをサポートする」というアクション、
アートの本来の楽しみ方について語る。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
お贈り頂く際には、エピソードにまつわる「曲」もゼヒ書いてください。
例えば・・・
「ロンドンの街角のカフェでコーヒーを飲んでいる時、
この曲が流れてきて・・・思わず聞き入ってしまった」
「トランジットで過ごした空港でこの曲を聴いて以来、
これを耳にすると、◯◯を思い出す」
「この曲を耳にすると、一度も行ったことが無いのに
あの場所が頭に浮かんでくる」 などなど
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎! ←番組での採用率高し?!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Meet Me In The City / Junior Kimbrough
米ミシシッピ出身の黒人ブルース・アーティスト、ジュニア・キンブロー。1992年のアルバム『All Night Long』に収録されているミディアム・トラックです。
I Wanna Be Loved / Elvis Costello & The Attractions
「& The Attractions」名義で1984年にリリースされたアルバム『Goodbye Cruel World』に収録。
Secret Heart / Ron Sexsmith
カナダ出身の男性シンガーソングライター、ロン・セクスミスが1995年にリリースしたメジャー・デビュー・アルバムから。
Drugs Don't Work / The Verve
ヴォーカリストのリチャード・アシュクロフトを中心としたイギリスのロック・バンド、ザ・ヴァーヴ。1997年リリースのサード・アルバム『Urban Hymns』から。
思ひで / 鈴木常吉
人気テレビ番組「深夜食堂」で使われている曲で、オリジナルはアイルランド民謡。
Tommib / Squarepusher
マルチ・プレーヤーで、コンポーザー、DJとしても活躍するイギリス人、トーマス・ジェンキンソンのソロ・ユニット、スクエアプッシャー。2001年リリースのアルバム『Go Plastic』から。
Fahrenheit Fair Enough / Telefon Tel Aviv
米シカゴをベースにしたテクノ系ユニット、テレフォン・テル・アヴィヴ。2001年にリリースされたファースト・アルバムのタイトル・トラックです。
Lovebeat / 砂原良徳
元・電気グルーヴのメンバーで、脱退後はソロで活躍しているテクノ系アーティスト、「まりん」こと砂原良徳が1998年にリリースしたアルバム『The Sound Of 70’s』から。
Holding Back The Year / Simply Red
ヴォーカリストのミック・ハックネルを中心としたイギリスのバンド、シンプリー・レッド。1985年リリースのデビュー・アルバム『Picture Book』に収録されている曲で、当時、大ヒットを記録しました。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
★★★★★★★
旅に行く時に、美術館やギャラリーを回るというのが旅の目的になっている人は多いんじゃないでしょうか。特に大人になって限られた時間の中でヨーロッパ・アメリカに、なんて言う人は特に目的になりやすいのかなと思います。僕も今はそれほどではないですがよく行ってました。単純に、日本じゃお目にかかれないものが見られたり、建物自体がアートみたいな美術館というのもたくさんありますし、あと醍醐味は、自分が好きだったり興味があったアーティストが生まれた場所にその美術館やギャラリーがあると、もう少し作品と近い距離で見られるのかなと思います。
だいたい名の知れたギャラリーや美術館には足を運びました。ニューヨークやロンドンといった東京と同じような大都市に行くといつも思うんですけど、アートというのが生活にもっと近いのかなと思います。昔でいうと「Timeout」とかそういう情報誌があって、それを街の住人が本当によく知ってるんですよね。ピカソの大回顧展みたいなのから、ものすごく今注目されている若手のアーティストまで。それが町の基本情報というか、バーやカフェに行って隣にいる人とかと喋っても知ってるんですよ。日本はアート好きな人は詳しいけど、そうじゃないとそういう会話っていうのは、突然ランダムな人とはできないのかなと思います。日本は僕の友達も個展とかで来るんですけど、なかなかアートが売れないという話をよく聞きます。家が小さいから飾るところがなくて売れないとか、壁に釘も打てないから売れないとか、いろんな理由を言うんですけど。アートを買ってそれを楽しむというという習慣があまりないのかなと僕は思っています。日本はコレクターという人たちはたくさんいるんですけど、高いものを買う人はいる。ただ、新人のものとか自分がちょっと気に入った人を買ってみて、それを家で毎日眺めるっていうのが習慣としてないのかなと。僕が思うのは、そんな有名なものを飾る必要はなくて、自分が気に入ったものだけを持って、心が少し豊かになればいいのかなと思います。ニューヨークとかだと全然お金のないスケーターが友達のアーティストの絵を買ったり、あと自分がこういうのをつくったから君のと換えてくれないかと、アートの物々交換というのはすごく多いですね。アメリカとかに行くとお金が入ったり楽しいことがあったり、何かご褒美を買うときに自分が買える範囲のアート作品を買って部屋に飾ってニヤニヤしている人がたくさんいます。そうやって好きなものを買って、自分さえ幸せな気分になれればいいという、それがアートの楽しみ方なのかなと思います。
★★★★★★★
僕もコレクトしているものがあります。それはイヴァン・ヒーコックスというアーティストで、彼のポスターをもう10年以上集めてます。ポスターといっても毎回限定150部くらいのシルクスクリーンで刷っている手刷りのもので、最初は1枚120ドルくらいだったと思うんですけど、今は150ドルくらいします。ヒーコックスというのは90年代にサンフランシスコで『ミッションムーブメント』といってダウンタウンでいろんなストリートアーティストの人たちが住んで盛り上がったシーンがあるんですけど、そこ出身の人で、チョコレートというスケートブランドのデッキの絵をずっとシリーズで描いていてなんとなく知ってたんです。彼の画風の特徴というのは版画の手法や普通のアクリルインクを使って自分が世界中を旅して回ったときに撮った街角の写真とかを元に風景を描く人です。僕はそのヒーコックスの絵にぶらぶらとした旅をやめた26歳くらいのときに出会いました。すごくなんともない風景画です。ただ、僕はそれを見たときにものすごく懐かしいというか救われたような気分になってしまいまして、なぜかというとその選ばれた風景というのがなんでもない街角なんです。例えば市場だったり、半分ずれて落ちた看板だったり、路上に捨てられたマルボロの箱がクシャクシャとなっていたりとか。それは自分が目的なくぶらぶらと歩いてきた町の風景そのもののような気がしまして、どこの国の街角なのか一瞬見ただけではわからないんですけど、でもどの絵を見ても確かに僕は自分で今まで見てきた風景だって思わずにはいられない風景でした。ずっと日本に帰ってきてからも居候続きで絵を飾る場所どころか寝床もないような感じだったんですけども、そんな自分がそのポスターシリーズを買い始めてしまいました。まずこの150ドルという値段。稼ぎが10万そこそこみたいな自分にはすごく大きかったですし、飾れないのでアメリカから届くポスターがダンボールの筒に入っているんですけど、たまにそこから出して広げて見てニヤニヤする。それをまた丸めて戻すというのを5年くらいやっていました。ヒーコックスというのは自分の中では自分専門の風景画家だと信じ込んでいます。今のアート界の中で彼がどういう立ち位置になっているのかは僕にはよくわかりません。ポスターの価値は少し上がっていますが、売ったら10倍になったとかは全然ないですし、そもそもそのポスターというフォーマットがあまり価値のあるアートとして見られてないのかもしれません。でも、僕にとってはすごく大事なアートで、今では家の玄関や自分のオフィスに合計で220〜30枚はあるのかな。年に2〜3枚発表されるとそれをコツコツ買っていたので、それを眺めるたびに僕は昔歩いた町やその時過ごした時間を思い出してます。
★★★★★★★
旅先でいろんなアートを見てたんですけども、細かくどれが良いというと本当にキリがないし、2度目に行ったらあんまり好きじゃなかったとか、タイミングでも感じることは違うので、一概にこれが良いというのは言えません。僕は基本的にものを買うというよりは人と遊ぶのにお金を使ったり、人のほうが好きなので、アートというと作品を見るのも好きですけど、その作品を作ってる本人に会いたいなというほうが強くなってしまいます。仕事柄そういう機会が多くて、自分が若い頃から憧れていたアーティストと出会って時を一緒に過ごしたりして、友達になったりというのは本当に素晴らしいんですけど。駆け出しでまだ若い、やる気だけはある自称アーティストというのと会って、彼らが年をとりながらアーティストとして成長していくのを見るのもすごく好きです。若いうちはすごくピュアで熱い芸術論で「訓!俺は〜!」みたいな話をするのが、売れてがらりと格好も言動も変わってしまってですね、「お前どうしてしまったんだ?」というのもいれば、売れても全く変わらない人もいますし、本当に楽しいですね。どの世界も一緒だと思いますが、アートというのはものすごく競争の厳しい世界で、次から次へと新しいタレントというのが生まれてきますし、その中で新しい作風を求められるアーティストという生き方は本当に大変だと思います。僕は仕事でいろんな人に会うので、例えば、「訓市くんはニューヨークにアーティストの友達が多いね」とか「売れてる人をたくさん知ってて、どうやって出会うんだい?」って聞かれたりするんですけど、実際はそういう人たちの10倍以上の人を知っていて、ほとんどが売れてないとか、もしくはニューヨークの街から消えていってしまいました。今、ニューヨークで20歳そこそこの若手アーティストというのを何人も知っています。だいたい彼らは子供の頃やティーンエイジャーの頃に知り合った子たちなんですけども。今じゃ個展をやったり、仲間たちと集まってギャラリーを作ったり、僕がちょうどニューヨークにいると招待してくれるんですけど、すごく感慨深いですよね。おもちゃとかを持って一緒に遊んでた子たちが、僕もそれでダウンタウンを歩いていた子たちが、今はお酒は飲むは彼女がどうだ、みたいな話をしてアートについて語っているんですよ。写真がどうとか映像がどうとか。本当に嬉しいですし頼もしいですし、でも自分の年を感じて悲しくなったり。彼らがこれからの10年、20年というのをアートの世界で活躍できるかはわかりませんけども、彼らの成長というのを僕はなるたけ長く見て、手伝えることがあったら手伝いたいなと思っています。アートというのは興味はあるけどなにを買っていいかわからないという人がよくいますが、自分の周りの若い子をサポートで買ってあげたり、自分が良いと思ったら他人がどう言おうとそれが一番良いアートで、それを買ってその作品を見てニヤニヤしながら生活するというのが正しいアートとの付き合い方だと思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。