☆☆☆☆☆
Let's travel! Grab your music!
Theme is... NORWAY
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは後半のテーマは「ノルウェー」。
スウェーデンやデンマークと比べて、知っているようで知らない国…
訓市がバックパッカー時代に知り合ったスウェーデン人の多くが
ノルウェーに出稼ぎにいく理由とは?
第2の都市で美しい港町「ベルゲン」に訓市が求めたものについて語る。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
So Here We Are / Bloc Party.
Cello Song / Nick Drake
Sad Eyes / Bat For Lashes
Gold For The Price Of Silver / Kings Of Convenience
Water On / Curly Giraffe
Sweet 'N' Sour / The Crusaders
Song For Annie / Erot
Eple / Royksopp
Soma / Krilla Deluxe
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
ノルウェーというと、知っているようでなかなか行く機会がない、遠い国のような気がします。隣のスウェーデンであればVOLVOとかSaabみたいな車、H&Mや、家具で言えばIKEAみたいに、生活の中で身近に感じるものがたくさんあって、何気に世界中にある大きい企業というのがスウェーデンはすごく多いです。なので、北欧というと大体の人がスウェーデン、もしくはデンマークを思い出すと思うんですが、ノルウェーというと『あぁ、ヴァイキングの国』くらいで、いま何があるのかというのはなかなかわからないと思います。僕も実際には2回くらいしか行ったことがなくて、知識的には同じようなものでした。日本と一緒で捕鯨をする国、あとはノルウェーサーモン。
僕がバックパッカーだった頃というのは90年代なんですけど、スウェーデン人のバックパッカーがすごく多くてよく一緒になりました。想像の通りでかい人たちで、馬鹿でかいリュックを背負って、何年も旅をして国に帰らないという人にもたくさん出会って仲良くなりました。北欧の人が旅にはまると、お日様は出てるし、ご飯はうまいしでぜんぜん帰らないんです。そんな仲間が手っ取り早く金を稼ぐ時にやっていたのが、ノルウェーのサーモン工場への出稼ぎでした。なんでも朝から晩までベルトコンベアで運ばれてくるサーモンを捌いていくらしいんですが、なんでスウェーデン人が出稼ぎに行くのか、小学校の頃からスウェーデンというのはすごく裕福な国で、みんなお金があるんだと信じ込んでいた僕には理解できませんでした。それを言うと、『いやいや、ノルウェーこそ金持ちの国なんだよ。あそこは石油とか天然資源がすごく豊富で、若い奴がサーモン工場でサーモンの腹なんか裁かねえんだ。だから僕らが行くんだ。』と。すごくびっくりしたのを覚えています。実際に初めてノルウェーに行ったときは、その物価の高さにものすごいびっくりしまして。僕が最初にオスロに到着したのはすごく夜遅かったんですが、もう何もやってないんです。ホテルの周りを探して歩いて、開いていたのがバーガーキング。初めて来た国でバーガーキングってどうなんだと思いましたが、僕は昔から極度のバーガーキング病にかかっていまして、時々ワッパーが食べたくて発作のようなものが起きます。特にエキストラマヨネーズっていうのを頼んでつけるともうめちゃくちゃうまいです。で、グッズを集めるくらい好きだったので、ノルウェー最初の食事でもバーガーキングだったら安いしいいや、と思って行きました。するとお得セットというやつが確か、日本円で2400円くらいするんです。なんでしょう、好きだったはずなのに浮気されたというか、ぼったくられたような気がして、えらく腹を立てたのを今でも覚えています。
★★★★★★★★
ノルウェーは大変裕福な国ということで、最近はどうなのかわからないですが、どうしてそんなにお金があるかというと、石油とか天然資源ですごく設けた挙句、いつか枯渇するだろうからと、そのお金を運用しようということになったらしいです。財務省だかの役人におじさんが一人いて、彼がゴールドマン・サックスからスカウトがくるほど運用がうまくて、国のお金を何倍にもしたらしくて。実際にスカウトが来ても、『国の未来を作る方が大事だ。』と言って断ったようです。日本にそんな役人がいたら、どんなに経費を使い込もうが、自宅を税金で賄おうが、誰も文句を言わないと思うんですが。ノルウェーはそんな感じでお金を作って、それと同時に全てに税金を高くかけて国民を保護しています。すごく羨ましいですが、自分がもしノルウェーに生まれて育っていたら、たぶん何にもやらないんじゃないのかなぁと思いました。
僕が一番行きたかったのは、ノルウェー第二の都市であるベルゲンでした。オスロからものすごく離れてまして、第二の都市といっても本当にこじんまりした美しい港町。歩き回りましたけど、確かにそんなにすごいものはないです。なぜ行きたかったかといえば、それはベルゲンサウンドと言われる、その地発祥の音楽があったからです。KINGS OF CONVENIENCEやROYKSOPP、EROTといった、フォークっぽかったり昔のディスコとかをうまくアレンジしたとても暖かい音楽。それが2000年前後ですかね、突然大ブームみたいなのを巻き起こしました。その音楽がベルゲン出身の音だと聞いて、なんでこんな音が聞いたこともないような町から出てきたのかっていうのにすごく興味があったんです。実際に歩いてみるとこじんまりはしてるんですが、若い人が多い学生の街でした。ただ、どうして70年代のディスコとかフュージョンジャズの、ものすごい渋い音をサンプリングしてこんな音を作ったのかというのが全くわからなくて、地元の人に声をかけて話を聞いたりしました。するとその答えというのが、『ここは見ての通りなんにもない、流行りとも無縁な北の果て。若い子たちが音楽に興味があってレコードをたくさん買おうと思っても、物価は高いし、買えるものといったら中古レコード屋で出回るすごく安いレコード。しかも、それも自分の親やおじいさんの世代が昔買って聞かなくなった、二束三文で売ったフュージョンジャズとか限られた音しかなくて。それを買ってサンプリングしたりして作ったサウンドがベルゲンサウンドなんだと思うよ。』と。痛快ですごくいい話じゃないですか。2000年前後って音楽業界が大きくて、大量のお金を使って大都市できらびやかな音をつくろうとしているときに、誰も知らないような小さな町で若い子たちがあるものだけを使って作った音楽というのが、ものすごい影響力を持った。それは、例えば90年代のシアトルで生まれたグランジみたいに、なんでロサンゼルスやニューヨークではなくて、シアトルというところから一軍のバンドが出てきたっていうのと近いのかなぁと。ネットができて随分距離感というものはなくなってきましたが、きっと今も世界のどこかで一軍のグループが、自分たちで手に入れられる音やいいと思うものだけを使って新しい音を作っているんじゃないのかなと思います。そしてそんな音と出会える旅というのを今年もしたいなぁと思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。