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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
海外からも注目されるミュージック バーという日本のカルチャー
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Theme is... SOUND SYSTEM
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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---- 極上のハイファイ・サウンドに身を委ねた札幌の夜 ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードを紹介しながら、
その旅にまつわる思い出の曲をお送りします。
訓市による“メッセージ返し”もお楽しみに!
後半のテーマは「サウンド・システム」。
数年ぶりに訪れた札幌で訓市が足を運んだ「プレシャス・ホール」とは?
伝説のパーティー「The Loft」を主催したDJ、
デヴィッド・マンキューソの意思を受け継いで
25年以上にわたって極上の音を鳴らし続けている聖地について語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Venus & Mars / Paul McCartney & The Wings
One And Only / Adele
Walk Away From Love / Bitty McLean
Sleep Till Afternoon / DSPS
雨の街を / 荒井由実
Close But Not Quiet / Everything Is Recorded
Itwenty Five / Joe Malinga & Southern African Force
Seeing You (For The First Time) / Jimmy Messina
Bandolero Homecoming / The Marketts
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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先日、久しぶりに札幌に行ってきました。気づけばもう3年ぐらい行っていなくて、こんなに空いたこともなかったんですが、丁度仕事とトミー・ゲレロのライブが札幌にあるというのでそれに合わせて行ったんですけども、会場が「プレシャス・ホール」だったからです。僕は音楽が大好きで、スピーカーやアンプ、レコードというアナログなシステムとかが大好きで、世界中でいろんな音の良いと呼ばれるクラブとかライブハウスとかバーとかで音楽を聴いて、また音好きの人の家やコレクターの家のシステムを訪ねてきました。音の良い場所で音楽を聴くと本当にいろんな発見があります。知ったはずの曲なのに、こんな音が入っていたのかと気づかなかったこととか、この曲のベースってこんなに豊かで鳴ってるんだったっけとか、シンガーの息継ぎがこんなところに聴けるとは思わなかったとか…。この「プレシャス・ホール」という場所は大勢の人にハイファイの音を鳴らして、ベースやドラムを無理に強調せずに、気づけば体を揺らしてしまうというとんでもない音を鳴らす場所です。ここは場所を何度か移転しながらも、デヴィッド・マンキューソというニューヨークで「ロフト」というパーティーをやっていた人がいるんですけども、その人と一緒に音を鳴らし、その哲学を受け継ぐサトルさんたちとその家族のような仲間が良い音を求めてもう25年以上も運営している場所です。機材もどうやって集めたのか時間をかけて普通はクラブに使わないハイファイ用の物をたくさん使っています。アメリカ製の「クリプシュ」というスピーカーを部屋を囲むように配置していて、まぁもう音に囲まれるって感じなんですけども、それを自分たちでカスタムして使っています。そして特別な時に使うターンテーブルはパイオニアがかつて生産していた「エクスクルーシブ」というブランドの物で、針は「光悦」というのを使ってます。これはマニアの間では有名なんですが、もともと日本刀を作っていた人が始めた針のみを作る会社で1つ1つ手作り、カートリッジ、針を丁度包み込む部分のところは音質を考えてオニキスとかタイガーアイとか輝石ってやつですか、貴重な石を使って作ってます。ターンテーブルを逆回転して曲の頭出しをしようものなら折れてしまうくらいな繊細な物で、しかももうとんでもなく高いんですよ。これをレコードをミックスしないで曲の頭から最後までちゃんとかけるのが亡くなったマンキューソのスタイルで、それをちゃんと「プレシャス・ホール」は守っています。
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「ロフト」というパーティーをやっていたマンキューソという人はパーティで2回ほど会ったことがあるんですけども、ちゃんと話したことはありません。けれど彼を敬愛する人たちや本なんかを見て大体のことは知っているんですけども、孤児院で育ったらしくて、そこで唯一寂しい気持ちを慰めてくれる最高の娯楽っていうのは知らない場所に連れて行ってくれる音楽とレコード。たまにあるクリスマスとかの孤児院でのパーティーで、その2つを大人になって追求したのが自宅があるロフトで彼がやっていたパーティーでした。考えうる最高の音響で自分が本当に良いと思うレコードだけを最初から最後までミックスせずにたくさんの人たちと聴く。僕はいつも首にヘッドホンやイヤホンをかけて、歩いている時とか移動の車の中で音楽を聴いています。音楽は本当に最良の友達と言いますか、1人の時にいつでも助けられるわけなんですけども、本当は良い音楽っていうのはいろんな人たちと一緒に聴いて笑ったり自然に踊ったり、その場を共有することだと思います。そんな最高の環境を、僕は世界中で見たいなぁと思っていたんですが、灯台下暗しと言うか、札幌で見つけたわけです。商売的には難しいこときっともあると思うんですが、25年間以上もそれを続けている「プレシャス・ホール」という箱は本当にすごいと思います。ちなみに札幌に行くちょっと前にトミー・ゲレロのライブは東京でも観ていたのですけども、比較するのも失礼ですが札幌の方が断然に素晴らしかったですね。きっと本人たちも自分たちが奏でる音が気持ち良すぎて、より深く演奏してたと思うんですけど。そして、そのライブが終わった後のローカルのDJがかけるレコードも本当にジャンル括りが出来ないダンスミュージックでもない良い音楽で、知っている曲はまるで初めて聴く曲のように聴こえますし、ビートが無いようなスローな曲でも立ち上がって体を揺らしてしまうようなグルーヴを感じますし・・・一緒に札幌に来た年下のカメラマンが初めてだったんですけども「どうしてこういう場所が東京に無いんだろう。こんなにクリアに音楽を大きい音で聴いたのは生まれて初めてで、音楽感が変わる」と言っていました。世界中から音を聴きにくる人たちが集まってくるハウスの聖地とも言われている「プレシャス・ホール」。東京だけが日本の全てじゃないということを思い知らせてくれる場所ですし、なんですかね〜今、世界中でレコードバーや音響にこだわった所が流行っているんですよ。まぁ日本の影響が大きいって言われてますけども、いろんな街で新しい店がオープンしていますが、大体は投資家を集めて高い機材、ビンテージの物を揃えてレコードのコレクションもどっかから買って来てボーンと見せているんですけども、選曲はおろか調整すら出来ない人たちが多いと聞きます。札幌という街で日夜、工夫をしながら理想の空間と音と人の場を作り続けている「プレシャス・ホール」・・・機会があれば是非その空間を味わいに行ってみてください。まあクラブって感じても最早ないと思うんですけども、ただそう聞いて若者が馬鹿騒ぎしたりナンパしたり、ベースが耳に痛いと思う人がいましたら、そんなものとは全く無縁な場所です。音楽が好きな人は1人で行ってビールを1本買って、スピーカーの前で音楽を聴けばきっと言っている意味が分かると思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。