ON AIR DATE
2018.04.01
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  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54
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Theme is...


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから送られた
手紙、ハガキ、メールをまとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をオンエアします。

後半のテーマは「ヘイト・アシュベリー」。
20年以上前に訓市が憧れ、実際に足を運んで時を過ごした地を再訪...
1960年代に「ヒッピー文化」の中心地だった「ヘイト・アシュベリー」を
ブラブラと散歩して感じたこととは?
今回、昔からの友人でアーティストのトミー・ゲレロ宅で過ごした
「のんびりした時間」について語ります。


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.04.01

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Tom's Diner / Suzanne Vega

2

Flower Of The Universe / Sade

3

Stay With Me / Bobby Caldwell

4

One Evening (Gonzales Solo Piano Version) / Feist

5

雨 / ペトロールズ

6

Suddenly / Drugdealer feat. Weyes Blood

7

The Desert Babbler / Iron And Wine

8

A Little Lost / Sufjan Stevens

9

A Day In The Life / The Deli

2018.04.01

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


Kunichi was talking …


★★★★★★★★

先週、ちょうどロスに行ったというお話をしたと思うんですけど、ロスに行った後、同じ雑誌の取材で今度はサンフランシスコへと移動しました。最後に行ったのはAppleのiPhone Xのローンチイベントでしたから約半年ぶりだったんですけど、あの時はクパチーノ近くの滞在だったので、実際にシスコの街をウロウロできるのはとても久しぶりのことになりました。宿を取ってもらったんですけど、それがゴールデンゲートパークの近く、通称<アッパー・ヘイト>という地区にあるとてもシスコらしい古いヴィクトリア調の建物のホテルでした。とっても可愛いんですけど、シャワーの出が悪いとか、昔の建物ならではの問題もありました。着いたのが夜で、知り合いに連絡して僕がすごく気に入っているレストラン「トスカ・カフェ」の予約を取ってもらい、久しぶりに美味しいご飯を食べました。なぜならロスは車でずっと移動だったのでロクに食事も取れなかったんですね。それから今度はロスで会った友人の紹介で、去年できたという新しいホテルのルーフトップにお酒を飲みに行きました。シスコのホテルは選択肢がすごい少なかったんですけど、「とうとうニューヨークとかLAとかにできているヒップスター向けのホテルができたんだな」と。「まあ街はこうやって変わっていくんだなあ、良くも悪くも」とそんなことを実感しながら、あんまり得意な雰囲気じゃない感じだったのでそそくさと退散しました。「ああ、シスコに久しぶりに来たなあ」と実感したのは、翌朝起きてタバコを吸いに外に出た時でした。シスコらしい靄が出た外はとても寒くて、その中で公園では朝早くから黙々とトリックの練習に励むスケーターたちの姿がありました。それをぼんやり見ながらタバコの煙を朝露に濡れた木々の匂いと一緒に大きく吸い込むと、とてもいい気分がしまして、吸い終わったらそのまま部屋に戻ろうと思っていたんですが、ついつい、足は<ヘイト・ストリート>へ向いてしまいました。ここは今では少し原宿の竹下通りのようなお土産屋さんとか洋服屋さんが増えた感じになってしまいましたが、この道と途中で交差するアシュベリーという道の交差点は<ヘイト・アンド・アシュベリー>と言って60年代に「ヒッピー文化の中心地」と言われた所でした。僕が90年代にシスコを訪れた時もヒッピー崩れや犬を連れた家出少年たちの大群がたむろしていたものでした。多分まだ、『グレイトフル・デッド』のジェリー・ガルシアが死ぬ前だったのかな、僕はそういうヒッピー文化がすごく好きで、「とうとう自分もここへ来たぞ!」と興奮して意味もなくこの通りを行ったり来たり歩いたものでした。<ヘイト・ストリート>っていうのはすごく長く伸びた道でゴールデンゲートパーク側を<アッパー・ヘイト>、下を<ロウワー・ヘイト>と言います。昔、僕が居候させてもらった家があるんですけど、持ち主が生粋のヴィーガンで1週間野菜しか食べさせてもらえなかった【ブルース】という友達なんですけど、彼の家は<ロウワー・ヘイト>にありました。歩いているうちになんだかその頃のことを色々思い出してしまい、気づくと僕は<ロウワー・ヘイト>の方へひたすら歩いていました。


★★★★★★★★

まあ、ヘイトの道を歩いているうちにつくづく思ったのは、人生ってのはやっぱり不思議だなあと。アジアと違ってアメリカをしばらく旅するっていうのは20代の僕にとってとてもお金と労力のかかることで、かつてバイトしてお金を貯めてこの地へ来て、たいしてやることもなくて、ぶらぶらこの道を行ったり来たりしたり、公園に行ったりパーティーに行ったりしたものです。それから20年以上経って僕はこうやって同じ道をぶらぶらと歩いて、考えてみたら当時と同じコンバースを履いて、同じ銘柄のタバコを吸っていることに気がつきました。今度は人の金で来られているわけですから、ぶっちゃけ上手くやったなあと思いました。そして20年後、今度は生きていたら60歳を僕は過ぎているっていうことになるんですけども、また同じようにぶらぶら歩くことができるのかなあとか、何をしているのかなあとか、そんなことを考えていました。シスコでの取材は割とスムーズに進んで、土曜日の仕事の後はチャイナタウンの場末のカラオケバーで飲み、その後は古いホテルで「フェアモント・ホテル」というのがあるんですけど、その中の「ティキ・バー」に行きました。ティキ・バーっていうのはポリネシアン・テーマでディズニーランドとかにもあると思うんですが、そのラウンジがですよ・・・古いホテルの地下にあるんですよ。しかもですね、店の真ん中には池があってボートが浮かんでいて、そのボートの上にハウス・バンドが乗っていて、だんだんとこっちに近づいて来るんです。それがものすごい熱い演奏で、TOTOの「Africa」をやったかと思えば、ホイットニー・ヒューストンをやってマイケル・ジャクソンをかけて、、、もう素晴らしいテンションなんですよ。もうそうなると金婚式みたいなおじいさんとおばあさんのカップルとか観光客のもっさりした人、出会いを求めて来たであろうボディコンを着た女の子3人組とかが乱れて、みんな岸辺で踊るんですよ。みんなティキ・バーで買って来るトロピカルな大きいグラスのフルーティーなカクテルを飲みながら絶叫しているんですが、お酒っていいなあとつくづく思いながら僕はもちろんハイボールを1人で飲んでましたよ。そして次の日の日曜日、その日は唯一の休みとなりました。オフィスの取材をしていたので、日曜日に取材を受け付けてくれるオフィスが1つもなかったっていうのが理由なんですけど。日曜日が暇だと言うと古い友達で元スケーターで、今はミュージシャンのトミー・ゲレロが「家でバーベキューをしてやるから来い」と言って呼んでくれました。海を渡ったバークレーの外れに彼女が今小さな一軒家に住んでいまして、そこの中庭にはバーベキュー台が設置されていました。トミーはシンプルな料理が好きで、ただソーセージを何種類も買って来てくれてそれを焼いて、アスパラを焼いて、そしてトミーの大好きな<モデロ>と言うビールがあるんですけど、それをガンガン冷蔵庫から持って来て「さあ、ソーセージを食ってビールを飲んでくれ」と。その日曜日だけはとても穏やかな陽気でトレーナーだけで過ごせました。中庭の古い椅子に座って木々の間から見える青空を眺めながらビールをガンガン飲んで、、、最高でした。彼女の家の開け放たれた玄関からトミーがかける古いソウルのレコードの音が漏れて来て、体の力が抜けたような時間を過ごすことができました。そんな風に過ごしているとやっぱり頭をもたげて来るのは、「庭のある生活」ってなんて素晴らしいんだろうということです。「庭が欲しい」なんていうと「訓市もとうとう歳をとって庭いじりでもしたいのか」とか、「家庭菜園でもする気か」なんていう話をこの間もされたんですが、そうじゃなくてですね、ただ、ぼーっと椅子に座って光合成をしたいだけなんですよね。やっぱりバルコニーがあろうが何しようがマンションに住んでいると中庭での日光浴って絶対味わえないじゃないですか。ちょっと土の匂いがして、木がそよぐ音が聞こえて。「ネオン街が近くにないと死んでしまう」そう思っている自分の心に偽りはなくて、都会を離れて住むなんて気は1ミリたりともないんですけど・・・とはいえ都会で中庭付きの一軒家に住むというのも悪くないんじゃないか、とサンフランシスコでビールを飲みながら真剣に考えました。この東京に特化した番組で、もし好条件の物件がありましたらぜひ手紙、また葉書で写真付きで送ってください。お礼は必ずします。