ON AIR DATE
2019.07.07
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

★★★★★★★★★★

訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

「makita」のロゴがドーーン!!工具にしか見えない充電式コーヒーメーカーの実力を診断【工具メーカー家電 ガチンコカタログ】

★★★★★★★★★★

TUDOR logo

Theme is... オタク

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★★★★★★

--- “自分はまだまだだなぁ〜”と実感したニューヨークの夜 ---

番組前半はリスナーの皆さんから手紙、はがき、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわるリクエスト曲をお届けします。
訓市の“メッセージ返し”もお楽しみに!

後半のテーマは「オタク」。
先日、番組にもゲスト出演していただいた現代アーティスト、
トム・サックスを始め訓市がそれぞれに親しくしている
3人のオタクを引き合わせたところ・・・
挨拶もそぞろに話し始めた話題とは?
そして、訓市が日本人であることを誇らしく感じた理由とは?
アーティストだからこその妙な“こだわり”を耳にして実感した
自分のスタンスについて語る。



★★★★★★★★★★

番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2019.07.07

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Darjeeling / Barrie

2

By Your Side / Chantal Chamberland

3

Power Flower / Stevie Wonder

4

Tom Traubert's Blues / Rod Stewart

5

古い切符 / 友部正人

6

Where Is My Mind / Sunday Girl

7

Let Me In / Snowmine

8

Seasick, Yet Still Docked / Morissey

9

Threnody / Goldmund

2019.07.07

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


Kunichi was talking …


★★★★★★★★★★

先日、またニューヨークに行っていたんですけど、一晩いつもと違うとても楽しい夜がありました。というのも普段はバラバラで僕は会っている友達を一堂に会した“オタクの夕べ”のようなものがあったからです。集まったのは番組でもゲストとして出ていただいたアーティストのトムサックス。元々グラフィティライターとしてストリートアートのような絵を描いたり洋服のデザインをしながら実は工科大学を出て、趣味とは言えないレベルのスピーカーや真空管のアンプを作って、今ですとニューヨークのSupremeというお店とかそういう所でシステムが使われているデヴォン。そして、LCDサウンドシステムというグラミー賞も取ったことあるバンドをやりながら、実は極度の音響オタクで自分のスタジオのミキサーとかも全て改造したりスピーカーもベニヤ板を買ってきて自作するというジェームス・マーフィー。彼らは別々に知り合った友達で、彼ら自体も共通の友人がいたり、どこかで会ったことはあるんだけどもちゃんと喋ったことはない。けれども機会があれば是非会ってみたいなぁ〜という感じだったので、じゃあ一緒に酒でも飲んで飯でも食べましょうということになり、集めてみたのです。とにかく、この3人はレベルとか求める音の感じっていうのは様々なんですが、音に関しては一言ある完全なマニアというかオタクでして、どうなるかとすごい楽しみにしていました。集まった場所はブルックリンに最近できたレコードバー兼ライブハウスで、そこも凄く大きいシステムがあったんですがデヴォンが設計して作ったもので、キャビネット、スピーカーのホーンが入っている木や箱とかは全部デヴォン本人が作って、そこに50年代とか60年代のアメリカ製のパーツを組み合わせていくというで、まぁルックスは“ザ・スピーカー”と言うか、2歳児が見ても絶対ここから音が出るんだよねって分かる素晴らしい物で、まずそこにトム・サックスと彼のチームを連れて行ったのですが、面白かったのは挨拶するかと思ったらあっという間に「このベニヤ板の厚さは何ミリだ?」とか「あぁこれは15ミリだね!」「12じゃないのか?」とか「音はこっちに広がるの?裏はどうなってるんだ?」とか、「あのスピーカーにくっ付いている小さな部品、あれは何だ?」とか、要はそういういきなりスペックとか数字の話が始まって、それがひとしきり済んだ後で「あぁ、初めまして」っていうところが本当に子供のようでして、共通の趣味とか興味があると会話は勝手に広がるものですが、それは本当にどこの国に行っても、何語で話しても同じなんだな〜とその時に強く感じました。結局、ブースの中に入ったり、「このミキサーは何だ?」とかで散々盛り上がったあと、夏の間中にここに集まってパーティーをやろうということになりました。パーティーと言ってもディスコとかハウスをかけるのではなくて踊れない変わった音だけをかけるリスニングの夕べにしよう・・・。まぁ話を聞いているとお経のような音楽からノイズ、クラシックにモータウンまでをごちゃ混ぜにして神妙な顔をしてひたすらレコードをかけようじゃないかという、なんとか夏が終わるまでにまたニューヨークに戻らなければなと思いました。


★★★★★★★★★★

そのレコードバーに行った後、今度はウィリアムバーグにあるジェームス・マーフィーが経営しているワインで有名なレストランに行きました。このジェームスというのは音楽以外では音響とワイン、そしてラーメンオタクで自分が気に入ったところは全てノートに書いてメモっている人なんですけど、ここに着いても当然、挨拶もそこそこにスピーカーの話や壁に使う防音材の話になっていきました。このジェームス・マーフィーがやっているレストランはグルメに有名で毎晩いっぱいなんですよ。で、そのお店に入るお客さんというのは大体料理の話で「これに似た料理を〇〇で食べたことがある」とか。そして、ここはナチュラルワインしか置いてないんですけど、「ワインといえばあそこが美味しいわよね」とかワイナリーがどうだっていう話が周りのテーブルでは繰り広げられてるんですが、僕がいたテーブルだけはほぼ呪文のような話だけが繰り広げられていました。配線ケーブルがどうだとかスイッチをどこに付ければいいだとか、部品の話で全員子供のように目がキラキラしていました。面白い人たちだなぁと思いながら、それを肴にニヤニヤとお酒を飲んでいたんですが、その内に話が音響だけで終わらなくなってきまして、気づくと掃除機や梱包材の話で異常に盛り上がっていました。みんな物にこだわりがすごくあって、自分のスタジオとかを整理整頓してどこに何があるかっていうのを把握しないと気が済まない整頓マニアなのはよく知っていましたが、掃除機にもこだわりがそんなにあるとは思いませんでした。「あのメーカーの吸い込みは最高だ」とか、「間違いないね馬力が違うね」とか「ブラシの性能が悪い」とか、こんなに嬉しそうに掃除機の話をする40、50代の男がこの世にいるのかっていう感じだったんですけど、まぁ当然なんですけどもここで最高評価を得た一つが日本が誇る工具メーカー『Makita』です。皆さんはあまり知らないかもしれないですけどDIYで自分で家具を作ったり家を直したことがある人、そして大工さんならもちろん知ってると思うんですけど、Makitaが作る電動ドリルとかインパクトとか本当に素晴らしいわけですよ。こういう時に「やっぱりマキタは良いよね〜」っていう名前が出てくると誇らしい気持ちになるとともに、あぁ自分は日本人なんだなぁ〜としみじみ感じたりします。この工具というか掃除機で盛り上がるのは分かったんですが、そこからダンボールに詰める梱包材はどれが良いのかって盛り上がったのは流石に付いて行けなかったですけどもね。「〇〇社の梱包材は細かくて傷が付かなくて良い」とか、だって梱包材について今まで生きてきて一度でも考えたことのある人ってどの位いるんでしょうか?世の中って不思議な物にこだわりを持とうとする人が多いんだなと思ったとともに、僕はマニアとしてはまだまだだなと思いました。こういうこだわりが異常にあるってところがいわゆる一般の人とアーティストとを隔てる壁なのかなぁ〜とも思いましたし、僕は別にアーティストじゃなくてよかったなぁ〜と思いました。家に帰って「あの梱包材のせいでイライラした」なんて思いたくないですからね。それを気づいたら結局3時間以上していたでしょうか?終わった後の皆んなの満足げな顔ときたら知らない人が見たら、“まぁあの人たちはたくさん美味しいものを食べて美味しいワインを飲んで満足してるのね”ってきっと思ったと思いますが、中身は全然違いました。すごく楽しくてその踊れない変な音楽会をやろうっていう話の後に、また別のパーティーを皆んなで是非やろうと言って別れました。こうやって今年はニューヨークに行かなくて良いかなって思ってるところに、また戻る楽しい目的が出来ました。