ON AIR DATE
2017.06.11
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... MIX TAPE


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「ミックス・テープ」。
先日、ユーミンのライヴを観て訓市が思い出したこと...
高校時代、アメリカが留学の際に多くの友人から餞別として受け取った
「ミックス・テープ」... そこに入っていたオリジナル選曲の中身とは?



★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.06.11

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Right Here Right Now / Jesus Jones

2

When We Dance / Sting

3

Perfect Day / Patti Smith

4

Change The World / Eric Clapton

5

Jamaica Song / ハナレグミ

6

Will You Still Love Me Tomorrow / Carole King

7

Homburg / Procol Harum

8

It's Gonna Take A Miracle / Laura Lyro

9

Stars / Janis Ian

2017.06.11

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

先日、松任谷由実さん、ユーミンのライブに行ってきました。そういうことを言うとだいたい『訓市さん、意外です。』とか言われてしまうんですが、余計なお世話だ、と言いたいですね。良いものは良いです。確かに、高校生の頃にユーミンのライブに行ってるとしたら確実に隠れて行ったと思います。なにしろ、とんがったものが好きっていう顔をするのにみんな大変でした。しかし、歳を重ねるとそんな気を使う必要もなくて、『あぁ、バックバンドの演奏が良いですよね。』とか、いろいろ深読みしてくれるので、非常にありがたいです。ライブは知った曲を聴くたびに、懐かしい、という気持ちですごくたのしかったのですが、アンコールが1度あって終わって、お客さんが帰りだした頃に、ユーミンがまた戻ってきて、ピアノだけで『卒業写真』を歌いました。周りにはじいさんばあさんの熱狂的なファンが多くて、その人たちが頬にツーっと流れる涙を、ポケットから出したハンカチで拭う姿にグッときてました。“まだ、ハンカチとかちゃんと持ってるんだ!”っていう。僕も、アメリカに住んでいた頃の高校の卒業式のことを急に思い出して、なんとなくグッときてしまいました。僕がアメリカにいたのは御察しの通りもうだいぶ前のことで、まだまだ音楽というのはカセットで、それをウォークマンで聴く時代でした。日本では輸入CD屋でなるたけ安く買うとか、あとはレンタルショップで借りたCDをみんなカセットに録りなおして、それを聴いているのが普通でした。そして、みんなこぞっていろんなテープを作っていました。もちろんアルバム全部を録るというのもありましたけども、いろんなテーマをつけて自分でつくる。僕が留学でアメリカに向かう時には、随分とたくさんのテープを友人からもらいました。そのミックステープというと、既に持ってる曲があったとしても、その人が順番を考えてわざわざ録音して、インデックスに書く曲名の文字までこだわったものをくれる。それはどんな贈り物よりもありがたく実用できるものとして愛聴しました。アメリカに行くということで、ものすごいアメリカンなミックスを作ってくれた人、背伸びしてルーツミュージックみたいなものをミックスしてくれた人、『お前はパンクが好きだっただろう。』と、轟音のパンクミックスを作ってくれた人。いろんなテープがありました。
ホストファミリーの家で僕があてがわれた部屋というのは洗濯部屋で、古いステーキを大量にストックしていた大きな冷凍庫が常に唸り声を上げているような、窓のない小さな部屋だったんですけど、その部屋沿いに置かれた小さなベッドで天井のファンをながめながら、ヘッドホンをつけて日本の友達からもらったテープを聴くとなんとも言えない気分になったものです。それはホームシックになったとかではなくて、僕はどちらかというと、あるもので平気なほうです。テキサスにいた時も醤油を1年間食べなかったくらいなので、全然そういう感じじゃなかったんですが、ただ、“随分、遠くへ来たなぁ”とか“今までいろんなことがあったなぁ”と、若いのにぼんやりと過去を振り返る、そんな気分にさせられました。


★★★★★★★★

そのミックステープ。出発の時にもたくさんもらったんですが、滞在先のホストファミリーのところにもよくテープが届きました。それは気を利かせてくれた友達が送ってくれたり、中には実家の親に住所を聞いて送ってくれる女の子もいました。手紙つきだったりするんですが、読んでみてもそれが誰なのかわからないようなミステリーなもの。“随分モテていたんじゃないか”と思われる人もいるかと思いますが、きっと、当時珍しかった海外に行く人が気になっていて、その人に手紙を送っちゃう私って素敵。という感じもひしひしと感じる手紙が多かったような気がします。
当時、売れていたようなヒット曲を集めたようなものや、バラードばかりとか。“それはこちらを寂しくさせようとしてるのか”というものや、永ちゃんだの浜省だの、“アメリカっぽいだろう”と向こうが一生懸命考えたJ-POPを編集して送ってくる人、いろんな人がいましたが、どれもありがたく聴いていました。東京に住んでいたら絶対に聴かなかったであろう音楽も、一人でいるとついつい聴いてしまうものです。
ある時、日本の卒業シーズンの時に、ちょっと前の日本の曲ばかりを集めたミックステープを送ってくれた子がいました。そしてその中に荒井由実の『卒業写真』が入っていました。当時、ユーミンというと女の子に人気で、逆に男の子からすると、えっ?!っていう感じだったんですけど、聴くとこれがすごく良くて。僕はテキサスの内陸にいたので本当にカラカラに乾いた砂漠のような気候だったんですけど、そこで聴くヘッドホン越しの卒業写真は、実際よりもどこか乾いた音がしました。歌詞に出てくるような人混みもなければ、電車といえば1日に1度か2度通る貨物列車だけの小さな町で、目を閉じて聴けば柳が揺れる景色が見えてしまったり、“あぁ、俺の青春時代も終わってしまうんだ”とか、“もう少ししたら日本に帰って現実が待ってるんだ”とか、いわゆる10代が感じる喪失感みたいなものを、荒井由実の『卒業写真』で、テキサスで感じてしまったわけです。その時のことを東京国際フォーラムのハードコアなじいさんばあさんのファンに囲まれながら『卒業写真』を聞いた瞬間に思い出したわけです。目が泳いでるというか、たぶん周りの日がみたら『この人は随分ぼんやりした目をしているので、相当なファンにちがいない。』と勘違いされたかもしれません。すごく不思議な瞬間で、我に返った時にまた思ったのは、本当に音楽というのは一瞬で過去に連れてってくれる、タイムマシンのようなものだなぁということでした。