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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
独特の世界、コペンハーゲンにあるヒッピーの楽園「クリスチャニア」に潜入してみた
Theme is... SWEDEN
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから寄せられた旅のエピソードと、
その旅に紐づいた曲をオンエア!
後半のテーマは「スウェーデン」。
夜がひたすら長く、暗く、寒い時期に訪れた
ストックホルムで過ごした時間。
現地で訓市が食べて気に入った意外な食べ物とは?
長距離移動中の電車内で訓市が感じたことについて語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Strawberry Swing / Frank Ocean
Seven Years / Norah Hones
Tenderly / Anita O'Day
Love's In Need Of Love Today / Stevie Wonder
朝日のあたる道 / Original LOVE
Vibin' Out / FKJ
Heartburn / Wafia
Come Here / Kath Bloom
Ain't No Way / Aretha Franklin
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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寒い日が続くと、暖かい国に逃げたい、ほぼ素っ裸でのんびりしたいと夢を見ますが、こういう時期こそ実は寒い国に行くのもいいものです。北国というのは夏が短くて、緑が一斉に芽吹く様子というのも本当に素敵ですが、やっぱり北国は北国らしく、そのとおりの佇まいを見せてくれる冬がやっぱり一番しっくりくるような気がします。北国というと一番、たくさん行ったことがあるのはスウェーデンで、とくに首都のストックホルム。冬の間に4・5回ぐらいは行ったことがあると思います。想像通りほとんど夜だし暗いし、建物も寒々しく見えたりしますが、道沿いの街灯が雪の中でポンポンと灯る様というのは、寒いのにどこか温かい気持ちにさせてくれる素敵な風景です。ただ、そういう街頭を見ているときというのは、滑らないよう転ばないよう、生きてるうちにこれほど小股で歩くことはあるのか、というぐらいペンギンみたいに歩いていました。
外は当然、寒いですが、その代わりに一歩レストランとかバーの中に入ると、それはそれは温かくて、だいたいみんなTシャツで過ごしていたような気がします。外が寒いからだと思いますが、中で賑やかに騒ぐ。飲む酒も当然ウォッカ。僕は普段からウォッカとウイスキーしか飲まないので、スウェーデンとか北欧みたいにウォッカをたくさん飲む国に行くというのは、いろんなウォッカがあってすごく楽しいです。ウォッカを飲むとき、僕はウォッカソーダで飲むんですが、“これ本当にソーダで割ってるの?”っていうぐらい濃いのが出てきます。これはスウェーデンに限ってのことじゃなくて、ニューヨークとか海外のお酒を飲む国というのはだいたいそうだと思いますが、1対1で割ってるんじゃないのかなっていうぐらい濃い。ショートグラスになみなみとウォッカを注ぎ、最後にチョロチョロチョロってソーダを入れて『はい。』と出てきます。なので、調子にのって飲んでいるとえらい酔っ払ってきて、『いかん、いかん。』と外にタバコを吸いに行くんですが、そうすると今度は、瞬間冷凍みたいな、冷蔵庫の魚になったような気分というか、あっという間に目が覚めて、また飲んでしまいます。気をつけないと、飲んでるのがホテルでそのまま上に行って寝るだけのときはいいですが、そこから歩くときいうのはまずいですよね。千鳥足で歩いているうちにだんだん眠くなってきたりして、なかなかスリリングな酒の飲み方です。
あと、スウェーデンで美味しかったのがミートボール。名物料理ですが、普通の大きいメインディッシュのお皿にちっちゃいミートボールがいくつものっていて、それにマッシュポテトがついてる。このマッシュポテトが裏ごししすぎたというか、ミルクが多いのかわりませんが、もうめちゃくちゃきめ細やかでクリーミーなんです。それを、バターのようにミートボールにぬって、お好みで、北欧にたくさん生えるらしいですがリンゴンベリー、コケモモからできたジャムをつけて食べます。僕が最初に見たときは肉にジャム、それだけでいらないって思いましたが、これが実はすごくおいしいんです。歳を取ると好きになる甘じょっぱいってやつでしょうか。ぜひ、スウェーデンに行く機会があったら、名物であるミートボールは食べてみてください。そして、コケモモジャムを忘れずに。
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スウェーデンにいる間はストックホルムとか南のマルモという街で過ごすことが多かったですが、よく覚えているのは、ストックホルムから反対側にあるスウェーデン第二の都市・ヨーテボリまで夜に電車で移動したことです。4時間ぐらいかかって、何もしてないんですけど、とてもよくこのときのこと思い出します。新幹線のような特急で、薄暗い照明と誰も騒ぐ人のいない車内。あんまり混んでいないのに、だんだん人が減っていくのもすごく寂しかったです。外を眺めると、もう本当に漆黒の夜と、目を凝らすと横に流れて行く雪。そして、たぶん寒さ対策もあると思いますが、二重窓だったのかな。いつもより反射する窓に映る自分の顔。ずっとトンネルの中を走っているような不思議な気持ちでした。小さいときに見た『銀河鉄道の夜』という、猫が主人公になってるアニメがあるんですけど、その映画の猫になったような気分でした。
移動しながら景色を眺めていると、とてもメランコリックというか、物悲しい気持ちになったりすることはありませんか。とくに北国の場合、南国の移動では感じることのない何かを強く懐かしく思ったり、手が届かなくなった何かの存在を強く意識するようになったり。物悲しいの、もっともっと奥の方に連れて行かれそうな気がして、そういうときは慌ててヘッドホンを耳にかけて音楽に逃げます。そうすると、今まで何度も聴いてきた曲の、気づかなかった歌詞の意味とか、その裏で小さく鳴っていた知らない楽器のシャンシャンという音に気付いたり。慣れ親しんだはずの音楽に新たな発見をします。今も若い頃からずっと聴いてる音楽を振り返ってみると、北国とか冬の間に1人で移動してるときに聴いた曲が多いような気がします。なので、ちょうど今月ベルリンに行くので、いろんな新しい曲とか最近ちょこちょこ聞いてる曲をたくさん持ち込もうと思っています。このあと何年、何十年と聞けるような新しいコレクションを増やしたいなと思っているんですが、皆さんも自分のお気に入りの音楽を探しに、冬の間に北国に行くっていうのはどうでしょうか。北欧であれば、スウェーデン以外にもノルウェーとかフィンランドもあります。ヘルシンキの冬も行ったことがあって、スウェーデンと似たような感じでとにかく寒いですが、建築とかデザインもすごくいいです。みんな室内では酒を飲んで騒いだり、思い思いにちゃんと楽しく過ごしています。驚いたのが、核シェルターの中にできたスケートパークなんていうのもあって、路上には騒いでる若い子なんていませんが、ひとたび地下に入るとTシャツでガンガン滑ってたり、とても面白いです。そして、北欧といえばデンマーク。コペンハーゲンの冬ももちろん綺麗です。雪が積もった人魚像とか女性の方は好きだと思いますが、街のど真ん中にある、ヒッピーたちが昔占拠して自治権を取ったクリスチャニアという地区のあたりをヘッドホンでもつけてフラフラ散歩したりするのも、とても面白いと思います。もちろん海外でなくても日本の雪山や、雪の温泉街なんかを歩いたりするのも最高なんじゃないんでしょうか。ただ、その際はヘッドホンといい音楽を忘れずに。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。