ON AIR DATE
2017.07.02
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... Former Teacher


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「恩師」。
とにかく素直ではなかったという訓市の心に
今でも記憶が残っている「恩師」...

その方の訃報を耳にして思い返した当時の記憶。
そして、今だからこそ言える感謝のコトバ・・・。



★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.07.02

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Waitin' For A Superman / Flaming Lips

2

Hero / Family Of The Year

3

Sleeping / Glen Hansard & Marketa Irglova

4

Nothing Compares 2 U / Sinead O'Connor

5

ガラスのジェネレーション / 佐野元春

6

I Promise / Radiohead

7

Olson / Boards Of Canada

8

Without Words / Ray Lamontagne

9

Minas / Milton Nascimento

2017.07.02

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


Kunichi was talking …


★★★★★★★★

皆さんには“恩師”という方がいますか?学校で世話になったりした先生たちのことですが、僕は学校よりも放課後、家より外という性格で、学校というものがあまり好きではなかったというか、どこか馴染まない、という感覚がずっとありました。今もそのままなんですがとても幼稚な性格をしていたので、『こうしろ、ああしろ』と言われると、どうしてもその反対のことをしたくなったり、『これ好きだよね?』って言われると『嫌いだ』って言いたくなったり。そういう性分なものですから、先生というものとどうしても食い合わせが非常に悪くて、僕も先生たちを避けましたし、先生たちも僕をとても扱いにくい生徒というか、幼稚なやつだと避けていたように思います。本当に褒められたのは多分、幼稚園の時の担任の先生からだけで、あとは大体、口の減らないやつだとか、そんな感じでした。そんな僕でしたが、大学の時のアメリカ人の英語の先生と並んでもう一人、恩師と呼ぶにふさわしい先生がいたことを、恥ずかしながら“亡くなった”という連絡があるまですっかり忘れていました。それは、高校1年の時の担任の先生。僕は反抗的で幼稚な生徒で、好き勝手やっては怒られて学校に呼び出されたり、反省文を書かされたりしたんですが、もちろんその相手は担任の先生でした。物静かで贔屓のない、どちらかといえば普段はドライというか、そんなに接触がないような感じの先生でしたが、僕はその先生にとても好感を持っていました。日によって言うことが変わったり、気分で急に怒ったりするようなことが一切なくて、どんな生徒にも分け隔てがなかったからです。かといって、“教師”と“生徒”の間に存在する一線を絶対に越えない、馴れ合いのないはっきりとした先生でした。先生の中には普段からすごく恐くて威圧的な人もいれば、若くて理解のある兄貴のような雰囲気を出して、距離を縮めようとする先生いたと思いますが、その先生にはそんなことがありませんでした。だから、何度も怒られはしましたが声を荒げることもありませんでしたが、『お前はしょうがないやつだなぁ』と、笑ってごまかすようなところもなくて、淡々と問題点を告げられて、『それに対しての責任は自分で取るように。君は取れるはずだ。』と言うことを常に言われました。好感を持っていたというのであればその先生のいうことを聞けばよかったんですが、それとこれとは話が別で、僕の態度が改まることは一切ありませんでした。ただ、その先生に言われたことというのはすごく耳に残りました。



★★★★★★★★

『君はなにをそんなにイライラしているんでしょうかね?本当はいろんなことをちゃんと理解していると思うんですが。』そんなことを一度、静かに言われたことがあります。『そんなことねーよ』みたいな返事をしたような気がしますが、本当は大人使いされて少し照れましたが、嬉しかったこともなんとなく覚えています。先生は僕の前にもたくさんの問題児の担任をしていました。専門だったんでしょうか。僕がすでに学校を卒業していたり、去っていった年上の先輩たちとも中がいいのを知っていて、『彼は元気にしていますか?ああ見えてしっかりますから。苦労していますし。』などと話し、決して悪く言いませんでした。そして先輩たちのほうも『あの人は平等でいい人だった。』と必ず懐かしい顔で話していました。生徒をフラットに扱う平等な先生だったと思っていましたが、実は平等なでもなんでもなかったと気づいたのは、僕が2年に進級するとき。遅刻も早退も多く、確実に留年するのではないかと思っていたのですが、なぜか2年に上がれたのは先生の魔法があったからなはずです。学校に呼び出された母親が『あの先生は“あなたのことを信用している”と言っていたけど、何か信用されるようなことをしたの?』と聞かれたことがありました。なにもしてないんですけどね。2年に進級するとき、先生は学年の担当を離れました。僕らが問題ばかり起こしたからじゃないか、と新学期のときに聞いてみると、笑いながら『そんなことはないですから、ちゃんと自分の勉強をしてください。』と言われました。僕は2年の途中からアメリカに留学して、1年過ごしたんですが、毎日学校を休まず部活にも全部参加して、単位をとって帰国しました。そんなの中1以来だったような気がします。『ちゃんとやってきたぜ。』僕は帰国して学校で先生に報告しました。『いい時間を過ごしたようですね。顔つきが違うのでわかりますよ。』と先生は言ってくれました。とはいえ、人間そうそう変われることもなく、帰国した僕はすぐ元の生活に戻り、そのまま進学することもなく1浪して、よその大学に行きました。しばらくして母校の近くでフラフラしているとき、ふと先生に会いに行きました。『ちゃんとやれば受かるのはわかっていましたよ。』褒められるわけでもなく、淡々とそう言われました。本当は“すごいね”くらい言われると思っていたので拍子抜けだったんですが、それがまたとても先生らしいなと思いました。それがもう25年くらい前のことです。以来、一度も顔を見せることもなければ連絡を取ることもなく、最後にお会いするのがお通夜になってしました。
人生を旅に例えることがよくあると思います。この番組でもよく、そんなことが書いてある手紙をもらいます。ただ、人生や旅において、人の付き合いというのは通り過ぎていく景色と同じようにしていいわけがありません。初夏のドライブが、僕にとってそのお通夜での雨の中の運転というのは、とてもほろ苦いものになりました。
もし、あなたにも恩師という人がいるのであれば是非、連絡を取ってみてください。きっと後悔することになります。
そして、千葉先生、本当にありがとうございました。