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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ヴァージル・アブロー、新しい“クールネス”の定義者
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Theme is... PARIS FASHION WEEK
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!
後半のテーマは「パリ・コレクション」。
数年ぶりに訪れた「パリコレ」での賑やかで充実した時間について語る。
現在、ルイ・ヴィトンのデザイナーも務める親友と知り合ったきっかけ、
訓市が彼に魅せられた理由とは?
錚々たるVIPも居合わせたパーティーを終えて訓市は何を思ったのか…
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Home And Dry / Pet SHop Boys
Right Me Up / Tedeschi Trucks Band
Right Me Up / State Radio
I Wanna Be Loved / Eric Benet
迷子犬を探して / 七尾旅人
This Is The Day / The The
You're A Friend To Me / Sister Sledge
Excuses / The Morning Benders
Let's Go Out Tonight / The Blue Nile
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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パリコレクション、通称『パリコレ』と言いますが、今年久しぶりに行ってきました。これは1週間かけていろんなブランドが新しいコレクションを発表するもので、ファッション好きの方にとってはたぶん、夢のような時間と舞台なんでしょうけど、僕は苦手で数年行ってなかったんです。向こうでは「あら珍しい。どうして来たの?」とか散々言われましたが、なにが苦手かというと、とにかくやたらと人が多いんです。世界中から来たメディアや洋服を注文するバイヤーの人たち、インフルエンサーといわれる人たちで街がごった返していて、ローカルの友達と行きつけのカフェでのんびり、なんていうのもやりづらい。僕はパーティーは好きですが、ファッションパーティーというのは音楽好きが音を楽しむという感じでもないので、どうもしっくりこないものが多かったんです。でも、今回は知り合いのデザイナーのショーもたくさんあって、「見に来ないか?」と誘われましたし、なにより、今は『OFF-WHITE』という自身のブランドと、ルイ・ヴィトンのメンズのデザイナーをやっているヴァージル・アブローという友達がいまして、彼が「パーティーもやるし、ぜひショーを見に来てくれ」と言うので、行くことにしました。ヴァージルはシカゴ出身の黒人男性で、ヨーロッパ中心のハイ・ファッションのメゾンと言われるブランド、それも最高峰といわれているルイ・ヴィトンのデザイナーになったということで昨年ニュースになりました。彼はもともとミュージシャンのカニエ・ウェストの一派から出てきた人で、彼の作るものはストリートファッションです。だから、ハイ・ブランドがストリート化してくる極めつけというか、象徴として知られています。
僕がヴァージルと知り合って彼のことをとても気に入った理由は、彼がとにかく雑多な興味の持ち主で、音楽好きであり、そして自分のルーツをすごく大事にする人だからです。僕が着る服は古着だったり、知り合いが作ったふざけたTシャツだったり、とても彼が作るようなかなり高額で派手な今のストリートファッションとは全く違う。でも、最初は彼がブランドを始めたときのご飯会みたいなものに呼ばれまして、そこで初めて会いました。全く共通項もないだろうと、“カニエの一派だろ”みたいな考えもその時はあったんですが、喋るととにかくめちゃくちゃオープンでいい人。しかもみんなよく言うんですが、頭がスポンジのようなんです。興味があることはどんどんいろんな人に質問して吸収していく、とても面白い人でした。あらゆるところにアンテナを張り巡らせていて、インスタグラムとかSNSを駆使して、どんどん人と繋がって、どんどん自分がやっていることをリアルタイムで発信していく。面白い奴だなと、連絡を取り合うようになったのが友達になるきっかけでした。彼の何がすごいかというと、インスタのフォロワーが何百万人もいて、自分も何千人もフォローしているんですけど、“いつそんな時間があるんだ?”っていうぐらい、全部ちゃんとチェックしていて、興味があることがあるとすぐそれについてDMを送ったりする。“凄い男だ”っていうのが最初の印象でした。
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僕は毎年、年の瀬に忘年会パーティーというパーティーをしています。それぞれと小さい忘年会を毎日やるより、一度にバラバラな友達をたくさん集めて、乾杯して踊っている方が楽だろうと考えて、もう20年もやっています。そんな去年の忘年会の準備をしているときにヴァージルから連絡がありました。「日本に1日だけいるんだけど、一緒にパーティーはできないか?」と。ちょうどその忘年会を企画していたので、「そこでならいいよ」と言いますと、「ギャラなんていらないからぜひ回したい。みんなと一緒に遊ばせてくれ」と返ってきました。いろんなプロジェクトを同時に手がけ、アートをしたり、IKEAと家具作ったり、自分のブランドでナイキと靴を作ったり・・・ 常に飛行機で世界中を移動していて、“一体いつ寝てるんだ?”と皆に思われているヴァージルですが、彼自身はさらに音楽マニアでDJとしても活動しています。彼は「音楽はすぐに反応が返ってくるから、自分の創造性を鍛えるのに最高な頭のジムだ」とDJのことを言っていましたが、売れっ子になっても大小様々なクラブに出かけては遊んで、若い子とちゃんと交流して、世の中の流れを見ている。そんなデザイナーはヴァージルが初めてなんじゃないでしょうか。本当に自分のルーツを忘れません。忘年会でも自分のプレーが終わってもそのままDJブースから立ち去らずに楽しそうに踊って朝までいて、荷物だけ取って空港に向かってました。そんなヴァージルがパリコレの期間中に企画したパーティーは、いわゆるパリコレのアフターパーティーでは全くなくて、音楽好きを踊らせててファッション好きに“パーティーとは何ぞや”というのを知らせるためのものでした。もちろんDJには同業者のUNDERCOVERのジョニオくんとかいたんですが、そこにRadioheadのトム・ヨークからジャイルス・ピーターソンまでいて、朝の6時まで回していました。自分のショーを2日間続けてやって、ヴィトンのショーが終わった夜に、そのままDJをして朝まで踊るっていうんですから、とにかくすごい。前、ヴァージルに一番よく聞かれる質問は何か聞いてみたら、「どうやったらそんなにいろんなことを同時にたくさんできるんだ?何が秘訣なんだ?」という質問で、その答えは「もちろん確かに大変だけど、不可能じゃないんだよ。やりたければ休みも睡眠も削ってやればいい。不可能なことじゃない。ただ、それを本当にやろうとする人が少ないだけだよ」と。本当にその通りですよね。そのパーティーの明け方、僕はホテルに戻って朝空港に向かう車の中で、疲れたなとボーっとしていたんですが、その時にヴァージルからテキストが入りました。「楽しかったなぁ。場所を決めて2週間後にどっかでパーティーをしようぜ!」。冗談で言ったんでしょうけど、彼が言うと冗談とも思えなくて思わずすぐに返事をできない自分がいました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。