ON AIR DATE
2018.12.30
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

平成を代表する言葉、「ゲッツ」「僕は死にましぇん」「どげんかせんといかん」など上位 1位は……?

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TUDOR logo

Theme is... 平成

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!

後半のテーマは先週に続いて「平成」。
30年に渡る長い旅となった平成最後の年の瀬...
先日、訪れたカリフォルニアで移動する車中に訓市が思い、感じ、
友人と話したこととは?


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.12.30

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

By This River / Brian Eno

2

Innocent When You Dream / Tom Waits

3

Little Girl Blue / Sarah McKenzie

4

You'll Never Walk Alone / Gerry & The Pacemakers

5

時代 / 中島みゆき

6

Someone To Call My Lover / Janet Jackson

7

Astral Weeks / Van Morrison

8

Living It Up / Rickie Lee Jones

9

The Downtown Lights / The Blue Nile

2018.12.30

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


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前回に引き続き、“平成”の話。先週、カリフォルニアに行ったときの話をしましたが、ガス・ヴァン・サントの家に行った次の日には、今度はプロスケーターのジェイソン・ディルの家に行くことになりました。ちょうど仕事でロスにいるというので、ディルを拾ってそのまま彼がいま住むベンチュラまで2時間近くのドライブ。僕はその前の晩にちょうど21歳、アメリカで言う“リーガル・エイジ”というお酒が飲める歳になりたてのスケーターの男の子たちや、昔からのロスに住んでいる仲間がみんな集まってくれて一緒に飲んだお酒がまだ残っていたし、時差ボケで寝不足だったので後部座席に乗り込んで横になりながら頬杖をついてうつらうつらと寝たり起きたりを繰り返していました。前に座るディルと運転をしてくれているカメラマンのカーティスは互いに古い友達同士で、その2人が話す様子がまるでラップの掛け合いのようでした。そのカーティスが自分のiPhoneで曲をかけていたんですが、古い70’sの音楽やフォークソングで、それとその2人のラップが乗っかる様はまるでライブのサウンドトラックのように聞こえて、とても気持ちがよかったです。ベンチュラに向かうときに通るのがベンチュラ・ハイウェイ、そうすると聴きたくなるのがアメリカというイギリスのバンドの「ベンチュラ・ハイウェイ」という名曲で、ちょうど寝落ちそうなときにそれがかかりました。僕は横になっているので、窓からは青空しか見えません。それと一緒に聴くアメリカやボブ・ディラン、そして、ヴァン・モリソン。古いフォルクスワーゲンのバンを買って車で旅をしていたときのことをゆっくり思い出しました。カーステもなく、後ろの席は全て取り外されていて寝袋で寝るようにしていたそのバンで、古いウォークマンに電池式の安いスピーカーをつけて音楽を鳴らし、電池が切れたらみんなでギターを弾いたり太鼓を叩いて歌ったものでした。そして、あれも“平成”だったんだなと、そう思ってまた時の流れに本当にびっくりしました。ベンチュラに着くと、そこはとにかくゆっくりとしてなにも無い、70年代から発展が止まっているような街。皆さんが知ってるようなものというと多分、アウトドアブランドのパタゴニアの本社と、ファクトリー・アウトレットのお店くらい。僕はパタゴニアの取材で何度かベンチュラには来ていたんですが、それ以外、実はちゃんと街を見ていなかったので、今回その目抜き通りとかを見て、“こんなにのんびりした街なのか”とびっくりしました。「街で一番うまい飯屋に行こう!」とディルに連れて行かれたのも、『ツイン・ピークス』に出てくるようなダイナー。ウェイトレスのおばさんたちは皆、ディルのことを知っていて、しかも、あたりを見ると、常連さんたちは自分の決まった椅子に座っているらしい。その雰囲気も昔見たアメリカの感じで、僕はとても懐かしく感じました。


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ベンチュラでスケーターのディルの取材をして、そこから今度、ロス市内まで高速で帰り道。僕とカメラマンのカーティスは長い話をしながら目の前の景色をずっと眺めていました。少し前にニュースで話題になっていましたが、ひどい山火事があったんです。本当に酷くて、カリブの手前からハリウッドの方まで丘陵地帯の木も全て燃えて真っ黒になっていました。あまりの変貌にそれを見ながら“これってあと一体どのぐらい時間が経てば元に戻るんだろう?”と。“草はすぐ生えてくるかもしれないけども、10年20年、いやもっとかかるんじゃないか”・・・そんな話をしていました。同じ景色が見れるのは僕がジジイになる頃、もしくはもうアメリカで車に乗ってこういう話をするような時期は終わっているかもしれません。そう考えるとやっぱりこんな今みたいな時間というのをすごく大事にしないといけないなと、そう思わずにはいられませんでした。仕事が終わってから、僕は友達の家の庭を勝手に陣取って、一日中入れ代わり立ち代わり友達に会いに来てもらいました。そして、話さなきゃいけなかったことやくだらない話をして、夜はサンセット・タワー・ホテルっていう古いホテルでご飯を食べたりお酒を飲んで過ごしました。翌朝、僕の飛行機がすごく早くて、友達の家を6時過ぎに出なきゃいけなかったんですが、車に乗り込んでボケっと前を見ていると、ものすごい色の朝焼け。本当に空一面が真っ赤というかオレンジに焼き付いているというか、それまで見たこともないような朝焼けでした。僕は編集とか書いたりする仕事柄、徹夜もしますし、酒飲みとして、“おっといけね、陽が登っちまった”っていうこともありますが、普通の人より確実に朝焼けを見ています。そんな僕が45年間一度も見たこともないようなものすごい空でした。
不景気だったり社会の構造が大きく変わったり、世界中でもいろんな事件がありました。学校の教科書に書いてあったことがいろいろ事実とそぐわなくなってきた時代。そんな“平成”という30年にわたる長い旅を振り返ってみてください。嫌なこともたくさんあったけど、良いこともたくさんあったなと、そう思えるといいんじゃないのかなと僕は思います。終わりよければ全てよし。次の新しい時代が、いい出会いに恵まれて旅に出るたくさんの機会に恵まれる、そういう良い時代になることを祈って、ゆっくり一杯、平成に献杯しようじゃありませんか。そして平成に生まれ育った平成っ子の皆さん。あなたたちはなんだかんだ恵まれていた時代の子だと思ってもらえると嬉しいです。これから新しい元号に変わりますが、その時に僕ら昭和っ子の気持ちを初めて理解できるんじゃないんでしょうか。そう遠くない未来に、「平成生まれなんだ?結構、歳いってんね」なんて言われることが多くなりますよ。