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Let's travel! Grab your music!
Theme is... GRUNGE
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「グランジ」。
サウンド・ガーデンのヴォーカリスト、クリス・コーネルの訃報を聞き、
改めて「グランジ」ついて考えた訓市…
1990年代に一大ムーヴメントを巻き起こした「グランジ」の魅力、
当時の若者に与えた影響の大きさについて語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
ぜひ、リクエストもお願いします!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Karma Chameleon / Culture Club
New Soul / Yael Naim
Nakamarra / Hiatus Kaiyote
I'm A Fool To Want You / Billie Holiday
京都の大学生 / くるり
Seasons / Chris Cornell
May This Be Love / Jimi Hendrix
Release / Pearl Jam
Miss World / Hole
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
先日、Soundgardenというバンドのボーカルであるクリス・コーネルが、ライブの後に自殺してしまったというニュースがありました。年齢を見るとまだ52歳。しかも再結成してうまくいってるツアーの途中で、なんで死んでしまったのか。こういうニュースを聞くと毎回悲しい気持ちになるんですが、今回はそれだけじゃなくて、僕や僕の周りの40代の人間にとって、とても思い入れの強いバンドだったと思うので、その悲しさというのがまた違う感じに思えました。Soundgardenというバンドは、その周りのバンドを含めて“グランジ”という総称で呼ばれていまして、それは好きだろうが嫌いだろうが、僕らの年代にとっては最初で最後の世界的ムーブメントだった、という認識はきっと一致していると思います。僕は小さい頃から音楽、特に洋楽が好きで、いろいろなものを雑多に聞いているうちに、必ず過去のムーブメント、いろんなバンドが一つでジャンル分けできたり、同じ町から生まれてくるとか、そういうものにぶち当たりました。例えば、ジャズだったりビーバップが盛んだったのは50年代のニューヨークだったり、60年代終わりくらいのサンフランシスコにはサイケデリックなロックバンドがいて、70年代終わりくらいのロンドンだったらパンクとか、独自のシーンを作っていました。また、80年代初頭のニューヨークにはノーウェーブとか、ワシントンDCのハードコアパンクシーン。レコードやCDをあさって何かひとつのバンドにはまると、その周辺のバンドやその出身地のカルチャーを調べて、だいたい『あーあ、僕は生まれてくるのが少し遅かったなぁ。一度でいいからその当時の街に行って、その街の空気を吸ってみたい。』と思ったり、ライブを観てみたいというのが夢でした。僕の中学高校時代というのはちょうどバブルの頃で、世の中がすごく華やかで賑やかで、そのバブルの恩恵というのに多分、少しはあずかってると思うんですけど、あの時の華やかな感じよりも僕は過去にあったムーブメントのようなものを体験したい、その渦の中に自分を置いてみたい、という欲求が常にありました。だいたい過去のものの方がよく見えるのが当たり前で、当時周りにあった、どこかゴージャスでノーテンキでコマーシャルに感じるものというのは、多分、年齢もあったと思いますが、僕の趣味に合わなくて。もっと内側でヒリヒリと感じているようなものを、ムーブメントとして感じたいなぁと。サブカルというものやアングラというものの中でそれを感じたことはあったんですけども、もっと同時代的におっきいものを感じたいと、常に思っていました。
★★★★★★★★
グランジと呼ばれるシーンがシアトルという街から登場したのは、僕がまさに『何かおもしろいムーブメントが起きないかなぁ』と悶々としていた頃のことで、他の街のバンドとはどこか違う雰囲気だというのは最初からわかりました。パンクと昔のハードロックとインディーポップが混ざったような音で、飾り立てていない普段着のような、古着のような格好。そして、仲間のバンドTや自分がすごくファンだったバンドのTシャツをいつも着ていて、とてもリアルに見えました。あとは、当時の自分の格好にも近かったというのがありますけど、普段の格好でそのままステージに上がってくる。それまでは違う格好をしているくせに、人前に出る時にはメイクをしたり、まるでコスチュームのような衣装を着る、それまでのバンドとはとても違って見えましたし、逆にそれまでのバンドがコマーシャルに見えるようになりました。今ではそういう衣装を着ていたり、そのためにメイクをするというのは、エンターテインメントでいいじゃないか、と思います。でも、10代の頃はどこか視野が狭いというか、リアリティーがなければダメだ、という、どこか原理主義的なところがありまして、それがそのグランジにはすごくリアリティーを感じたわけです。そして歌詞。どこか暗くて怒っていたり、ヒリヒリとした感じの歌詞は、10代の頃に誰もが持つ悶々とした気持ちとか社会に対する不満とか、それからもっと小さい自分の家や学校への不満というのが含まれていて、みんなハートを鷲掴みにされたような気がします。シアトルは僕の知識の限りだと、ツインピークスとジミヘンの故郷くらいにしか思ってなかったんですが、グランジの登場で突然、音楽の聖地みたいになりました。あの頃のアメリカというのはニューヨークでもロスでも、どこに行ってもグランジの格好をした若い人で溢れていた覚えがあります。そしてそんな街を歩くと『あぁ、俺たちの時代というのがやっと来たんだなぁ』とそんな気がしたのを覚えています。つまり同時代に自分たちが支持する人たちと同じ格好の人たちが溢れるっていうのは、それまでの世界を征服したような気がしたんです。先日亡くなったクリス・コーネルというのは、そんなグランジの大物バンドとして、すごく身近なバンドでした。僕には少しハードロックすぎて、そこまでファンではなかったんですが、5大バンドみたいな感じですかね。Nirvana、Pearl Jam、Soundgarden、Alice in Chains、そのあと出てきたStone Temple Pilotsというのもありますが、今ではPearl Jamのボーカル以外、みんな亡くなってしまいました。グランジというのはどこか暗くて心にいろんな問題を抱えているっていう、その世界観というのが若者に支持されたんだと思いますが、みんなおじいさんになるまで持たずに燃え尽きてしまったというのは、同世代のムーブメントを作ってくれた人たちとしてすごく残念に思います。ただ、そういう一過性ものだったとかファッションでのみ語られるものではなくて、あの時代を確かに表現してくれていた、ちゃんとした音楽としてグランジというものが残っていけばいいなと、このクリス・コーネルの死を聞いて思いました。グランジが流行った時に僕がアメリカに行ってしまったように、音楽が人を旅させるパワーを持つ、そんなムーブメントがこれからもまた生まれてきたらいいなと思います。
『グランジ?もう歳をとったら聞かないわ。』と思わず聞いてみてください。僕もニュースを機にまたいろいろ聴き返してみたんですが、あの当時、それこそアメリカだけじゃなくてアジアを回っていましたが、安いカフェやバーから爆音で流れてたグランジを思い出してまた、TRAVELLING WITHOUT MOVINGをしてしまいました。今聞いてみても悪くないじゃないかと思う曲が、きっとあると思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。