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Let's travel! Grab your music!
Theme is... HIGH WAY 1
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「ハイウェイ1」。
米カリフォルニア州の海沿いをメインに南北に伸びる高速道路...
かつて、憧れのワーゲン・バスを体に入れて体験した
「車旅」のエピソードについて語ります。
カリフォルニアを数日で体感するなら「ハイウェイ1」をススメる
訓市の本意とは?
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Marrakech Express / Crosby, Stills & Nash
Morning Sunrise / Weldon Irvine
Gong Li / Red Hot Chili Peppers
Cast No Shadow / Oasis
生活の柄 / 高田渡
Into Your Arms / The Lemonheads
Nightswimming / R.E.M.
The Needle And The Damage Done / Neil Young
Free Bird / Lynyrd Skynyrd
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
5月というのはたぶん、12ヶ月の中でも一番気持ちの良い月かもしれません。特に、晴れた日は湿気もなく日向はどこまでも暖かいですが、日陰に入れば冷たい風が心地よかったりします。ということは、今が一番ドライブに合う季節なんじゃないかと。車の暖房も冷房も必要なくて、窓を全開にして通りを流せば、風が車の中にビューっと入ってきます。風の音で車内に流れる音楽がかき消されたりもしますが、それもまた気持ちよかったりして、一緒に曲を口ずさんだり、時には大声で歌ったりする。先日、ジョシュア・ツリー国立公園について話しましたが、それ以来、僕はかつて友達と買ったフォルクスワーゲンのバンのこと、その時に走ったハイウェイ・ワンのことをずっと思い出しています。ハイウェイ・ワンというのはロサンゼルスとサンフランシスコの間を結ぶ、とても古い高速道路です。普段その二つの都市を車で行き来しようとする場合、インターステートという州をまたがる直線の、8車線くらいあるような高速がありまして、そこをとばせば5、6時間で着くんですが、ハイウェイ・ワンというのは海沿いのいろは坂といいますか、崖の上のくねくね曲がった道を走ることになります。なので、1日で行こうと思えば行けるんですが、疲れを考えると2日くらいかけて行くのにふさわしい道です。僕はこのハイウェイ・ワンを何往復したのか、もう覚えていないですが、何度走っても退屈したことがありません。そして、この晴れた初夏の時期というのは本当に最高で、この時期に一人車を走らせていると、“あぁ、ハイウェイ・ワンを走りたいなぁ”と強く思うのです。
ロサンゼルスがある南カリフォルニアとサンフランシスコがある北カリフォルニアというのは実は何もかもが違うところです。砂漠気候の南と、雨がよく降り、緑がとても濃くて牧草地帯なんかもある北では、もう同じ州じゃないんじゃないかってくらい全く景色も雰囲気も違います。僕はロスからシスコに向かったこともあればその逆もあるんですけども、フォルクスワーゲンの時はサンフランシスコからロスを目指して出発しました。2列ある座席のうち、一番後ろを残して真ん中の椅子は取っ払って捨てて、そこにみんなのバックパックを敷き詰めて簡易ベッドみたいにして、その上に何人かが寝っころがるというスタイルで、クールエンジンの古いフォルクスワーゲンはもう荷重オーバーでなかなかスピードが乗らないんです。でも、そのトロトロ運転というのがまたハイウェイ・ワンにはすごく合いまして、エアコンもなければラジカセもないので、暇になるとだいたいみんな楽器を手にとって大声で歌ったりしながら窓の外の景色を眺めたりしたものです。いつも空気が乾いてるんですが、特にこの時期というのは本当に気持ちよくて、ついつい訳のわからないジャムセッションみたいなのを延々と続けたものでした。ディジュリドゥ、これももちろんバンの中にありまして、乗ってた友達の何人かが吹けたので、かわりばんこにディジュリドゥを吹き鳴らして、下手くそな太鼓をボコボコ叩く。そして、それに合わせてギターをジャカジャカ。もし車外の人が僕らが演奏しているのを聴いたら、なんのこっちゃと思ったと思いますが、車内にいる僕らにとっては、それが夏の訪れを祝福する喜びの音楽のように聴こえていました。
★★★★★★★★
サンフランシスコを出てハイウェイ・ワンに出ますと、海岸線のうねる道を進んでやがてサンタクルーズの方へと進みます。サンタクルーズはボードウォークがあって海辺に遊園地がある、映画でいつか見た古い西海岸の風景が残っている街です。そこからは町のない道をひたすら海岸線に沿って進むんですが、途中、アメリカで一番大きい波が立つマーベリックっていうポイントを通ります。その辺にはヒッピーサーファー、長髪で70年代からタイムトリップしてきたような人たちにたくさん会いましたし、やってよかったのかわかりませんが、焚き火なんかをして楽しく美味しくコーヒーを飲んだこともあります。そして、そこを過ぎて行くとビッグサーという町があります。そこはビート文学を愛する人たちにとっては聖地のような場所です。というのも、『路上』という小説を書いたジャック・ケルアックが『ビッグ・サー』という本を書いていますし、当時のビートニクの溜まり場だったらしいです。何もないんですが、とても気がいいというか、素敵な場所で。僕はビッグサーには最初そこまで興味はなかったんですが、90年代にインドをふらついてた頃、まだ60年代の生き残りというのがまだたくさんインドにいたんです。その中でアメリカ人の年老いたヒッピーに出会ったことがあるんですけども、ジャック・ケルアックが亡くなったときに、いろんな人たちがビッグサーに集まって、そこでプライベートな追悼集会をしたという話をしてくれました。ろうそくを灯して詩の朗読会をしたり、楽器を持ち寄っていろんな音楽を楽しく演奏したらしいんですが、そんな話を聴いて、“いつかビッグサーに行ってみたいな”と思って、実際に行きました。そこでは、古い住人達と出会って昔のビートの頃を話しを聞いたり、一緒にドラムを叩いて叩き方を教えてもらったり。自分がかつて読んだ本の景色の中に自分を置くっていうのは、本当に素敵な体験でした。普通の旅というのはいろんなことをスケジューリングしてその通りに動く旅というのが多いと思うんですが、予定を詰め込まない、ただのんびり走る車の旅というのは、途中で何か面白いものを見つけたり、寄り道をしてしまってそこからどんどん進んでしまったり、なんでもできるのが一番いいところだと思います。僕らのハイウェイ・ワンの旅というのはまさにそれで、例えば、本当に開けた美しい牧草地帯に出くわしたらすぐに車を路肩に止めてのんびりタバコを吸って景色を眺めたり、草の上に寝転んで空を眺めながら昼寝をしたり。自分の横に止まっている水色と白のツートンのワーゲンバスでしたが、夢にまで見たワーゲンバスを持っている自分に酔いしれてしまったり。かっこよかったですね、あの車。そうやってどんどん南に向かっていくと、そのうち穏やかな丘陵地帯を越え、ときに内陸を通ってロサンゼルスへと向かいます。カリフォルニアというのがどんな場所なのか。それを短い期間で体験しようと思ったら、ハイウェイ・ワンを車で旅するのは本当にいいと思います。これからの季節、観光でディズニーランドに行きたいとか、買い物に行って美味しいものを食べたいとか、もちろんいいと思うんですが、旅の目的を、ある道を走ることに決めて、そのいく先々で気に入ったものを見つけて止まったり、寄り道をする旅。そんな旅もすごくいいんじゃないかなと思います。今年の夏にそんな機会を持てる方は是非やってみてください。そして、海外なんかいく暇もない、お金もないという方。同じような車の旅というのを日本でやってみてもいいんじゃないでしょうか?例えば東京から大阪まで車で行く。それも東名高速を使うのではなく国道や海沿いをひたすら走ったり、急に気が向いたら山の中に入っていったり、1日で行けるところを3日、いや、4日はかけて行く。そんなことをするのが車旅の一番の醍醐味だと思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。