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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
旅人生最大の失敗は「何故もっと早く旅に出なかったのか」ということ
Theme is... 年賀状
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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1月28日は・・・
番組前半、リスナーの皆さんから寄せられた旅のエピソードと、
その旅に紐づいた曲をオンエア!
後半のテーマは「年賀状」。
小学校低学年の頃から年賀状を書く習慣が無かった訓市...
今、実践しているのは「年賀メール」。
国内・海外の友人宛の一斉メールの反応とは?
年一回のメールのやり取りだけでも繋がっている深い友情について語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
All You Need Is Love / The Beatles
Now At Last / Feist
Under The Bridge / Red Hot Chili Peppers
How Long Will I Love You / Ellie Goulding
ストライド / スガシカオ
The Highways Of My Life / The Isley Brothers
The Greatest / Cat Power
All I Wanna Do / The Beach Boys
Can't Find My Way Home / Blind Faith
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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年賀状というか手紙全般にいえることなんですが、僕は何かを書いてポストに入れるというのがとても苦手で、当然、正月の年賀状というのも小学校の1年生ぐらいから書いたことがありません。ただ、年賀メールのようなものを毎年書いています。どんなことを書くかというと、決して適当というわけじゃないですが、つらつらと、今年はこうしようかなとか、こうしようよ的なことを書いたり、去年1年生きて思ったことなどを割りと長めに書きます。そして、それを英語と日本語の両方作って、まとめてBCCでエイッと送るわけです。日本人の方は大抵、丁寧な返事が来たり、“今年もよろしくお願いします”なんていうのがさらっと返ってくるんですが、外国の友人には年賀状の概念がないらしく、妙にそれが喜ばれるようになってしまいまして『毎年、楽しみにしている。』と言われるようになりました。こっちはそんな重い気持ちはなくて、送る日も毎年元旦ではなく、家でゴロゴロしながら酒を飲んでいて、それが1月3日になったり、5日になったりとバラバラです。すると、海外の友達から1日に『まだ今年は届いてないけど、俺はメーリングリストから外されたのか。俺はなにか気分を害するようなことをしたのか。』とか、『まだ書き終わってないのか?』と催促のメールが来るようになって、だんだんちょっとしたプレッシャーになってきました。今年は<歳を取ってきていろいろ考えてくるようにはなったけど、結局、何も変わらないぞ、変えないぞ。これでいいのだ。>的な、バカボンのパパのような文面にしたんですが、書くとそれぞれからものすごく長い返事が来ます。中にはこの正月メールでしかやりとりしないっていうのを20年近く続けている友達もいて、毎年、『今年こそビールを飲もう。』というのが半分、恒例のジョークになっている人もいます。でも、必ず近況を伝えてくれて、“去年、人生にいろんな転機があった”とか、“とうとう引越しをした”とか、いろんなことが書いてあって、それがすごく情景が浮かぶようなものが多いので、何だか世界中の友達を主人公にした短編を読んでいるような気もします。それを1人分ずつゆっくり読みながら、また返事を書いたりすることが僕にとって1月の大事な行事になってしまいました。テキサスで同じ高校に通った仲良しは、ずいぶん前にアラスカに引っ込んで誰とも会ってないそうですが、とうとう結婚15年目ぐらいにして子供が生まれたとか。ニューメキシコの牧場に住んでいる年上の友達は、去年の正月メールから全く連絡がなかったんですが、『実は、癌になってそれが転移して治療しているけれども、気分は悪くなくて、昨年より毎日により感謝するようになった。』というようなことを書いてくる人もいます。『進路に迷っているときに脳天気なメールをありがとう。』と返事してくれたオレゴンに住む20歳の友達とかとても読み甲斐があって、こればっかりはいつも家でなく、事務所に行って夜1人で静かなときにゆっくり読んでいます。そして、こんなメールをくれるみんなと、いつどうやって出会ったかとかを思い出しながら、人生の不思議ということについてぼんやり考えてみたりしています。
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こうやって自分が書いた年賀メールに返事をくれる、様々な国の様々な年齢のみんなのことを考えると、僕は自分で自分のことを本当にラッキーで、一番恵まれてきたのはこういう人たちとの出会いだなと、また正月に思っていました。人との出会いっていうのは、自分がどんなに望んでそうしたいと思っても相手がいることなので、自分の思い通りにしたり、100%コントロールすることは絶対できないです。そんな出会いっていうのがいろんな場所であって、相手に受け入れてもらえたというのは、本当に自分の人生の宝だと思っています。ここ2・3年ぐらいの年賀メールの返事を見ていると、返事をくれる人たちというのは同年代だったり少し年上の人というのもすごく多いですが、だんだんと終わりを意識してくる文面が増えてきました。終わりというのはなにも、もうすぐ死ぬとか、死ぬのが怖いっていう内容ではなくて、ただ、限りがあるっていうことにものすごく自覚的になってきて、それをどう使っていけばいいか、ということをみんな書いてきます。それは例えば企業やってバリバリ仕事をしている人でも、未だに毎日滑っているスケーターでもミュージシャンでも、バックパッカーの頃に出会って、いまだに旅を続けている人にとっても皆同じなようで、“あとどのくらい自由に動けるのかな”とか、“仕事は順調でお金もちゃんと稼げているが、このままの時間の過ごし方で残りの人生いいんだろうか”とか、“もっといろんなところに出かけて死ぬまでには世界を見尽くしたと思えるように過ごさないといけないな”という話になります。確かにお金はあの世には持っていけないし、そうであるのならば、そこそこのお金があればもっと違うことに時間を使いたいと。実際にそれを実行している友達もいて、45歳で会社も家も売って夫婦で世界一周旅行をずっと続けている友達は、母国のイギリスに帰ったらもう住むところも何もないらしいですが、2人っきりだしなんとかなるだろうと。それより死ぬまでに世界を見れない方が不幸だ、と言っていました。やりたいと思っても、なかなかみんな実行に移せませんが、今年こそは!と毎年思いながら生きるのと、そういうことを全く思わないで生きるのとで、ずいぶん人生の見方が違うんじゃないのかなと思っています。今年もいろんな国に出かけて、いろんな街に行き、古い友達と知らない場所で見たこともない風景を見て、聞いたことがないような音楽を聞いて、そして新しい友達ができたらいいなと思ってます。リスナーの皆さんも今年はいろんな場所にでかけて、新しい景色を眺め、そして素敵な出会いがありますように。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。