ON AIR DATE
2019.03.24
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

ゴーストタウン化した渋谷・桜丘。「エモい廃墟」写真と優しい出会い

★★★★★★★★★★

TUDOR logo

Theme is... BROOKLYN

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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--- 訓市がブルックリンを嫌いになった理由 ---

番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードを紹介しながら、
その旅にまつわる思い出の曲をお送りします。
訓市による“メッセージ返し”もお楽しみに!

後半のテーマは「ブルックリン」。
ニューヨーク在住の友達には“大のブルックリン嫌い”で通っている訓市…
先日、訳あってかなり久しぶりにブルックリンに滞在して感じたこと。
ここ10年ほどの間のあまりの大きな変化に驚きつつ、
慣れ親しんだ街=渋谷の現在の変わり様と重ね合わせて・・・。


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2019.03.24

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Our House / Madness

2

Don't Let It Go / Beck

3

If Only / Raveena

4

Always And Forever / Pat Metheny

5

ストロベリータイム / UA

6

Rule / Nas

7

Ballad Of The Lights / Arthur Russell, Flying Hearts & Allen Ginsberg

8

This Is The Last Time / The National

9

Home (The Merv Griffin Show 1983) / Whitney Houston

2019.03.24

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


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先日、アカデミー賞の話なんかをしましたけど、その前にニューヨークに行っていました。ニューヨークと言っても、実際に泊まっていたのはかなり久しぶりとなるブルックリンで、僕としてはニューヨークに行ったっていう感覚があまりないんですけども。なんでそんなに違うんですかっていう人もいるかと思うんですが、僕はですね実は“大のブルックリン嫌い”で向こうの友達に知られています。ですので今回、「訓はどこに泊まっているの?」と言われて、ブルックリンのウィリアムズバーグという場所だと言うと、ひったすらニヤニヤされていまして。僕はそれを「仕事相手が勝手に決めたんだ」とうつむきながら話していました。なぜ、ブルックリンが嫌いなのかというとですね、まあここ十数年の話になるんですけども。昔のブルックリンというのは割とというか、一時期はかなり治安も悪い場所もたくさんありまして、昔ながらの地元っ子と、時には恐ろしいギャングと、その中に安くて大きいスタジオを求める度胸のあるアーティストくらいしか住んでいないというか、出会うことがありませんでした。僕には『ブルックリンネイビーアート』という海軍の基地の跡にスタジオを持っている友達がいて、よく遊びに行ったのですが・・・その時もですね、彼がわざわざ車で迎えに来てくれたりしました。そして、帰りもマンハッタンまで送ってくれました。駅からは遠くてタクシーもいない。しかも、いたとしてもマンハッタンの方まで橋を渡るのを嫌だと言われたりですね。近くてちょっと僕には遠い、そんな感じの街でした。マンハッタンから地下鉄に乗っていくには良いんですけども、ブルックリンの中を横に移動するっていうのが凄くあの街は難しい所でして、割と不便だったんですよね。ただし、ブルックリンの特徴である赤いレンガの倉庫や工場跡、そしてアパート、昔からずっとやっているであろう店の鄙びたサイン。ラフだけど生活感のある、それでいておっかないけど妙に気になる、そんな街でした。それがいつからか、家賃の上がったマンハッタンのダウンタウンより、こちらの方がいいと人がどんどん流れ出すうちに、投資目的のような高級アパートがバンバンと建ち、雨後の筍のようにですね、ブルックリン風というか、ライフスタイルを売りにするブランドやらウイスキー屋さんやらチョコレート屋さんなんでいうのができまくってですね。あっという間に全く違う街になってしまいました。どのくらい変わったかっていうと、きっと東京で例えると月島とか豊洲とかに近いんですかね。人口が10年で倍増したり、下町だと思っていたら高層マンションが立ち並ぶ街に様変わりしていたり、10年もしないうちにあっという間に住む人も見かけも変わってしまいました。新しい若い住人に「ブルックリンこそニューヨークだ、訓もブルックリンに滞在しなよ」と言われる度にですね、ひねくれたおじさんのような気持ちになりまして、「マンハッタンこそニューヨークだ!」と常に言い返していました。そもそも、こんなにブルックリンが人気が出てですね、「ニューヨークの中心はブルックリンだ」なんて言うのが出てきたのは住所にニューヨーク州と付くからだと僕は思うようになりました。将来、金持ちになったらどうすると人に聞かれるとですね、僕の答えっていうのは「ブルックリンを丸ごと買って、そしてそれを隣のニュージャージー州に売ってやる」って答えています。まあそう言うとブルックリンッ子にみんなものすごく嫌な顔をされるんですけども、それってどういうことかと言うと、南青山を港区の隣の区に売りつけて港区を隣の県に売っているようなものですね。便利さは変わらないと思いますが、必ず地価は下がると思います。


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「嫌い嫌い」と言い続け、会おうと言われたら「お前が橋を渡って俺に会いに来い!」と言って大体マンハッタンで会っていたものですから、街を見ていなくてですね・・・そんな中、久しぶりに滞在してみて、その変化を感じるのは本当に興味深かったです。海沿いには本当に古い大きな工場跡とか倉庫跡がたくさんあったんですけども、高層マンションの建て替えラッシュで景色が一変していました。そして、本当に新しいカフェとか洋服屋さんとかレストランとか、たくさん増えていました。まだ寒かったので僕はダウンを着込んでヘッドホンを着けながらテクテク歩いて、途中でそういう新しいコーヒー屋に入って外でタバコを吸い、またテクテクと歩いていました。どう考えても昔知っていた街に思えなくって、まるで知らない街を一人で歩いているような感覚でした。マンハッタンもものすごく変わってきてはいるんですけど、よく訪れているのでその変化というのが少しづつに感じるんですけども。ブルックリンはあまりにも間が空いていたので、その変わりっぷりに本当にびっくりしまして。なんだか最近の渋谷駅周辺のような、渋谷もですね、下を向いてついつい歩いているので、たまに上を見上げるとこんな所に壁があるっていうか、これビルだって思ったり、なんだこの大きい建築予定地の空き地は何があったのすらももう思い出せなかったり。小学生の頃からうろうろしている街ですから、方向音痴の僕でもかなり土地感がある場所、地元と言っていいのが渋谷なんですけども、そんな僕でもびっくりするくらい変わっています。ブルックリンにいて、渋谷を思い出しながら、“再開発が進んで街の個性が無くならないといいなぁ”と強くまた思いました。新しい店と古くからある店、新しい住人とずっとそこに住んでいた住人、それがうまく混ざるような、そんな変化ならばいいなあと思うんですけども、なんだかブルドーザーで全てをなぎ倒して全部地ならしして、そのあとに新しいものを作っていくような開発に僕には見えてしまいます。人通りのある所がですね、大きい企業じゃないと借りれなくて、個人が頑張ってお金を貯めて出店することが不可能。そんな街になってしまったら、ずいぶんつまらないなあと思うんですけども。マンハッタンのソーホーという所がありますが、今はもう本当に高級なお店とか高いレストランとか、そういうものしかありませんが、それでも昔はスライスピザ、こう1枚づつ切ったピザを2ドルとか昔は3ドルで売るお店っていうのがまだ数軒ありまして、お金のない旅行中は僕の主食だったことがあります。主食というか、時には1日3回食べていました。安いですからね。で、地元に住んでいる人とか仕事をしていてちょっと小腹が空いたりとか、そういう人たちも普通にスライスに駆け込んでですね。それをコーラで流し込んだりしていたんですけども、それが家賃が急上昇して1つもなくなってしまいました。一軒、もともとピザ屋があった所に誰かが出店して、また一応スライスピザ屋になっていたんですけども、前回ニューヨークに行った時にその前を通ってびっくりしました。ものすごい行列ができているんですよ。なんかお洒落なすごい高いスライスピザ屋ができたのかと思ったら、美味しくて並ぶというよりニューヨーク名物のそのスライスピザを売る店っていうのが辺りにないので観光客が並んで買ってるんですよね、写真を撮って。そもそも周りに安く住めるようなところはとうになく無くなっていますし、高級賃貸に住んでいる人もスライスを食べるような人はほとんどいないのかもしれません。でもなんか、その街にあった観光名所みたいな店の形だけをとりあえず残そうみたいな、そんな形で存在するスライスピザを見て僕はとても悲しくなったのを覚えています。ブルックリンはどうなるんでしょうかね。ちょっと危なくって、それでも、ああ、海外の都市のちょっと凄い所に来たなっていうあの高揚感っていうんですか。小洒落ただけのライフスタイルばかりが語られる街には、勝手ですけれどもなってほしくないなあと強く思いました。