★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
月明かりに照らされた雪原をスノーモービルで駆け抜ける!
★★★★★★★★★★
Theme is... 冬景色
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」を
キーワードに旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽を
お届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★
--- 冬の醍醐味を味わうなら、今 ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで
お寄せいただいた旅のエピソードと、
その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエア!
選曲のオーダーや悩み相談にもお答えします。
後半のテーマは「冬景色」。
毎年恒例となっている群馬県水上の友人宅で感じた冬の空気。
長風呂が苦手な訓市が1時間でも入れる露天風の魅力。
かつて、ドイツで体感した極寒の思い出・・・。
★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエスト… お待ちしてます!!
現在、次のプレゼントを製作中です。そちらもご期待下さい!
完成次第、番組内でお知らせします。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Let's Stay Home / Frankie Knuckles
Beth / Kiss
Celia Inside / The Cardigans
How Deep Is The Ocean / Bill Evans Trio
ただいま、おかえり / 羊毛とおはな
Uncertain Smile / The The
Love Hangover / Diana Ross
Angel / Chaka Khan
Taking Tiger Mountain / Brian Eno
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★★★
寒いのが苦手で冬は大嫌いと言っていたんですが、最近は暖冬でそうでもなくなってきました。若い頃は今よりさらに痩せていまして、とにかく寒がりで常に5枚ぐらい重ね着をしていましたから、人の家に遊びに行って脱ぎだすとよく笑われたものでした。「何枚着てるんだ?」とか「お前は玉ねぎか!」っていう感じでしたけど、最近は大体3枚で済んでしまいます。Tシャツにスウェットかセーターに上着のみ。もはやヒートテックとか着てしまうと暑くて事務所とかにいると辛くなってくるんですけど、そういう暖冬になってきますとだんだん寒かった冬のことが懐かしく思えてきたりするのは、僕が天邪鬼だからなんでしょうか? 暖かいなぁと言っていると、雪景色の中でしか味わえない感情や、外に出ると肺に突き刺さるような外気の冷たさ、その中でしか感じることの出来ない透明感のようなものは、そういうものがないと夏の素晴らしさを理解出来ないような気がするからです。どんな冬をいつも過ごしているかっていうと、僕は毎年友達の家がある群馬の水上という所に行くのですが、あそこは群馬なのに日本でも有数の豪雪地帯で、山の上のほうともなると車は四駆、それもジムニーのような幅のない小さい車じゃないと通れないような道があります。道の両脇を雪の壁が視界が届かなくなるくらいまで迫っているような所を、くねくねと曲がりながら走る。最初はちょっと出来るかなぁ〜っていう感じなんですが、慣れてしまうとボブスレーのような真っ白の中に吸い込まれていくって感じなので無心で走れます。そして昼間からストーブに薪をくべて、ずっとその炎を眺める。夜になると暖まった屋根がその上に降り積もった雪を溶かして、どかっ、どかっと雪の塊が滑り落ちていく大きな音以外はなにも聞こえない。友達の家にはレコードプレーヤーもあるので、それで音楽を聴くとパチパチとなるレコードの針のノイズが、その部屋の雰囲気にはよく合います。むしろそのレコードのノイズが無いと音楽として物足りないような気がするくらいです。夏にも同じ場所を訪れたことがあるんですが、冬と同じような気持ちになることは決してありません。もちろん開け放たれた窓から入ってくる風や虫の声も本当に素敵なんですけど、雪に閉じ込められたような屋内でストーブで温まった冬の空気にその身を満たすというのもまた本当に素敵なんです。そして冬といえば雪のちらつく中で入る露天風呂がなんといっても最高で、僕は江戸っ子なので、というか痩せ型なので長風呂が大の苦手なんですけど、真冬の露天風呂っていうのだけは1時間は入れます。何しろ暑くなればちょっと湯から上がるだけで完全に眠気が覚めるといいますか、のぼせる事もないですから。ただ昔、八幡平のほうだったと思うんですけどスキー場のすぐ横に露天風呂がありまして、そこに入って気持ちいなぁ〜と思って腰掛けていましたら、濡れた髪が凍りだしたことがありましたけど、寒波だったからだと思うんですけどね。雪が降りしきる中、空を見上げながら雪は一体どこから落ちてくるんだろう、そうやって眺めていると時の経つのも忘れるものです。
?
★★★★★★★★★★
自然の中も良いですけど街に大雪が降って景色を一変させてくれるのも大好きです。そこに住む働く人たちにとっては迷惑この上ない事でしょうけど、そこをただ客として訪れている旅行者にとっては、こんな素晴らしい一生の思い出作りはありません。今の時期であればまだ北米、アメリカの北のほうとかヨーロッパに行けば運が良ければ雪で真っ白になったニューヨークやパリなんかを見ることが出来ると思います。とは言えアメリカやヨーロッとかで気をつけなければないのは、すごい寒波がきて雪が降ると色んな飛行機がコネクションで繋がってるものですから全部止まったりして、何日も足止めになることがあることです。僕も数度足止めを食らったことがありまして、「直行便なんだから関係ないじゃないか!」と詰め寄っても、「いや君が乗る飛行機がそもそも着いてない」と言われて呆然とした事もありますし。もう6年前になりますけどウェス・アンダーソンが『グランド・ブダペスト・ホテル』という映画を作っている時に呼ばれてドイツに行ったんですけど、その時は何年に一度という大寒波がヨーロッパに押し寄せていまして、すごいことになっていました。ちょうど僕がドイツにいるっていうのをインスタで見て、ベルリンにいたトミー・ゲレロから連絡があったんですけど、「退屈で死にそうだからベルリンに来ないか」「いやいやそっちには行かないんだけど、どうした?」って言ったら結局1週間帰れなかったって言ってました。僕はその時、撮影現場のドイツなんですが川を挟んでポーランドという国境の街にいました。もともと過疎の街となって人が流出したので色んな撮影に使えるような大きなビルがたくさん残っているということでロケ地に選ばれたその街は、まるで人気が無くて雪のせいで捨てられた廃墟のような雰囲気なっていました。夜散歩に出かけてみると、あれはドナウ川の支流だったのか結構大きな国境の川が流れているんですが、もう凍結してそのまま渡ればポーランドに行けるんじゃないかという感じで、街灯の数もものすごく少ないですし、人影はなくて、なんだかこの世の果てに来てしまったなぁという気分で随分とその景色を眺めたものです。あんまり雪が降ったもので、ある日は移動が車ではなくてスノーモービルでした。乗っけてくれたのはウェスなんですけど、そもそもウェスが運転する車に乗ったことがなければ免許証を持ってるのかも怪しい感じなんですけど、とにかく彼のスノーモービルの後ろに乗って街中を飛ばして走りました。誰もいないですけど、街中の大通りをスノーモービルで走るというのは前日に車で見た景色と大きく違ってとても素晴らしい一生忘れない思い出となりました。まぁ景色だけじゃなくって、その時に凍えるほど寒かったっていうのがセットなんですけども。これからもう2月も終盤に入りますけど季節がどこもかしこも1ヶ月はずれ込んでますから、もしかしたらこれからが冬本番なのかもしれません。人気のない山奥や雪が降る音がまるで聞こえてくるような静かな場所に皆さんも出掛けてみてはいかがでしょうか?
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。