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Let's travel! Grab your music!
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Theme is... The Avalanches
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★
番組前半はリスナーの方からハガキ、手紙、メールでお寄せいただいた
旅にまつわるメッセージとリクエスト曲をまとめてオンエア!
後半のテーマは「The Avalanches」。
1999年のインディーズ時代から現在に至るまで
訓市が愛聴し続けているグループ、アヴァランチーズの魅力について語る。
先日、フジロックで来日した際、
友人でもあるグループのリーダー、ロビー・チェイターと交わした会話・・・
そして、初めて彼らのライヴを観た時に感じたこと。
★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!
この夏の「旅プラン」も大歓迎!
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします。
手紙、ハガキでお送り下さい。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
「この曲を聴くと、あの時、あの場所を思い出す」
「日曜日の夜に聴きたいユ〜ったりした曲」
「ここにいても、この曲を聴けば動旅ができる」などなど、
リクエストもお願いします!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Only One / Kanye West feat. Paul McCartney
Cafe De Flore / Doctor Rocket
It's Over / Level 42
Death With Dignity / Sufjan Stevens
地上の夜 / 小沢健二
Subways / The Avalanches
The Shining (The Avalanches Remix) / Badly Drawn Boy
I'm A Cuckoo (The Avalanches Remix) / Belle & Sebastian
Since I Left You (Cornelius Remix) / The Avalanches
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
音楽を聴くと特定の記憶を思い出すというのは、皆さんも経験があると思います。先日、フジロックに行ったんですが、そこでThe Avalanchesというバンドのライブを観ました。彼らはオーストラリア出身のバンドで、デビューしたのは1999年かな。僕はその頃からのファンです。どんな音かというと、ビートはヒップホップやディスコビートというか、ちょっとダンサブルな感じ。そこにあらゆる音が万華鏡のようにサンプリングされた、もしくは子供のおもちゃ箱をぶちまけたような、ポップでサイケで、明るいのにどこかメランコリック。説明してくれ、と言われると本当に難しいです。彼らがファーストアルバムを出したのがちょうど2000年頃で、僕が友達と夏の間、海の家をやっている時でした。元の音がなんなのか全くわからないこの音楽が、夏のビーチの明け方や酔っ払って千鳥足で歩く午後の浜辺にぴったり。僕にとってその音楽というのは、真夏の音楽というよりはちょっと夏が過ぎ、空が高くなってその終わりを感じる頃の、少し悲しい気持ちもする音楽。とにかくその海の家でかけた時からそこで働くスタッフや来る常連さんたちのお気に入りになりました。僕らはもう来る日も来る日もアヴァランチーズをかけて、時には朝からビールジョッキに入れたジャック ダニエルとコークをがぶ飲みしながら飽きることなくひたすら聴きました。“ライブではバンド編成でこの音楽を全部再現するらしい”“もともとはパンクバンドらしいよ”“サンプリングの量があまりにも膨大すぎてなかなか許可がおりないから、新譜が出ないらしい”とか、いろんな噂話を海でしたものでした。いつかアヴァランチーズのライブが観たいね。そして、早く次のアルバムが聴きたい!来年の海の家までにはひょっとして出るんじゃないかとか、来日するんじゃないかとか、そう言いながら夏が過ぎ、次の夏がまたやってきて、また過ぎていって。気づけば僕らが海の家を辞める頃には、誰もアヴァランチーズの名前を口にすることはなくなっていました。
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★★★★★★★★
いつの間にか忘れ去られて、誰もそのバンド名を言わなくなっても、僕はずっとアヴァランチーズを聴き続けてきました。いつしか携帯がiPhoneに変わっても、その機種が変わるたびにプレイリストを残して、電話の中にアヴァランチーズの曲を入れて聴き続けました。旅先でも必ず聴きましたし、時にアメリカのバーで『ちょっと訓、iPhone使ってDJしろ。』何て言われると、必ずアヴァランチーズをかける。そうすると必ずみんな愉快な、そしてどこか懐かしそうな顔をしながら『これいつの音楽?誰のだっけ?』と、体をゆらゆらと揺らすんです。万華鏡みたいなその音というのは国籍関係なく、みんな幸せそうな顔をします。
僕はアヴァランチーズをやっているロビーという人の彼女とは古い友達で、彼女が毎年仕事で東京に来る度に、『ロビーは一体どうしたんだ?いつになったらアルバムが出るんだ?』としつこく聞いていました。『あんまり調子が良くないのよ。』、『出来が気に食わなくて全部やり直しちゃった。』、『あまりにもみんなが次を期待するから、プレッシャーもあるみたい。』とか、そういう話を聞きながらまたまた月日は経っていきました。ある時、彼女が『訓は本当にアヴァランチーズが好きだから、これを聴く権利があると思うんだけど、聴いてみる?』と、彼女のiPhoneに最終のエディットじゃない、ラフの新曲が入ってたんです。『誰にも聴かせられないけど、あなたは聴く権利がある。聴く?』って聞かれましたが、『ここまで待ったんだから、完成形まで聴きたくない。ロビーが作って“これだ!”っていうのまで、俺は待つよ。』って言いました。それから何年経ったかなという感じですが、去年、アルバムが出るよと。本人からもメールをもらいまして、『とうとう出すから聴いてみてくれ。』って。待った甲斐があって、すっかりそれが僕の新しい愛聴盤になったんですが、彼らのライブを見たことがなくて、今回初めて観ることができました。サンプリングだらけの音源をバンド形式にして繰り出される音。そこには17年間聞いてきたファーストアルバムの曲もたくさんありました。それを聞いた瞬間、僕の目の前には7年間やっていた海の家のことが、本当に走馬灯のように蘇ってきて。その蘇ってくる映像というのが、もう亡くなってしまった友達とか会わなくなった友達も、酒を片手に走り回っているんです。そういう、忘れていた光景というのが次から次へと浮かんできまて、本当に音楽って不思議だなぁと思いました。ただの音の繋がりなんですが、それを耳にしただけでいろんな風景や感情や匂いまで思い出す。それを松田聖子は“時間旅行”と言うのでしょうが、僕はその時間旅行をライブ中じっくりと味わいました。そして、アンコールの曲は僕らが本当に好きだった”Since I Left You”という曲で。それを聴いていたら、初めて聴いた時から今までのことをいろいろ思い出しました。
気づけば玉手箱を開いたようなもので、僕は随分歳をとりました。ヒゲにも白髪が混じるようになり、目も悪くなりましたし酒の抜けは悪いし。でも、こうしてしつこくロックフェスに行って音楽を聴けて、なにより感動できるということに僕はすごく感謝しました。歳をとるというのは、そんなに悪いことではないですよ。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。