Let's travel! Grab your music!
Theme is... PARIS
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
そして、後半のテーマは「パリ」。
タキシードに身を包んで出席したチャリティーのディナー会場で
訓市の目を釘付けにした「男性」とは?
かつて、ヘミングウェイが常連だったバーの名店で繰り広げられた
愉快なエピソードについて語る。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Campari Soda / Stephan Eicher
チューリッヒ出身のシンガー・ソングライター、ステファン・アイヒャーが、同じくスイスのバンドTAXIの曲をカバーしたヴァージョン。
Everybody's Gotta To Learn Sometimes / The Korgis
イギリスの男性二人組ザ・コーギス最大のヒット曲で、2004年公開の映画『エターナル・サンシャイン』のサントラでBeckがカバーしています。邦題は「永遠の想い」。
The Long And Winding Road (Naked Version) / The Beatles
ポール・マッカートニーの作詞・作曲によるバラードの名曲。フィル・スペクターがアレンジを手掛け、ストリングスを取り入れたオリジナル・ヴァージョンはアルバム『Let It Be』に収録されていますが、こちらはポールの意向でリミックスされたシンプルなヴァージョン。
People Help The People / Birdy
イギリスの女性シンガー・ソングライター、バーディーが2011年にリリースしたデビュー・アルバム『Birdy』に収録されている曲です。
白いパラソル / 奇妙礼太郎
SUNTORY「オールフリー」のテレビCM曲として話題を集めたカバー・ヴァージョンです。
Garden Of Love / Skatalites
1963年にジャマイカで結成されたスカ・バンド、スカタライツが2002年にリリースしたアルバム『From Paris With Love』に収録されている、まさに、パリの街角で聴きたい1曲です。
Maybe / Janis Joplin
ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーを離れたジャニス・ジョプリンが1969年にリリースしたファースト・ソロ・アルバム『I Got Dem Ol’ Kozmic Blues Again Mama!〜コズミック・ブルースを歌う』に収録されているソウルフルなトラックです。
True Love Waits / Radiohead
レディオヘッドが2001年にリリースした初のオフィシャル・ライヴ・アルバム『I Might Be Wrong ? Live Recordings』に収録されている曲で、トム・ヨークが愛息ノアに向けて書いたと言われているラヴ・ソングです。
Middle / DJ Snake feat. Bipolar Sunshine
フランスのEDM、ヒップホップ系の超売れっ子サウンド・クリエーター、DJ Snake。リリースされたばかりの最新アルバム『Encore』に収録されている新曲です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
3月にも行きましたが、再びパリに行ってきました。その前はしばらく行けませんでしたが、こういうのは不思議なもので、久しぶりに1回行くと立て続けに行く用事ができたりします。3月もすごくたのしかったですが、今回は夏だったので、また街が全然違って見えて素晴らしい景色を味わいました。前回はスケーターたちとつるんで若い子たちと遊びましたが、今回はもう少し堅い仕事でスーツを着ないといけなかったので、それはまた新鮮で面白かったです。旅といえば、僕の場合だいたい貧乏旅行で、キャンプだったり人の家のカウチを泊まり歩くというのが多かったので、まずこういうスーツを着たりフォーマルな格好をするというのはなかなかないことでした。きっとこの番組を聴いてるみなさんも、旅行に行くときフォーマルな格好をするというのは、結婚式に呼ばれたときくらいなんじゃないかと思います。もちろんビジネスマンの方で会議と会食のために海外に行くという方はきっとスーツを着ると思いますが、僕は普段もスーツを着ないので、たまに着ると完全に七五三の子供のようにウキウキしてしまいます。今回はチャリティーのディナー会にも出なければいけなくて、周りの男性はタキシード、ファッションのディナーパーティーだったので、女性もスーパーモデルみたいな人たちがたくさん呼ばれていまして、彼女たちもノーブラにタキシードという、なかなか目のやり場に困るディナーでした。こういうのは日本ではないシチュエーションで、ヨーロッパでなければ滅多にないのかなという感じでした。じゃあ、僕はそのディナーでそういう女性をチラチラ横目で見ながら酒を飲んでたんじゃないかと、そう思う方もいるかと思いますが、違います。僕は男性に釘付けになっていました。それは元マンチェスター・ユナイテッドのサッカー選手でエリック・ザ・キングと呼ばれたカントナです。みなさんカントナを知っていますか?昔、スタンドから野次った観客に激怒して、走り込んでカンフーキックをお見舞いしたり、ファールしてきた相手を倒して、顔面をスパイクで踏みつけたり、傍若無人なフランス人です。でも、ボールタッチはすごく繊細。僕はカントナがいたからマンチェスターのファンで、もし息子が生まれたら名前はカントナにしようかと思ってたくらい好きでした。ちょうどそのディナーに一緒に出た友人がイギリス人のピーターという男性で、そのディナーの前に僕と彼は言い争いをしたばかりでした。たまたまユーロがやっていたのでサッカーの話になって、『訓、好きなチームはどこだ?』と聞くので『マンチェスターだ。』と言ったら、みるみる顔がこわばっていきまして、『出て行け!』みたいな。彼は生粋のリヴァプールファンなんです。ヨーロッパを旅するときにサッカーが話題になることが多く、どのチームのファンかというのはすごく大事なことだったりします。もしみなさんが英語やフランス語が話せなくても、好きなチームはどこかというのが言えれば多分、1・2時間はバーで延々と話すことができます。
それは置いておいて、そのディナーで最初にカントナに気づいたのはピーターでした。『おい訓、カントナがいるぞ!絶対に一緒に写真を撮らなきゃ!どうやって声をかけようか。』『いや、リヴァプールファンだろ?』って突っ込みましたが、返ってきた答えは『カントナは別だ。』。このニュアンスはどんなものかというと、熱狂的な阪神ファンで巨人は大嫌いという人が、長嶋を見ていきなりうろたえるような、そんなものだと想像してみてください。
★★★★★★★★
今、パリは観光客だらけですが、昔はボヘミアンな画家や作家、いろんな若者が世界中から集まった街です。こんなに綺麗な街並みは本当に少ないと思うので、きっと住んでるだけで創作意欲も高まったに違いないだろうなと僕も思います。なにしろ、なにも作らない僕でも創作意欲が高まってしまって、高まったけど何をしていいかわからないという感じでした。これだけ綺麗だと、たとえ安宿暮らしでお金がないとしても、美味しいご飯に素敵な散歩道、そして綺麗な公園もたんまりとあるわけですから、どこか満たされた日々が過ごせるのではないかと思います。僕が憧れたのはロストジェネレーションと呼ばれる、ヘミングウェイやフィッツジェラルドが住んでいた頃。パリはその頃の街並みがほとんど残っているので、昔のことを調べて、彼らがどこにいたのかをたどる旅というのはすごくやりやすいです。ヘミングウェイはとくに有名で、彼のファンはヘミングウェイがどこで何をして何を食べたというのを追いかけるんですが、その聖地と言われているのがホテル・リッツにあるヘミングウェイバーです。ホテル・リッツというのはココシャネルがずっと住んでいたという、ヴァンドーム広場にある最高級ホテルです。高すぎて普通はなかなか泊まれません。僕も泊まりません。そんなリッツの廊下を抜けて、一番端のわかりにくいところに小さなバーがあります。それがヘミングウェイバー。これはかつてヘミングウェイが夜な夜な酒を飲んだとされるリッツの看板バーといいますか、すごく格式の高いバーです。ちゃんとした格好じゃないと当然入れません。スニーカーとデニムで追い出された人もいますし、短パンなんかもってのほかで、みなさんちゃんとしたシャツを着て革靴を履いていくわけです。僕が旅に行くときは常に身軽で小汚い格好をしているので、こういう場所に行きたくても行けないですが、今回は別でした。なにしろ世界中から友達がパリに来てましたし、みんなスーツを着ていたので毎晩ヘミングウェイバーに行ってどんちゃん騒ぎでした。そういうのも本当はダメなんでしょうが、シャツに蝶ネクタイのバーマスター、すごい強面で20年くらい働いてる方だったんですが、実はお酒が大好きな陽気なイギリス人で。僕らの連れの、底抜けに明るいイギリス人のおばさんとすっかり意気投合してしまいまして、一緒になって飲み始めたら、全てが無礼講になってしまいました。気づいたら全員、蝶ネクタイはずれ、ハイヒールは脱ぎ、ただでさえ声が大きいのに2割増しの大きい声でみんな笑ってますし、みるからに女たらしそうな人がわけも分からず隣にいたおばさんを口説き出したり。それはそれはウディ・アレンの映画『ミッドナイト・イン・パリ』のワンシーンのような愉快な夜になりました。その場にいた全員すっかりたのしくって、結局、毎晩いくことになりました。場末のバーとか若者が集う賑やかなラウンジなんていうのも楽しいですが、こういう大人が行く格式あるバーでどんちゃん騒ぎというのもまた楽しいものです。他のお客さんがしっとりと飲んでいて、うるさいなっていう顔をされた時に騒ぐのはもちろんマナー違反ですが、なんとなく空気を読んで、ここまではアリかな?というのをチラチラとお店の方の顔色を伺いながら、許されたと思ったらゴーサインが出たととりまして、一気に騒ぐっていうのがとにかく楽しいものですね。このヘミングウェイバーでみんなでひたすら飲みながら、美しいリッツの中庭に出て大騒ぎをしながら吸ったタバコは格別に美味しかったです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。