It reminds me something already I forgot.
Theme is... NIGHT
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「夜」。
手っ取り早く日常から離れられる時間に思うこと、感じること・・・。
訓市が若いリスナーに向けて語りかけるメッセージ、
そして、期待していることとは?!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Against All Odds / Phil Collins
Lost Stars / Maroon 5
Lambric 9 Poetry / Squarepusher
Positive Force / Delicate Steve
若者のすべて / フジファブリック
Because The Night / Patti Smith Group
Saturday Night Inside Outside / The Avalanches
Good Night / The Beatles
This Best / The Jazzual Suspect
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
いよいよ冬の気配と長い夜の季節がやってきました。と言うと松山千春のことを話しだしそうですが。僕は昔から痩せているというのもあり寒いのがすごく苦手で、それだけで冬は憂鬱です。ただ、夜が長いというのだけはものすごく好きです。なにしろ夏だと朝の4時にはもう明るいので、4時まで飲んでただけで朝帰りというか、『またやっちまった!』ってなるんですが、冬は6時まで飲んでてもまだ暗いですからね。朝帰りじゃないというか、まだ昨日が続いてるような気分で楽しく飲めます。
僕は雑誌『STUDIO VOICE』のクリエイティブディレクターという、インチキくさい名称で嫌いなんですけど、そんなような仕事をしていて、先月末に出した号というのが“night stories”、『夜の特集』としました。これは僕が夜好きというのではなくて、若い人たちに夜、もっとアクティブになってほしいなと思って。よく自分が好きだったものとかやってきた過去のこととかを話してくれと言われますが、それは同世代向けの雑誌でやればいいわけで、この雑誌の仕事を受けた時は、自分よりもっと若い人たちの発表の場にしたり、もしくは何かをやりたいという人たちの背中を押せるような場所にしたいなぁと思ってはじめました。雑誌っていつのまにかカタログのようになって、何かを買わせるみたいなことが目的になってますが、この雑誌ではできれば“これをやりなよ”とか“こういうものもあったんだ”というのを感じてほしいなと。そう思ってもらえれば、今の世代はあまり旅をしないと聞きますが、きっと行きたくなるんじゃないかなと、そういう風に思ってやってます。その中で特集を夜にしたというのは、夜というのは日常から離れられる一番手っ取り早い旅なのかなと思ったからです。だいたい昼間の世界というのは明るいですから、そこで隠されてたことが夜になるとでてくるのかなと思います。危ないとか、暗いと物理的に人も減るし変な大人も増えますし。でもその代わり、夜というのは昼間仕事があったり学校があったり縛られる中で、唯一自分たちが好きに過ごせる時間。それと同時に自分がやることにたいしてその責任は自分でとらなきゃいけないのかなというような時間でもあります。僕が旅を始めたころは、興奮して昼も夜もいろんなとこに行きましたが、まだまだ大都市と言われるところが危なくて。『あそこに行っちゃいけない。ここに行っちゃいけない。』というのがすごく多くて緊張したのを覚えています。ニューヨークでも街角で焚き火をしていておっかないんですよ、周りにいる人たちが。いまオシャレ雑誌とかを見て、“すてきなライフスタイルショップに行きたいわ”と思っている人たちは、20年前同じ街角が夜になると無人で、とてもじゃないけど地元の人も行かないような場所だったなんて信じられないと思います。ダウンタウン近くでも、友達のうちに泊まってるとよく銃声が聞こえたり、外に車を1時間くらい停めていたら窓を破られてカーステが全部盗まれていたり。酒を飲んで酔っ払って一人で帰る、というのがなかなかできないこともたくさんありました。でも、こういうところで危ない目に遭わないようにどうするのか感を働かせて過ごすというのは、世の中生きていく上ですごく大事なことなんじゃないかなって。真面目に生きているだけじゃダメというか、英語には ”Streetwise” =『路上の知恵』っていう言葉があって、結局そういうことを知らないとどこかで人に騙されたり、そういうことに巻き込まれるような気がします。僕はいろんなことをやってきていろんなとこに行きましたが、今まで無事に生きてこられたのも旅先でそういうことを学んできたからかなと思います。
★★★★★★★★
殺気立った夜中の地下鉄とかあからさまによからぬ雰囲気の女性達がずらりと並ぶ街角とか、そんなところを通過しながら夜にいろんな人と出会いました。本当に夜って、昼間に会ったら絶対に話してくれないような人も隣り合うと急に友達になったりします。ニューヨークのダウンタウンのバーで知り合って意気投合した人がのちにハリウッドスターになったり。相手は僕の仕事がなんなのか知りませんが、“あの夜は楽しかった”というだけで一生の友達になります。そこが夜の面白いところで、一晩一緒に過ごすというのは、昼間同じ時間を過ごした時より何倍も、何百倍も濃い時間が流れているということです。というのも、きっと昼間というのはどこかみなさん他人行儀といいますか、仕事の看板を背負っていたり、どこか素の顔が見えないんですけど、夜暗くなってくるとだんだんむき出しの顔が出てきます。そしていろんな話をして、酔っ払って笑ってひっくり返って怪我したとか痛い目にあったりいろんなハプニングがあるうちに、その晩に会っただけなのに何年も前から知った古い友人のような気がしてきます。僕はそういう瞬間がすごくすきだから夜が好きなのかもしれませんし、旅先でいつも飲み歩くのもそういう理由だと思います。ちなみにこの夜特集を作った『STUDIO VOICE』でも、今一緒に仕事をしている編集の女の子とはバーで知り合いました。何度か見た子で、いい音楽がかかると気持ちよさそうにしながら知らない通りすがりの客ともさらさらと話しているのを見て、『この人はちゃんと人を見て対応ができる人なんだろうな。』と思って、『何をしてるの?』と聞いてみたらちょうど編集で。今月末で会社を辞めてフリーで仕事をしながら、アートをやってるからその時間をもう少し持つ、という話だったので、『ちょうどいいとこにいたね。すぐ来週にでも電話してらっしゃい。』と言って、もう1年働いてます。夜に人を観察するというのは、どんな面接よりもその人がどんな人かわかりやすい場だと思います。夜は出歩くだけでなくて一人の時間もすごく好きです。散歩をしたり音楽を聴いたり本を読んだり。そしてアイディアが浮かぶのもだいたい夜です。誰かがどこかで同じようなことを書いていたと思うんですけど、アイディアというのは自分の頭の中から生まれてくるのではなくて、ふわふわ浮いて通りすぎるものだと。それを自分がキャッチできるかできないかの差で、アイディアがきたり浮かばなかったりする。僕は本当にそうだと思いますし、そんなふうに僕の前をふわふわ通過していくアイディアというものを捕まえるのに、夜ほどふさわしい時間はないと思います。無音で感度が高まってるからかもしれませんし、旅先だったりするとより高感度になります。それはきっと孤独だったり日常から離れてる時間だからというのもあると思います。いい音楽を作る人・すばらしい物語を書く人・絵を描く人・何か次の大きいことを考え出す人も、みんな冬の長い夜の間に時間を削って作っている人たちです。新しい仲間を探したり一人孤独を感じながら何か新しいものを作り上げる。夜というのはそういう時間で、特にこの番組を聴いている若いリスナーの皆さんには是非、夜を有意義に使ってもらいたいなと思います。なぜなら夜というのは若者のものだと思うからです。君たちに昼間「ああしろ、こうしろ」と言っている大人たちも、夜の間は監視できませんから、寝てる間に何かことを成すというのが君たちの義務。夜が明けた時に『あら、世界がひっくり返ってる。』そんな朝を僕は期待しています。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。