ON AIR DATE
2019.02.24
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

シドとナンシー、生前の姿も ドキュメンタリー『SAD VACATION』予告編&場面写真

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TUDOR logo

Theme is... HOTEL CHELSEA

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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--- 訓市が切望して宿泊した唯一のホテル in NY ---

番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!
訓市による“メッセージ返し”もお楽しみに。

後半のテーマは「チェルシー・ホテル」。

訓市が憧れたアーティスト、作家、ミュージシャンたちが暮らし
伝説となっているニューヨークの老舗ホテル・・・
「チェルシー・ホテル」に宿泊した思い出を語ります。
名物支配人スタンレーとの会話で知ったユニークなエピソードとは?


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2019.02.24

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Feels / Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry, Big Sean

2

The Heart Of The Matter / Don Henley

3

Nine Million Bicycles / Katie Melua

4

Winchester In Apple Blossom Time / Blossom Dearie

5

Co・ro・na (Live Arrangement) / 夏木マリ

6

I Love You / Daniel Nanois & Emmylou Harris

7

Chelsea Morning / Joni Mitchell

8

The EMI Song (Smile For Me) / Alex Chilton

9

Dayvan Cowboy (Odd Nosdam Remix) / Boards Of Canada

2019.02.24

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


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僕は旅行によく行ったり、ホテルのデザインの仕事もしているので、「ホテルにめちゃくちゃ詳しいんじゃないの?」とか、「どんなホテルが一番好きなんだ?」っていうことをよく聞かれるんですけど、僕はもともとホテルに泊まるのは苦手です。お金がなかったっていうのもあるんですが、バックパッカーで先進国と言われている所に行く場合、たいてい知り合いの家か、もしくは知り合った人の家に転がり込むというのが僕のスタイルでした。仕事でホテル代を出してもらえるようになっても、最初の頃は結局遊びに出かけて酔っ払って、友達と一緒に帰ってその家のカウチで寝たりと、どうも人恋しい気持ちの方が勝っていて、“ホテルに泊まる意味って何なんだろう?”と思っていました。何しろDJの友達の家に行けば気持ちのいい曲なんかをかけてくれて、「お前の選曲は天才的だな!」なんて言ってると向こうも喜んじゃって、こっちが寝落ちるまで延々と素敵な曲をかけてくれたり、人の家の方が数倍いいと思っていたんです。が、唯一お金がない時からどうしても泊まりたくて、とうとう無理して泊まったことのあるホテルがあります。それはニューヨークにある『チェルシー・ホテル』。なぜそこに泊まりたかったかというと、いろんな伝説があるホテルだったからです。ハックルベリーやトム・ソーヤを書いたマーク・トウェインが滞在していたとか、ボブ・ディランの名前の由来である詩人のディラン・トーマスが最後に滞在した所。アンディ・ウォーホルの映画に出ていたヒップスターと呼ばれる若手の人たちが全員住んでいたり、パティ・スミスも住んでいました。そして、極めつけはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスが彼女のナンシーを殺してしまったのが、ここの1階にある部屋だったとか。あまりにいろんな人々が滞在したチェルシー・ホテル。いろんな記事や本を読みすぎたせいか頭の中がパンパンになってしまいまして、ここに泊まらないとニューヨークに行った意味がないんじゃないかと思い込むぐらいでした。ギャラリーの多いチェルシーという地区はマンハッタンの左側で、ハドソン川に近いグリニッチ・ヴィレッジやミート・パッキングと呼ばれる地区の上の方にあります。そこにあるチェルシー・ホテルは古くて赤い建物で、僕が初めて興奮しながら行った時には、お世辞にも綺麗という感じのホテルではありませんでした。そして、今から10年ぐらい前かな?閉まってしまったんですけど、閉まるまでずっとそんな感じでした。2000年代に入って部屋の中を見ても、古いテレビが部屋に1台あって、新しい設備とかそんなものは一切ない殺風景な部屋。僕が泊まった部屋が一番安い所だったからかもしれませんが、だいたいの部屋がそんな感じのホテルでした。



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古くて何のサービスもないようなこのホテル。何が面白かったのかというと、そこにはスタンレーという名物支配人がいて、その人の裁量で誰が泊まるか、誰が住むかということが決定されていたことです。このホテル、半分は定住者に貸し出していてマンションのように住めるようになっていたんですが、半分はホテルとして宿泊者に貸し出していたんです。その、誰に住まわせて誰を泊めるかというのを、支配人スタンレーの独断と偏見で決めていたのです。気に食わないと「部屋は満室だ」って言えてしまうので、これってすごいことだと思います。そして、そこの定住者は自分に合わせて勝手にといいますか、許可は取ってると思いますが、部屋を改造しています。昔、マドンナが住んでいた元アーティストの部屋とか、アンディ・ウォーホル一派のウルトラ・ヴァイオレットが住んでいた部屋など、たまたま空いてる時に中を見せてもらったことがあるんですが、ロココ調で紫とか、とんでもない部屋です。そして、何よりも面白かったのが、そこに住む住人たち。例えば、お金のないアーティストは作品を見せて交渉して、月1,500ドルで小さな部屋に住んでる人もいれば、怪しい夜のお姉さんもいたり。ダウンタウンの街がそのまま一つの建物に入ったような所でした。「お客はもちろん大切で、宿は埋めなければならないけども、誰でもいいっていうわけじゃないんだよ。バランスをよく見てる」ということをスタンレーは話してくれました。僕はその雑多な人たちを選んでいるというホテルの姿勢に衝撃を受けましたし、自分がいつかホテルをやることがあれば絶対にこうしたいなぁと、その時思いました。どんな高級ホテルに行っても、そこに泊まっている人たちはお金を持っているだけで、素敵な高級な人たちかというと、全くそんなことはない。そんな光景をよく世界中で目にします。それに比べてチェルシー・ホテルのロビーの楽しいことといったら。これぞ僕の高級ホテルというか、人恋しいとそこに住んでる変な住人がロビーに降りてきて話をしてくれるんです。本当にかなり変わった人たちというか、70年代からそこにいて、「ここでいろんな映画監督に会ったんだ」っていう話をしてくれる人とか、いろんな人がいました。僕が最後に泊まった時は確か、俳優のイーサン・ホークが長期滞在していて、日本人のファンの女の子が大量にロビーにいたこともありましたが、それでもホテルは何も言わない。本当に素敵な場所でしたが、どっかの投資会社が買ってしまって改装途中にそれが止まって、またどこかに転売されて、今では誰のものになっているのか、オープンしてるのかも僕はもう知りません。でも、ホテルの話になるとかつてのこのチェルシー・ホテルのことを懐かしく思い出します。