M6〜M8は「新年」をテーマに訓市がセレクトしたミュージック・ストリーム。
そして、ラスト・トラックは2016年が平和であることを願って...
Theme is... TOKYO
★★★★★
2016年第一弾のテーマは「東京」。
番組前半は今年もリスナーの皆さんから送っていただいた
旅にまつわるエピソードと、その旅に紐付いた曲をセレクト。
そして、後半はリスナー方からの提案にお応えして、
「東京」をテーマにお送りします。
東京生まれ、東京育ちの訓市が感じる魅力について語ります。
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2016年も番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎! ←番組での採用率高し?!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Welcome Aboard / The Love Unlimited Orchestra
Africa / TOTO
Missing You / John Waite
I Want To Know What Love Is / Foreigner
幸せな結末 / 大瀧詠一
Walk On The Wild Side / John Waite
Year Of The Cat / Al Stewart
And I Love Her / Kurt Cobain
What's Going On / Marvin Gaye
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
僕は生まれも育ちも東京なのでずっといるんですが、本当に外国人観光客の人が増えたなってすごく実感しています。昔からいましたが、原宿・渋谷、それから代官山。歩いていると住んでる人とすれ違うより、外国人カップルとかそういう人達に会うのが本当に増えました。昔と違うのは、今はネットの情報もありますし、インスタグラム。あれを結構みんな使ってたりして、日本人でもわりかしマニアックな人たちが溜まるようなところにこそ観光客のみなさんが来てますね。多分、ガイドブックに載っているような場所がもうつまらなくって、なにか自分たちの趣味に会うような場所を探して、ローカルが素敵だって言ってるところにすごく行きたがるんだと思います。ちょっと前なら「ビッグカメラに連れて行け」とか、「キディランドに行きたい」とか、「東急ハンズは素晴らしい」というので満足してくれていた友達が、今は「ちょっと河童橋に行ってきたよ」とか、「下北のレコード屋でレコードをディグってきた」とか、それから「ゴールデン街で行きつけの店ができた」とか、なんか日本人みたいなことを言っています。
東京という街を僕が一番最初にちゃんと意識したのはもう十何年も前になりますけども、ソフィア・コッポラという監督が『Lost In Translation』という映画を東京で撮りまして、その撮影を手伝っていた時ですね。あの映画のあとはちょっとした東京ブームというのが世界中で起こりまして、たくさん人が訪れるようになったんですけども。僕はソフィアに“親の七光りのダメな2世の典型”って言われている時に会いまして、アメリカでは不当に叩かれた時もあったんですけども。彼女は90年代の終わりかな?カメラマンとして活動して、東京にしばらくいました。で、その時の思い出や経験をもとに脚本を書いていたんですけど、2003年だったかな。ソフィアがちょうどロケハンで小さなチームで来ている時に、自分が脚本のもとにしたいろんな場所がもう全部なくなっているということに気づきまして。東京っていうのはすごく移り変わりが早いというのは聞いていたみたいなんですが、まさか1軒もなくなるとは思ってなかったみたいで。僕は当時、海の家をやっていたんですがそこに彼女がやってきて、「あなたならふらふらしてなくなったお店も全部知っているはずだから、私が求めている場所もわかるはずだ」って言うんで、「じゃあ手伝ってあげてもいいけど、新しいロケーションを探すんだったらハイヤーやタクシーに乗ってちゃダメだから、一緒に歩いて探すっていうのならいいよ」っていう返事をしまして、次の日から1週間くらいですかね。二人で東京の街を炎天下の中ずっと歩きました。僕は海からそのまま行ったのでビーサン・海パンにタンクトップかなんかで、それでも暑かったですが、彼女はやっぱり素敵な格好をして、あんな暑い気候で歩いたことなんかなかったと思うんですけど、汗まみれになりながら一生懸命ついてきて。僕らにしてみたらハチ公が撮りたいとか、もう毎日見ててうんざりじゃないですか、なんでこんなところを撮りたいんだろうって。でも彼女たちの視点ていうのはすごくおもしろくて、一生懸命何十箇所も回って選びました。ちょうどそのロケハンが終わった後にいつの間にか僕の役というのができて映画にも出たんですけど、30歳の頃の自分を見るのが恥ずかしくて、プレミアの時以外まだ一回も見ていません。
★★★★★★★
ソフィア・コッポラの『Lost In Translation』。予算もぜんぜんなかったですし、ただのインディー映画で誰も見ないんじゃないかと思っていましたが、ニューヨークの友達から「すごく面白い映画に訓が出てたぞ!」っていう連絡を受けて「あぁ、ウケたんだ」と思っているうちに、ヨーロッパの友達から「すごい久しぶりに顔を見たぞ!東京行きたいなぁ。」と。「あぁ、君も見たんだ。」そのうち何年も会っていない親戚から飛行機の中で見た映画に似た顔が出てたけど、あれは訓市か?」っていう。そうこうしているうちに、これはもしかしてヒットしてしまっているんじゃないかと。そのうちアカデミー賞も取って、予算が5〜6億円で撮ったのに100億円以上売り上げたのかな。その年一番のサプライズだったらしいんですけど。あの映画のおかげで世界中の人たちがすごく東京という街に興味を持ったみたいです。それはよく言う古いものと新しいものが混在してる街。もちろん文化も違うし、そういうのをひっくるめて「なんて魅力的な街だ」っていう風に見えたらしいんですね。パークハイアットのホテルや代官山にあるクラブのAIR、宇田川町のカラオケボックス。それからソフィアが行ってなくなってしまったストリップ小屋を再現したA.P.C.の店内とか渋谷の交差点、中目黒にあるパチンコ屋さん。僕から見れば見慣れた風景で特別なんとも思っていなかったんですが、映画で見た時に確かに「ああ、東京ってこういうのが自然とぐちゃぐちゃとあって、不思議なところだよなぁ」と再認識もしました。映画をやった後っていうのはいろんな人が「ぜひロケ現場を見たい、連れてってくれ」って世界中からやってきました。エキゾティックに見える風景を求めているだけじゃなくて、あの映画には東京だけじゃなくて、自分が海外に一人で行った時に新しい文化に戸惑ったり孤独を感じてしまったり、それからそこでできた友達に新しい世界を見せてもらって冒険が始まって、自分がだんだん受け入れられていったっていう気になっていく喜びとかそういうのがあったんじゃないかなって思うんですけど。今でもいろんな人が来て、友達の友達だったり、東京の面白いところに連れて行ってくれって言われてよく連れて行くんですけど、どこに連れて行くかというとだいたい古いところに連れて行くことが多いですね。東京で長くやっているスナックだったりとか、古いバー・名物オヤジがいるとか変わったママさんがいてその人がすごく話がおもしろいとか。そういうタイムスリップしたような場所、そういうところに連れて行くんですけども、なぜかというとその方が自分が楽しいからということで。普段の環境から少し離れたところに行くというのはすごくわくわくするというかそんな気がします。なので、みなさんも自分なりにぜひ探してみてください。どこに行けばいいかわかんないっていう時はですね、もし海外から友達が来たとしてどこに連れて行くかって考えると想像しやすいかもしれません。何も新しくできたモールや駅ビルに連れて行ってもみんなも喜ばないし、多分自分も面白くないんじゃないかなと思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。