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Let's travel! Grab your music!
Theme is... FASHION WEEK in New York
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半は番組リスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードとリクエスト曲をオンエア!
後半のテーマは「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」。
華やかに盛り上がった今年9月のニューヨークで体験した
ユニークで有り難かったエピソードとは?
深夜、友人の車に乗っていた時にラジオから流れてきて
訓市が心踊った曲もオンエアします。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Se A Vida E / Pet Shop Boys
Perpetuum Mobile / Penguin Café Orchestra
The Sweetest Gift / Sade
Beware Of Darkness / George Harrison
Lemon Tea / Yogee New Waves
Morse / Nightmares On Wax
Groupie Love / Lana Del Rey
(Not So) Sad And Lonely / DJ Shadow
Peace Piece / Bill Evans
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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先日、再びニューヨークに行ってきました。2ヶ月ぶりで、夏の始まりの7月と、そしてその終わりの9月にニューヨークにいたことになります。9月のニューヨークには『ファッション・ウィーク』というニューヨークコレクションがありまして、いろんなブランドがショーをしたり、バイヤーさんに向けてプレゼンテーションをして、次のシーズンの服を買ってもらうというのを盛大にやっています。僕はこの10何年、9月に必ず何かしらの理由でニューヨークに行くことになって、それはファッションの仕事だったり、全く違う取材の仕事だったり、会社の打ち合わせだったり。なぜかわかりませんが、必ずそれがこのファッション・ウィークに当たってしまいます。ホテルは高いし、世界中からいろんな人が来て、どこもかしこも混んでる。それを嫌うローカルの友達はどっか行っちゃったりもします。
ファッション・ウィークといえば、毎晩どこかで盛大にパーティーが開かれています。これはブランドが行ったショーの打ち上げだったり、プロモーションでいろんな若いインフルエンサーの子たちを集めたりしようとしてパーティーをしてるんです。僕は決してそんなにパーティーが好きなわけじゃないんですが、夜寝るのが嫌いなので、この時期にニューヨークに行くと毎晩、気づくと朝日が出るまで飲んでたりします。飛行機に乗るときに、『これからニューヨークに向かうぞ。』と通知しますと、JFK に着く頃には、『今晩はウエストビレッジでパーティーがあるぞ、何時に着くんだ?』とか、『明日はシークレットのパーティーがあるけど訓は来るか?来るならゲストにいれとくぞ。』みたいな連絡がじゃんじゃん届いています。それにざっと目を通し、今日は友達と飯食った後ここに行こうかなとか、このブランドのDJ はあいつが好きそうだから、あの友達を誘って出かけようかな、なんてことになります。ファッション・ウィークのパーティーというのは、当然、ファッションのパーティーということで着飾ってる人たちもたくさんいるんですが、そこには地元の遊び好きの若い子から駆け出しのモデル、売り出し中のアーティスト。そういう人から、メディアの人、セレブと呼ばれる人たち、ごちゃまぜで集まってきます。ものすごい気合いの入った格好してる子達もいれば、寝巻きじゃないのそれっていう、肩の力が抜けてるというよりかは、そんな格好で出てきちゃだめだよっていうような人まで。まるでニューヨークの縮図のように人が集まってくるので面白いです。これがもし東京で行われているとすると、だいたい皆さんそのブランドの服を無理に着込んで必要以上に着飾ってきたり、もしくは似たような人たちが金太郎飴みたいに並んでいたりして、僕は非常に居心地が悪いです。それがニューヨークの場合、自分以上に脱力した格好の人が卑屈になることなくうまそうにタダ酒を飲んで大いに酔っ払っているのを見かけるので、なにも気にならないのです。
ただ、すごく楽しそうだから私も行ってみようかなと思った人たち。いろんな強者が集まるこの街では、パーティに潜り込むのがなかなか一苦労です。入口のゲストチェックというのはいつも黒山の人だかりで、たとえゲストリストに名前が入っていたとしても、だいたい『もうこの場所はキャパオーバーだから。』の一言ではねつけられたりします。客は客で、どうせ二度とこのセキュリティに会うこともないだろうと思っているのか、試すだけ試そうと思うのか、あの手この手で必要以上に入れてくれと粘るんです。それを入り口から離れろというセキュリティーとの押し問答というのが、なんかアメリカっぽいというか。あれだけでお酒が飲めるぐらい面白い光景です。
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ファッション・ウィーク。まぁ、ファッション・ウィークといっても服なんかこれっぽっちも見ていません。ファッション・ウィークのパーティーというのは、ブランドによって様々な音楽を選んでかけています。例えば、初日に行った友人の雑誌が、某IT 『H』 企業と組んで行ったパーティーでは、ストリッパーがズラリと並んで、ゴリゴリのEDM がガンガンにかかってまして、景色はいいけど耳がやばいなという感じ。その次の日に顔を出したカルバン・クラインのパーティーでは、ロシアから来たテクノDJ が本社の1階をダンスフロアに変えて、朝までとんちきとんちき盛り上げてました。そして、ニューヨークを立つ前日の夜に行ったのが、リアーナがやってるブランドのアフターパーティー。僕も行ったことのないホテルの屋上貸し切って、ヒップホップで盛り上がっていました。最初は2・3人の友達とそのパーティーに行こうっていうことになりまして、バウアリーにあるホテルのバーで待ち合わせしたんですけれど、そこで一杯飲もうと言ってるうちに『あれ?あいつじゃん。』とか、『よぉ、ニューヨークにいたの?』みたいな感じで、どんどん知り合いが集まってきて、気づけば10人以上の大所帯になってしまいました。『これからどうすんの?』『リアーナのに行こうと思ってる。』『一緒に行きたい。』結局、大所帯でそのホテルの入り口まで移動することになりました。すでにキャパオーバーで誰一人入れないそのゲートで、僕らは知り合いがいて入れるって話だったんですが、10人以上いるとなるとさすがに無理。これはどうしようかと思っていると、そこに突然現れた白人の兄ちゃんが僕らの連れの知り合いだったらしく、『俺に任せとけよ。』という感じで、セキュリティーと話ながら、『こっちからいけば入れるらしい。』と。10人ぞろぞろとその兄ちゃんについて裏の入り口に行って、『いや、こっちは駄目だ。』またゴニョゴニョ話して『もとに戻るぞ。』それを二、三回繰り返して、何をどうやったのかわからなかったんですが、とうとう突破しました。周りがやんややんや言ってる中、僕らは整然と列になって中に入ったんですが、入ったら入ったで席までその兄ちゃんがとってくれて、『お前、何飲む?』『じゃあ、ハイボール。』そしたらそれをボトルごと出してくれたりして。そのうち『俺、仕事だから行くわ。』といって、平然と去っていったんですが、『あの天使のような兄ちゃんは誰なんだ。』と聞いたら、DJのディプロでした。知り合いだったらわかるんですけども、知り合いの連れ。しかも、かなりだらしない格好をしているアジア人の俺みたいな人を普通にもてなしてしてくれたりする。ニューヨークではそういう人には今までに何度も会ってるんですけど、なにかこういう夜というのは幸先がいいというか、そういう1つの親切な出会いで、そのあと朝までおいしい酒が飲めるというか、滞在そのものが楽しくなったりします。
いろんな音楽を今回も聴いて楽しかったんですけど、一番素晴らしかったのはその前の晩に友達のオープンカーでミッドタウンからダウンタウンへ帰る途中に聴いたジャズでした。ちょうど大通りを通って帰ったんですけれども、道の真上にほぼ満月の月が出てました。雲ひとつない、夜中の2時ぐらいですかね。ぼーっと月を眺めているとラジオから静かなピアノが流れてきました。それはビル・エヴァンスの『Peace Piece』 。“平和の欠片”という曲なんですけど、なんですかね、会話のない、友達と2人のドライブでしたが、都会の夜の温かさとか孤独さとか、そして、その夜の空気に漂う異国情緒とか。やっぱりこういう瞬間を持つために、僕はこの街に足繁く帰ってくるんだなと思いました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。