Find this music at the town...
Theme is... NEW YORK
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
そして、後半のテーマは「ニューヨーク」。
先日、訓市が久しぶりに訪れた「第二の故郷」=ニューヨーク…
地元の親友とともに訪れた行きつけの中古レコード店でのエピソード、
敬愛するアーティストのひとり、トム・サックスの展示会場で
訓市が体験したこと、感じたことについて語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。
この夏の間に、「ドライブ・ミュージック」特集もお送りする予定です。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Well Traveled / Janet Jackson
昨年11月にリリースされた7年ぶり、11枚目のアルバム『Unbreakable』から。プロデュースは久しぶりにジャム&ルイスとの共同作業です。
When We Were Young / Adele
最新作、2016年1月にリリースされたサード・アルバム『When We Were Young』のタイトル・トラック。
I'll Try Anything Once / The Strokes
ニューヨーク出身の5人組ロック・バンド、ザ・ストロークスが2006年にリリースしたアルバム『First Impressions Of Earth』に収録されている曲「You Only Live Once」のデモ・ヴァージョン。
Come Fly With Me / Frank Sinatra
アメリカの大手航空会社とのタイアップのもと、「旅客機での世界旅行」をテーマに制作されたフランク・シナトラのアルバムのタイトル・トラックです。
Pocket Music / 山下達郎
1986年にリリースされた8枚目のアルバムのタイトル・トラックで、達郎マニアの訓市が特に好きな曲のひとつとか。
Passing Me By / The Pharcyde
米ロサンゼルス出身のヒップ・ホップ・グループ、ザ・ファーサイドが1992年にリリースしたファースト・アルバム『Bizarre Ride II The Pharcyde』に収録されている曲で大ヒットを記録しました。
Sea Of Love / Iggy Pop
1963年のデビュー以降、現在に至るまでコンスタントに活動しているアメリカのロック・シンガー、イギー・ポップが1981年にリリースしたアルバム『Pop』に収録されている曲で、ザ・ハニードリッパーズのカバー・ヴァージョンです。
These Days / Nico
モデル、女優、歌手として活躍し、ルー・リード率いるヴェルベット・アンダーグラウンドのファースト・アルバムにも参加したニコ。この曲は1968年のアルバム『Chelsea Girl』に収録されています。
Easy Way Out / Elliot Smith
1990年代から2000年代にかけて活躍したアメリカのシンガー・ソングライター、エリオット・スミスが生前に発表した最後のアルバム『Figure 8』に収録されている曲です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
僕は先日、雑誌の仕事でニューヨークに行きました。久しぶりのニューヨークだったんですが、とても居心地がよかったです。やっぱり僕はあそこの夏が好きなんだなと実感しました。どこか気だるい空気と30度くらいある気温、暑い空。そして、カフェの扉がみんな開け放たれていて、道端に座り込んで思い思いに時間を過ごす人たち。そんな中、僕には16年、毎年一緒に仕事をしている親友のカメラマンがいるんですが、コニーアイランドにあるちょっとした場所でDJをしようという話になり、その近所によく行く中古レコード屋があったので一緒に行きました。そこはA-1レコードというところで、ニューヨークでは数少ない、本当にオンボロで中に入ったらレコードがうわーっとある、ザ・レコード屋みたいな場所。そこでレコードをチェックしていると店のスピーカーから知ったようで知らない曲が流れてきました。ふと耳を傾けて聞いていると、それは『She Of Love』のカバーでした。僕はThe Honeydrippersという人たちのバージョンが1番好きでよく聞いてたんですが、その『She Of Love』は、なんかすごく低い声がゆったり歌う、まるで誰かがカラオケで歌っていうるような。でも、その日の晴れた午後とレコードの雰囲気、そしてその曲がものすごくマッチしていまして。店員に聞くと「イギーポップだよ。もう一回かけようか?」って。2度目のイギーポップをゆっくり聞きましたが、その瞬間、僕の気持ちはどこか昼下がりのビーチに飛んで行ってしまいまして、気づいたらその2度目の演奏も終わっていました。そのあとその店員が僕の連れのカメラマンに気づくと「デイヴィッド!」といきなり声をかけてきたんです。友人は覚えてなかったみたいで「そうだけど、君だれ?」「久しぶりだね。覚えてる?あの10番街の倉庫でやったパーティー。あそこにいたジョシュだよ。」って。「あぁ!あの、ありとあらゆる人が来た、めちゃくちゃなパーティー?!」。若者が酒を飲み過ぎて救急車で運ばれたり、じいさんばあさんまで来て踊ったり。「いまだにあのパーティーに来た人たちはあの事について話してるよ。」って、すっかり盛り上がってまして。最近のパーティーの話なのかと思いましたらそれは1998年のニューイヤーパーティーの事だったのですごいなぁと思って。ニューヨークは人口の9割が州外の人だし、出たり入ったりが激しい街ですが、少なくとも僕が知ってるダウンタウンはどこか下町風情が残る小さな街で、たまにこういう光景に出くわします。10年ぶりとか20年ぶりっていう懐かしそうに話す2人を眺めながら、こういう出会いがあるニューヨークというのはいい街だなぁと再び思いました。
★★★★★★★★
パーフェクトな場所でパーフェクトな音楽を聞く。もうひとつそんな体験をしました。それはブルックリンミュージアムに行った時のことです。とにかく滞在中1番の青空で30度を超えてたのかな。でも湿気はないし、ミュージアムの前の芝生も本当に青々としているし、最高の天気で。そこで僕がすごく好きなトム・サックスというアーティストの展示をやっていまいした。トムは日本ではまだそんなに知られてないかもしれませんがとても人気のある人です。例えば、どこでも買える安いベニヤ板とかダンボール、ガムテープやホッチキスにゴミ袋と、そういう身の回りにあるものを使って自分が偏愛しているものたちをその通りに作る人です。彼には好きなブランドというのがあって、上からNASA、シャネル、マクドナルド。例えばNASAでいうとアポロ計画に憧れて自分で月面着陸船とか宇宙服を作るんですが、だいたいそれは手作りのボール紙とかゴミ袋でできていて、ちょっとユーモアがあるというか、ギャグかと思う人もいるんですけど、それを本人は至って真面目にやっていて。そこがおもしろくもあり、共感できるというか、本当に子供が大人になっちゃったみたいな人なんです。そんなトムは音響オタクでもあって、過去20年近く自分でサウンドシステムをアートピースとして作ってきました。ネットで調べてもらえれば出てきますが、これまたふざけていまして、刀がささっていたり、手書きで“ここは触っちゃダメ”とか書いてあって、それがミュージアムの手前の天窓があるホールに10個以上展示されていました。それは僕にとってはかなりツボなもので、かじりついて見ていたんですけど、なにがすごいってそのおもちゃのガラクタみたいなシステムは全部ちゃんと動くんです。その10台以上が全部ケーブルで繋がれていて、一つの音源から同時に鳴るようになっていました。光が降り注ぐ中、そのふざけたシステムからトム自身がつくったプレイリストの音が出てたんですが、突然、久しぶりに聞く曲が流れてきました。最初は全然わからなかったんですけど、それはエリオット・スミスの曲で。もう10年以上前に亡くなってしまったので知らない人もいるかもしれませんが、フォーキーな音楽を作ってた人で、最後は自ら命を絶ってしまったんです。そういう彼なのですごく暗いというか、悲しくなる気がして、最近聞いてなかったんですが、それを夏の日差し溢れる静かなミュージアムの中で、おもちゃみたいなふざけたスピーカーで聞くっていうのがものすごくシュールな一瞬で。いろんなことが心に浮かんできましたし、物悲しい気持ちは確かにありました。でも、最後に聞いたときみたいな印象はなくて、その日の展示会の経験と、そのエリオット・スミスの曲が完全にマッチしまして、その日以来、また彼の音楽を聞いています。音楽と景色がシンクロしたときに突然、すごい力を発揮したりするというのはあると思います。この番組でかけている曲も、みなさんが今いるまわりの風景とマッチして、意味深いものになる瞬間があるといいなと僕は思うんですけど、みなさんそんな一瞬はありましたでしょうか。もしあるとしたら番組をやっている甲斐があるというものです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。