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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
<ahref="https://antenna.jp/articles/6418952">世界一有名なバックパッカー街は観光地に!?バンコク・カオサンのいま
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Theme is... BANGKOK
『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで
お寄せいただいた旅のエピソードと、
その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエア!
選曲のオーダーや悩み相談にもお答えします。
後半のテーマは「バンコク」。
バックパッカー時代の思い出が鮮明に残る街に
訓市が内装を手がけたレコードバーがオープン!
コロナ禍で現地に渡航できない中、
フルリモートで完成した店とは?
日進月歩で様相が変化するバンコクについて思うこととは?
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Say So / Rainych
Don't Think Twice, It's All Right / Bryan Ferry
Green, Green Rocky Road / Oscar Isaac
Ten Years Gone / Led Zeppelin
旅にでると / ハナレグミ
Don't Cry / J Dilla
We Let The Stars Go / Prefab Sprout
The Ballad Of Keenan Milton
That's What Friends Are For / Rod Stewart
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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作り始めてというか計画が始まってから3年もかかって、やっと終わりました。話始めたのは厳密に言えばもっと前のことになります。僕の仲良しのタイ人の友達っていうのは実家が不動産やデパートを経営する裕福な人で、新しいものが大好きなやつです。東京によく来ては、新しい店を見に行き、新しいホテルに泊まって、新しいレストランでご飯を食べる。そんな彼が大きなホテルをバンコクに作ってオープンした時に「どうだクン」と聞かれました。「このホテルや今のバンコクはすごいだろう」と。その時に僕にはなぜかそれがバブルの頃の東京を思い出させました。古い町並みや屋台が残り、まだトゥクトゥク、乗合のバイクタクシーは走り回っていますけど、大きな再開発が進み富裕層がどんどん増えていたバンコクは、すでに僕らが貧乏バックパッカーだった頃の90年代の街とは様変わりしていました。僕らが根城にしていた安宿街のカオサンロードはもう旅行客にはすっかり廃れていました。世界中へ格安航空券を手配できる旅行代理店、荷物を預かってくれるトランクサービス、テレホンカードを買い安く国際電話をかけられる電話屋などが立ち並び、海賊版の質の悪いCDを売っていたカオサン。友達にカオサンの今はどうだ?と聞くと、「竹下通りみたいだ」と言われて、その時に時の流れの速さっていうのをものすごく感じたんですけど、とにかくその時に僕は言いました。「とっても良いよ。国にとっても、国民にとっても良いことなんだろう。発展して国が豊かになるっていうのは悪いことじゃない。けれど開発だけじゃなくって古い場所も必ずとっておいたほうがいいよ。新しくピカピカで、どこよりも新しい街を作るというのは永遠にゴールのない競争レースに参加してしまうことになる」と。新しいだけが売りだと、より新しいものができた時にその輝きは失われます。「だから古い場所も絶対とっておけよ、後悔するから。そして俺たちのような旅行者っていうのは、その国にしかないところに行きたいものだよ」。そんな話を長くしました。「訓が言ってることは分かるけど、そんなのタイには早すぎるよ。まだまだ新しいもの、ピカピカした場所がみんな大好きなんだから」。それが変わったのが3年ぐらい前でした。「訓、結局古い市場があったところや旧市街にポツポツと店ができだして、とても人気が出てきた。言った通りのことになってきはじめたよ」と彼から連絡があったのです。
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僕はそのタイの友人が東京に来る度に無理矢理小さい古いバーや頑固なおじさんが1人でやっているレコードバー、雑居ビルの奥にある安くて美味い定食屋みたいなところに連れて行き続けました。新しい大きいお店と同じくらい、時間の流れの中でちゃんと残る場所も大事なんだよと、一生懸命頭に刷り込んでいったんですけど、そんな時に彼のご先祖様が最初に開いた雑貨屋の跡地っていうのが何もせず残っている。それが最近、人が集まり出した旧市街にあるっていうことで、「ここでなにかやろう、デザインできるか?」そう言われてプロジェクトが始まったのがちょうど3年前でした。4階建てのコンクリートのビルと古い2階建ての木造長屋のような建物が繋がるその場所で、ビル自体はベルギーの建築チームVVDが手がけ、僕は2階建てのほうに作るピアノラウンジとレコードバー、そしてビルの屋上に作るレストランを手がけることになりました。VVDが手がけるデザインとうまく繋がりながら、モダンなデザインで世界で人気の彼らと違い、昔からそこにあったような味を出したい。そう思っていたんですけど、何しろ時間がかかりました。ビルの躯体をデザインする彼らのデザインがなかなかフィックスしなくて変更がたくさんあって、その度にこちら側の方も手を加えましたし、建築が古くていじり出したら色んなところをやり直しということになって、結局建て直したほうが早いし安かったというぐらい、とにかく手間と時間がかかりました。やっと躯体の工事が終わって、内装工事が始まるぞっていう頃にコロナが始まりまして、この物件っていうのは生まれて初めてのフルリモートでの引き渡しとなりました。実際の場所にちゃんと立って確認しなくていいのか?という葛藤もありましたけど、プレオープンでお客さんが思い思いに楽しそうに酒を飲み、レコードに聴き入る写真や動画を送ってきてくれホッとしました。これからも変わり続けるであろうバンコクで「あの店は変わらないな」とか、「もしかして昔からずっとある店なのかな」と思われるような場所になってくれればいいなと思います。それにしてもそれにしても、若くて貧乏な頃に随分とお世話になったバンコクという街に自分がデザインした店を作れるようになるとは思いませんでした。行き始めてから25年以上。「なんかバンコクでやりたいなー」って言いながらバンコクで亡くなった親しい友人がいたんですけど、生きていたとしてもきっとバンコクで僕がデザインした店が開くって言っても信じないだろうなーと思います。生きていたらメコンを飲みながら一緒に乾杯をしたかったんですけど、まぁ過去の自分には想像出来なかったようなことっていうのは人生叶ったりするものなんですね。僕もいつ行けるのかは分からないんですけど、もしこれから仕事でバンコクに行く人、もしくはバンコク在住の方、行く機会がありましたら僕の代わりに是非そのバーに行って、メコンのソーダ割りでも飲んで、ゆっくりとしたバンコクの時間を過ごしてみてください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。