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Let's travel! Grab your music!
Theme is... 何かを思い出させる旅
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは、「何かを思い出す旅」。
これからの時期のヨーロッパ旅で感じたこと・・・
眼にするもの全てが過去へのスイッチとなり、自分の内へ内へ。
訓市が25歳の頃に感じた気持ちとは?
昔を振り返り、考える時間をもつ一人旅のススメ。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Mercy Mercy Me / Marvin Gaye
1971年にリリースされた歴史的名盤『What’s Going On』に収録されている曲で、作詞・作曲ともにマーヴィン・ゲイ本人によるもの。
Heart Of Mine / Boz Scaggs
1980年代から90年代にかけて「AOR」と呼ばれるジャンルを代表するヴォーカリストの一人だったボズ・スキャッグス。この曲は1988年にリリースされたアルバム『Other Roads』に収録されているものです。
Stranger In Moscow / Michael Jackson
過去のヒット曲のリマスター・ヴァージョンによるベスト盤と、15曲の新録で構成された2枚組のアルバム『HISTORY Past, Present And Future Book 1』に収録されているバラードの名曲。「デンジャラス・ワールド・ツアー」でモスクワに滞在した時にマイケルが書いたと言われています。
One Way Ticket / Cyrille Aimee
フランス人の父とドミニカ人の母の間にフランスで生まれた女性ヴォーカリスト、シリル・エイメー。2014年リリースのアルバム『It’s A Good Day』に収録されている曲です。
君が思い出になる前に
ヴォーカリストの草野マサムネを中心とした4人組バンド、スピッツ。この曲は1993年にリリースされた3枚目のアルバム『Crispy!』収録されているもので、初のヒット曲となりました。
City Lights / Nujabes
日本人クリエーターでトラックメーカーのヌジャベスが2011年にリリースしたアルバム『Spiritual State』に収録されている曲です。
The Last Song I'll Ever Sing / Gavin Friday
アイルランドのダブリン出身のシンガー・ソングライター、ガヴィン・フライデーの3枚目のアルバム『Shag Tobacco』に収録されている曲で、同作には同郷で親交があるU2のボノとエッジも参加しています。
My One And Only Love / Chet Baker
伝説的ジャズ・トランペッター&ヴォーカリスト、チェット・ベイカーのドキュメンタリー映画『Let’s Get Lost』のサントラに収録されている曲で、多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げているスタンダード・ナンバーです。
Exogenesis: Symphony, PT3 Redemption / Muse
イギリスの3人組バンド、ミューズが2009年にリリースした5枚目のアルバム『The Resistance』に収録されている美曲で、同作はグラミー賞の「最優秀ロック・アルバム賞」を獲得しています。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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僕もこのところは仕事がえらく立て込んでしまっています。打ち合わせをする前に打ち合わせをさせてくれ、なんていうのを重ねているうちに、行くはずだった海外出張の日程をずらしてはキャンセルをし、そうこうしているうちに一週間がたち、一ヶ月がたち、もう2ヶ月くらい缶詰になっていて、いき詰まった日々を送っています。そうなると『あぁどこかに行きたいなぁ』となるんですけども、じゃあどこに行きたいのかというと、具体的にどこかを思い浮かべることができなくなってきました。空港のベンチに座って窓の外に停まる飛行機を想像したり、電車やタクシーで、空港からどこかの街に向かう自分なんていうのは想像できるんですが。夏が終わって秋の気配、そしていよいよ冬がやってくるというのを肌で感じる今の時期というのは、旅に行くと寂しさや孤独感というものが普段よりも2割増しくらいでくるので、寂しがり屋さんにとっては大変危険な旅になります。僕はこの時期の旅というのが、思い出になってみるととても印象深いというか、実は一番好きなのかなぁと思ったりもします。どうしてか考えてみたんですが、いろんなことを思い出したり、考える時間になるからなのかなと思います。僕が最初に雑誌を作ったり取材を一人でしていた頃は、今の時期にヨーロッパを旅することがすごく多かったんですけども、お金もないのでバスとか電車で移動してて、そこに座ってるとなんとも不思議な気分になったものです。窓から景色を眺めたり車内の乗客たちを見たりしているんですが、“冬の格好になった人たちが入れ替わっていくなぁ”とか、窓の外に広がる、ポツポツと現れては消える家とか、なだらかに続く丘陵地隊。ところがヨーロッパなんていうのは今の時期、もう午後の4時頃には夜なので街灯に明かりが灯ります。その頃になると、どうがんばって外の景色を眺めていてもどんどん自分の意識というのは内側へ内側へと向いていってしまう気がします。目にするものすべてが過去へのスイッチになるというか、何かを思い出して、そこからどんどん奥に意識がいってしまうんです。特に最初の取材とか初めて仕事でヨーロッパを回っていた時とか、帰国前の25・6歳くらいの頃。先に何の予定も展望もないですし、夢もないっていったら言い過ぎかもしれませんが、とにかく何にもなかったので、こういう風景とかなにもない夜を感じているうちにおセンチになったり、どこかプレッシャーみたいなものを感じていたのかもしれないです。ずっとカタンカタン鳴る電車の音と窓ガラスを見ていると、自分の顔が映るじゃないですか。それを眺めているうちに、自分がまるで半透明になっちゃったような、そんな気がしたのを今でもはっきりと覚えています。それを懐かしく思うなんて、当時の自分に言ったら『冗談じゃねぇ。俺は辛いんだぞ。』って、きっと今の自分に言うと思うんですけど。ああいう時間は本当に贅沢だったなぁと今では思います。考えるだけ考えて、もやもやしながら電車が駅に着いて、ホームに降り立つとすごく寒いじゃないですか。ピリッとした空気と吐く息が白くて、「よーし、ちょっとなんとかしなきゃな。」って気合いを入れるあんな時間を、僕はいますごく欲しています。
★★★★★★★★
どんな時にいろんなことを考えてしまうかというと、季節ハズレの海とかキャンプ場じゃないでしょうか。昔オンボロの車で友達とキャンプをして回ってまして、夜中にカルフォルニアのキャンプ場に辿りつきました。夏のはじめの方にもそこにいたんですが、すごい人だかりで、ちょっとした街のように大きいキャンプ場でした。そこに夜中に着いてテントを張って、朝起きてテントの中から這い出た時に、キャンプ場の中が自分たちのテント以外一つもないことに気づきました。“いつまで休みを引っ張る気なんだ”っていう現実を突きつけられたような気もしましたし、強烈に寂しい気分になりました。同時に、“この山も景色もうまい空気も、全部俺たちのものだぞ”っていう高揚感もありまして、『ざまあみろ!俺たちのものだ!』というようなことを言った記憶もあります。ただ猛烈に寂しくて、何をするにも何かを思い出して、『これからどうすればいいんだ。』とか、『そういえば2年前こういうことがあって、あいついなくなったなぁ。』とかいろんなことを考えすぎました。とにかく25・6・7歳とかっていうのは大人子供みたいな年で、これからどうするっていうのを考えてた時は、特におセンチな気持ちになったような気がします。まあ、いま考えると若いんですけどね。若さとは何か、みたいな話をこの間したんですが、若さの特権とは、いわゆる刹那的に生きることじゃないですか。その瞬間瞬間に生きて、無計画で楽しいことがあるとすぐその雰囲気に流されて。とにかく先のことよりいまの楽しさっていうことだと思うんです。それと同時に若いころは、変わっていく現実やちょっとした思い出、去年と比べて誰かがいないとか、そういうことにすごく敏感です。ロマンチストでメランコリック。『あんなに仲良かった友達なのに、なんでいま一緒にいないんだろう。』ってすごく考え込んだり、別れた彼女や彼氏のことを急に悲しく思い出したり、きっとそういうのが違う景色の中で一人を感じた時に滲み出てくるんだと思います。年をとると僕も含めてなんですけど、どんどん鈍くなって、1年くらい会ってなくても『普通だろ。』とか、だいたいそういう風になってしまいますよね。人生というのは振り返ってばかりでもしょうがないですが、やっぱり点と点じゃなくて一本の線だと思います。過去の自分の生き方とか思い出とか感情があるからこそ、いまの自分があると思うんですよ。当たり前のことなんですけど、毎日の生活の中でなかなかそういうことに気が回らないというか、完全にそこに浸れる機会がなかなかない。そんな時に旅っていうのはすごくいい時間を与えてくれるんじゃないかなと思います。特にこの寒くなり始めた寂しい時期にです。旅というと、疲れたからリラックスで温泉に行きたいとか、南の島に行きたいとか、どうしてもずっと行きたかった街で美術館に行きたいとかいろいろあると思いますが、僕がオススメしたいのはこういう時期こそ、一人でどこかに行くこと。長い移動時間をとって昔のことを振り返ったり、強い感情というのを思い出すというのも、すごく大事なことなんじゃないかなと思います。12月になると師走で忙しくなると思うので、11月。ちょっとした何かを思い出す旅に出かけてみてください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。