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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ストリートの王様、かく語りき──シュプリームのこれまでとこれから
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Theme is... Supreme
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、はがき、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエアします。
訓市の“質問返し”にもご期待を!
後半のテーマは「シュプリーム」。
20年来の付き合いになるスタッフやスケーターと知り合ったきっかけ、
サンフランシスコ店のオープンに合わせて現地で過ごしたエピソードとは?
今もなお訓市がシュプリームの服を着続けている理由について語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてま〜す!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Love Will Tear Us Apart / Swan
Down Town / Tahiti 80
So Much In Love / Timothy B Schmit
Cherish The Day / Sade
救われる気持ち / フィッシュマンズ
You Can't Hurry Love / Phil Collins
There Is A Light That Never Goes Out / The Smiths
Genius Of Love / Tom Tom Club
Luka / Suzanne Vega
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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つい先日またサンフランシスコへと行ってきました。9月にも行ったんですがその時は2泊。今度は3泊。ちょっと増えて体も楽になったのかと思いきや、またまたしこたま飲んでしまったんですが。今回フランシスコに行った理由っていうのはシュプリームというニューヨーク発のスケートブランドがサンフランシスコに路面店を出すというので、各地から関係者や仲間が集まる、ということで呼んでもらいました。このシュプリームというブランドができたのは1994年、もう25年経ったというのが信じられないんですけども。僕がこのブランドの人たちを初めてちゃんと知ったのは99年のことでした。もともとニューヨークのシティーキッズたちを主人公にした映画『キッズ』に出てくる男の子たちっていうのがこのお店に溜まるスケーターたちが大半だったので、そういうのはなんとなく知っていたのですが、その頃の僕というのはまだアジアをふらふらしている頃で、物価の高いニューヨークっていうのはなかなか行けなくてですね、ちゃんとその知り合ったきっかけというのは自分が99年当時初めて雑誌を作っている時にですね、色んな人と知り合ったんですが、その中の1人が「私の弟が店で働いているから会いに行きなよ」と言って紹介してくれたのが最初でした。今ではブランドの店が立ち並ぶソーホーの外れにあるラファイエット通り沿いにあったお店は、当時はとても独特な雰囲気というか入りづらいというか不思議な感じの店でした。働いてる子たちというのは僕と同い歳、当時26ぐらいですね。それかもっと若くて、街の不良が働いているというかそこらを滑っているスケーターがそのまま店の中にいるというか。みんな店の外に溜まってよくくっちゃべっていましたし、スケートしたりなんて言うんですかねとても客商売のお店には見えなかったんですが。ただ、そういう地元の彼らっていうのはちょっと顔見知りになったり、挨拶するようになるとやたらと良い人が多くてですね、結果的に仕事の合間に暇ができると店に寄って時間を潰したり、そのまま近くの安いバーでビールを飲んだりするようになりました。彼らがよく溜まっていたのが当時ニューヨークで1番ビールが安いと言われたバーで、そこにはまだアンディ・ウォーホルのファミリーの生き残りがいてですね、彼しか座れないカウンター席があったり、昔の残党の人たちっていうのがたくさんいてすごく面白かったです。仲良くなってよく遊んだのは2000年代のことなんですけども。まあ2000年代、まだまだ不動産バブルが本格的に起こる前で、ダウンタウンシーンと呼ばれるものが残っていました。安いボロアパートや飯屋、古いバーというのがまだたくさん残っていて、その合間合間にお金のない若い子やアーティスト志望の子たちがたくさん住んでいました。夏のロウワーイーストサイドにはもう本当に通りに人が溢れていて、夜な夜なこのシュプリームのスケーターや周りのアーティストたちとバーやラウンジをハシゴしながら歩いたものです。
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最初に彼らと知り合った頃、メインのスケーターやスタッフというのはちょうど僕と同い歳が多かったんですけども、やがて若い子たちがどんどんと現れていつの間にか入れ替わっていきました。もう多分3回ぐらい大きなチェンジがあったと思うんですけども。とにかく、「こいつは超面白い絵を描くから訓は絶対見ろ」「こいつはすごい写真を撮るんだ。全部見てみろ」そうやって紹介されたのが今は亡くなってしまったアーティストのダッシュ・スノウや、第1線のフォトグラファーとして世界中で活躍するライアン・マッギンリーなど、ニューヨークで恐るべき子供たちと呼ばれた新しいアーティストたちで、まあいろんな人を紹介してもらって本当にラッキーだったなあと思います。歳をとると昔は良かったっていう話によくなっちゃうんですけども、どこかそれは僕も理解していて。まああの頃自分が若かったから楽しかっただけだとか、また戻りたいと思うことはあんまりないんですけども、この頃のニューヨークっていうのは今でもちょっと戻りたいなあと思うぐらい面白かったです。とにかくちっちゃくって面白い古い店とかがたくさんあって、エネルギーだけがものすごくあって。前も話したかもしれませんが例えばモリッシーとスミスの曲だけをほぼ1晩中流すパーティとか、盛り上がる曲例えば「Discharming man」とかっていうのが1晩に何度もかかるんですよ。そうするとまるで何もなかったかのように同じように盛り上がるっていうのとかですね。古いレストランをただ看板を付け替えて改造したラウンジなのに世界1入口が厳しいという。ドアマンを知らないと絶対入れない。本当に札束見せて「入れろ」って言っても「帰れ」って言われちゃうようなお店とか、そこではさっき言ったようなモータウンやニューウェーブの曲が交互にかかっていました。ニューウェーブやパンクで叫びながら飛び跳ねたかと思うと今度はモータウンで腰を振る、ああこれが本当のツイストアンドシャウトなんだなぁって思いながらよく踊ったものです。それ以外にもサーカスのフリークショーを見せるような店、そしてリアルにガチンコで男2人が素手で殴り合うファイトクラブ。この頃の思い出というのは店で誰かが大声をあげているか、どっかで誰かが吐いているというか、そんな感じです。そんなニューヨークの楽しい思い出っていうのには常にこのシュプリームの仲間がいまして、今ではですねルイヴィトンとコラボをしたり新作の発売日には行列ができたり、それを買っちゃあリセールで儲けようとする子がいたりですね、今きっと大きいブランドでコマーシャルと思う人もいるかもしれませんが、僕の印象というのは色んな人を巻き込みながらずっとそういう人たちの面倒をよく見るローカルブランドというイメージしかありません。世代が変わっても皆繋がっていますし、ニューヨークでは親子2代でここの服を着る友達もたくさんいます。ニューヨークのダウンタウンに90年代からいる者にとってシュプリームというのは世界的なブランドというよりかですね、おらが街の街から出てきた誇るべき店だ、という感じで僕に取ってもその印象っていうのが人がなんと言おうと変わらないです。今となっては自分も歳をとってですね古着を着たりそこらで買えるような普通のものばかりを着たりしていますが、唯一自分が着れるものを探して今でも着てるのがシュプリームです。それはですね仲間が作って、まだ働く店のものを着て誇りに思いたいっていう気持ちが20年経った今も消えないからかもしれません。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。