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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
日本の常識は海外の非常識? 海外で通用しないお酒の飲み方
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Theme is... Sad Summer
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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--- ニューヨークのダウンタウンで体験した日本の夏祭り感 ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、はがき、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわるリクエスト曲をお届けします。
訓市の“メッセージ返し”もお楽しみに!
後半のテーマは「サッド・サマー」。
ニューヨークのダウンタウンにある行きつけのカフェで過ごした
いつもと変わらない時間
長年の友人宅で初夏の太陽の光を浴びながら飲んだ昼ビール
とことん落ち込んでいた友人と聴いた“悲しい曲”のセレクション
ダウンタウンのど真ん中で開催中していたパーティーに足を運び、
地元の若者たちと過ごした夏は・・・Sad?
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
How Deep Is Your Love / PJ Morton
Baby, Now That I've Found / Alison Krauss
This Time It's Love / Tamia
The Only Living Boy In New York / Everything But The Girl
Rock Your Baby / Emerson Kitamura
Fallen / Gert Taberner
It's Not Like You / The Paper Kites
Light Of My Life / Cvmel
Some Other Time / Bill Evans
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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先日、またニューヨークに仕事で行っていたんですけど、着いてすぐ、もう彼が10代の頃から知っている若い友達とダウンタウンにある古いカフェで待ち合わせをしました。最近ではもう随分少なくなってしまったカフェ、つまり観光客よりも地元客の多いそのカフェっていうのは若い人から年寄りまで本当にたくさんの人が集まっていて、一日中食べられる朝食、オールデイ・ブレックファーストっていうやつですけど、それを好きな時間に食べたり喋ったりしてとてもオシャレっていう感じではないんですけど僕の大好きなカフェの一つです。そのカウンターで待ち合わせた若い友達とコーヒーを飲んでビールを1杯飲んでいるうちに、「ちょっと僕の家に来なよ」っていうことでそのまま家に遊びに行くことになりました。「広いテラスもあるし、くつろげるからさ」と言われて初めて行った彼の部屋っていうのは僕が思った以上に大きなテラスがあって、初夏の太陽が降り注ぐとてもとても気持ちの良い家でした。まぁそうなると… まだ昼過ぎだけどビールをガンガン飲もうよと冷蔵庫から6パック、6個入りのケースを持ってきた友達はそれをテーブルの上に置くと、向こうの子は上手いんですけどライターの後ろでポンって栓を開けて1本僕にくれました。小声で乾杯と言ってビールをぐいっと煽り、深い椅子に座って真っ青な空を眺めました。もう本当に初夏のこれ以上ないというくらいの青空で、ニューヨークっていうのは夏になるとものすごく湿気があるんですけど、その日は湿気もなく、いつもはくすんですごく汚く見える古い石造りのビルなんかもとても色鮮やかに見えるくらいでした。Tシャツ1枚で心地よい陽気で、飛行機で固まった身体を伸ばしてビールを飲んでいると彼は自分のiPhoneを取り出して音楽をかけ始めました。それはそれは夏の晴れた午後に合うんですけど、どこかもの悲しい感じの音でした。何も言わないので「お前、さてはなにかあったな? あの可愛い彼女とひょっとして別れたりしたいのかい?」と聞くと友達は小さく頷きました。まぁそれを聞いた途端にゲラゲラと笑ってしまったんですけど… 最僕もそうですけど最近は皆んなインスタをやるじゃないですか。インスタを見ていると何時もこれは彼女と一緒にいるなあっていう子が突然、その彼女の姿が消えて何やら深刻な詩の一節を載っけたりってあるじゃないですか、どうしちゃったんだろうっていう。何となく彼のインスタでそれに気付いていたので「いつだい?」と聞くと「1ヶ月半くらい前かな」「じゃあ、まだ立ち直れないわけだ?」「まあね」・・・そういって彼は肩をすくめました。見ていると気持ちは痛いほど分かりました。夏のニューヨーク、気持ちのいい週末の午後で浮かない顔になるよなと。今の時期なら普通でしたら若い子は週末はロッカウェイとかモントークの海のほうに行ってわいわい騒いだり、街では夜中まで道で大騒ぎできますからね。きっと、彼女と色んなことを計画していたはずなのになぁ〜と思いました。
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落ち込んでいる時こそとことん落ち込もう、もしくは落としてやろうというのがあるんですけど… まぁそうすれば、またきっと楽しいことがあるってことで、そこから悲しい曲ばかりをリレー形式でかけることになりました。彼がかけて、「じゃあ、今度は僕のiPhoneからかけるよ」って言って必殺の曲とかをかけるじゃないですか。そうすると「うぁ、せつない!」と言ってはぐびぐび、「これは歌詞が刺さりすぎてナイフみたいだぁ〜」と言ってはぐびぐび。そういってはずっとビールを飲んでいましたが、そのうちに部屋に戻ってしまってあれっと思っていたら部屋からテキーラのボトルを持ってきまして、「これはもう飲んで忘れようかな」というわけで僕にとっても大事な大事な唯一ニューヨークであった何もない休みの休日を彼と昼からテキーラを飲んで過ごすことになりました。「これはサッドサマー・パーティーだな」と彼も言ってましたけど、わざと悲しい曲をかけると夏の空に溶けていくようによく合います。気付けば何人も人が集まってきて、「お、しんみりした曲かけてるねえ。じゃあ僕も」っていうのが続きまして、日没ころには全員すっかり出来上がってしまい、このままここにいたら寝るだけだということになって今度は近所まで歩いて出掛けました。どこに行こうかっていう時、もう遠い所は辛いなっていうことで窓越しに通りを眺められるイタリアンバーみたいな店に連れて行かれまして、そこで黙々とみんなでパスタを食べて、お酒を白ワインに切り替えて飲んでいると知り合いから連絡がありました。近くの道でちょうどスケートの映画の試写会の後のアフターパーティーをやっているって言うんですよ。どこだって言っても道の辺りとしか返事がこないので、じゃあちょっと行ってみようかと僕ら全員軽い千鳥足で夜の道を歩いて行きました。すると本当に言われたアドレスの辺りの路上にスケーターだの若い子たちが大勢集まり十字路を軽く占拠したようなブロックパーティーのような状態になっていました。路上に座り込む者、隠れてお酒を飲む者、酔っ払いながらスケートする者、何やら3〜4人で叩いたり何したりで大笑いしている者。何だかニューヨークのダウンタウンのど真ん中にいながら、どこか日本の古い神社とかの境内でやっている夏祭りのような、そんな気分になりました。人が集まってただ騒いでいるだけなのですが、そこから発散するパワーっていうのは凄いものがあります。皆んな酔っ払って屈託がないので、「よう、前どっかで会ったよね!」とか「誰々の友達だよね? 俺ベン、よろしくね」とか「あぁ、どうもどうも!」っていう感じなんですけど、屈託のない若い子たちと何だかよく訳の分からない会話をしているうちに、僕のその落ち込んでいた友達の顔にもだんだん笑顔が残って・・・気分は“サッド・サマー”から“普通のサマー”へと変わっていきました。まぁ夏ってやっぱり下を向いていないで、上を向いて楽しい酒を飲んで行こうじゃありませんか。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。