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Let's travel! Grab your music!
Theme is... Journey to meet Friends
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★
番組前半はリスナーの方からハガキ、手紙、メールでお寄せいただいた
旅にまつわるメッセージとリクエスト曲をまとめてオンエア!
後半のテーマは「友達に会う旅」。
テキスト文化が当たり前で、電話すらしないという現代...
あえて実践するべきなのが「友達に会う旅」。
先日、ロサンゼルスに足を運んで現地の親友と過ごした時間について語ります。
無駄だけど貴重な瞬間とは?
★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!
この夏の「旅プラン」も大歓迎!
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Fall In Love With You / Earth, Wind & Fire
Just As Long As You Are There / Vanessa Paradis
Summer Breeze / The Isley Brothers
Inner City Blues / Marvin Gaye
都会 / 大貫妙子
Confession / Budgie
Mascara / Jazmine Sullivan
Awesome Lovin' / Organized Noize feat. Sleepy Brown
One More / Cymande
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
先日、数ヶ月ぶりにロサンゼルスに行ってきました。仕事の出張だったんですけど、仕事の用というのはその後に行くニューヨークが主で、その前の週末3日間をロスで過ごしたのは、はっきり言って友達に会うためでした。遊びなのかと聞かれたら、はっきりと遊びですと言えるんですけども、僕にとってロスに行き、毎回お世話になる友達の家に泊まって仲間と一緒に過ごすのは、どこか精神安定剤といいますか、仕事ばかりする日々の中でとても大事な貴重な時間です。ロスに行って酒飲んで大騒ぎしてるのかと思われがちなんですけども、僕を泊まらせてくれる友達というのはもともとものすごく悪い人で、それこそアルコール中毒の治療のための施設に入っていたくらいの人なんです。今ではビールさえ一滴も飲まないですし、たしなむのはタバコとコーヒーだけだったんですが、そのタバコすらとうとうドクターストップがかかってしまい、今では僕がタバコをすいながら 二人で延々とコーヒーを飲んで話すっていう仲です。その彼とただドライブに出かけて、くだらない冗談を言い合うんですが、それが僕にとって何より大切な時間です。今回も朝、ロスの空港に着いて、彼ともう一人の共通の仲良しの友達2人で迎えにきてくれました。車に乗り込むとなぜか坂本龍一の“戦場のメリークリスマス”のテーマが流れてまして、『なんでこんなものを聴いてるんだ?』って聞いたら『お前がホームシックにならないためにミックスを作ってきた。』と。普通に考えたらホームシックになる曲なんですけど、真夏に刺青だらけの大男とキャデラックの中で聴く坂本龍一というのはなかなか風情がありました。そして僕が好きそうなダイナーに連れて行ってくれて、ブレックファーストをたらふく食べると、そのままビーチに連れて行かれてすぐ泳ぎました。こちらは時差ぼけと来るまでの仕事での寝不足で、プカプカ浮いていればきっと時差ぼけにも効いてリラックスするだろうなんて思ってたんですが、そこは太平洋。強いうねりが入っていて、このまま泳いでいるのは危ないんじゃないか、というような感じでした。海からあがると、その刺青だらけの大男が小さい柄物のパラソルとか、わざとポケモンかなんかのタオルをたたんで用意してまして、『お前はここで昼寝しろ』と言うので寝転がりました。『ビールだって飲んでいいんだぞ。』って言われましたが、それはもう禁酒して長い友達の手前、エチケットとして飲みませんでした。そんな時間をわざわざ作ってくれる友達というのが本当にありがたくて、ダラダラとくだらない話をして、パンツ一丁で窓を全開にした車で高速を走りました。ラジオからゆるいソウルやフュージョンジャズが流れ、背高く伸びたヤシの木の並木道を遠くに眺めながらするドライブ。あぁ、このために僕はロスに来ているんだなぁと実感する一瞬でした。
★★★★★★★★
そのロスの友達なんですが、僕らにはたくさんの共通の友達がいまして、それがまたすごく都合がいいんです。若いスケーターに大工さん、絵描きにサーファーもいますし、ギャラリストもいます。そんな彼らを車で訪ねたりするんですが、どうやって連絡を取るかというと、ロスにいていつもいいなぁと思うんですが、車にいる時間が長いのでみんなテキストを打たずにちゃんと電話で話すんです。こちらも暇だと何も考えずにすぐ電話をかけますし、相手も相手で何も考えずに電話をしてくるんですが、Bluetoothとかでつないでスピーカーフォンで話すので、僕の友達が彼の友人と話しているところも全部聞こえるんです。全く暇電なもので、会話も途切れ途切れでダラダラしたものになっていて、『よう、何してる?』『別に。』『いいね、クール。』みたいな。それを間延びしたロサンゼルスっ子の英語で3・40秒かけて話しているんですが、全く意味がない。間もすごく空くんですけど、もう切るのかな?と思うと、『そういえばさ、あのマイケルがさ。』みたいな話から、最近仕入れた最新のジョークとか、誰かが犬のフンを踏んだとかそういう話をしていて、さすがに僕もこれを聞いていると、大の大人の男がこれでいいのかと思ってしまうんですが、『これでいいのだ。』と、力強く返してくれる素晴らしさがロスの男達にはあります。僕はこの時間の過ごし方が本当に好きで、これこそが前よりもロスにちょくちょく戻るようになった理由のひとつです。最高に無駄で、最高に贅沢な時間。『お前らいつもこんなだよなぁ。』『夏はさ、これでいいんだよ。』そして、『年がら年中夏じゃないの。しかも、何年間も。』と言うと、『それがいい人生というか、ライフスタイルなのだ。俺たちはこう生きることを自ら選んだのだ。』と、のたまいました。でも言われてみればその通りだと思います。よく人生の話をすると『人生は一度きりだからこそ、後悔のないよう、無駄のないよう生き切りたい。』という話になるんですが、それを実践しようとしてなんでもかんでも手を出して必死にやって忙しいだけのものになってしまっては、元も子もないんじゃないかと思います。無駄と思えるような時間こそ意味があったりするんじゃないかなと、歳をとって思うようになりました。大人になると無駄を省いたり、効率を追求することが多いと思います。けど、それが本当に正しいのか。それよりもいつまでも気のおけない友達達と、くだらないと言えるような時間を過ごしたいなぁと。腹を抱えて笑ったり、あそこのジュースが飲みたい、と言って40分遠回りしてジュースを買ったり、ラジオから流れる音楽に突然会話が止まって30分無言で車を走らせたり。そんな時間こそ一番大事な時間なんじゃないかなとだんだん思うようになりました。しばらく海外に出ずに仕事ばかりして酒を飲んでいた僕は、いつの間にカラカラに乾いたロスの空気とは逆に、かの地を出発するころにはすっかり心の保湿をしたというか、水分を取り戻して満たされた気分で出発しました。男の子も女の子も、おじいちゃんもおばあちゃんも、この夏中に友達と贅沢な、そして無駄な時間をぜひ過ごしてください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。