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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ホームステイで伸びる子に共通する「姿勢」
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#339 --- どこにも行けない、春休み ---
『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで
お寄せいただいた旅のエピソードと、
その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエア!
進路、恋愛、仕事などなど日々の生活で抱えている悩み相談や
選曲のオーダーにもお答えします。
後半のテーマは「春休み」。
かつて、大学受験が終わった春に訓市が訪れたのは
高校時代にホームステイで1年間を過ごしたテキサスの家。
それ以来、一度も足を運んでいない地に思いを馳せる。
コロナ禍でどこにも行けない春だからこそ、
自分のルーツを振り返ってみてはいかがでしょうか。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストもOK!
また、恋愛、進路、仕事、人生などの質問や
選曲オーダーにもお答えします。
メールは番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエストをお待ちしています!!
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手紙、ハガキの宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Let's Do It Again / Staple Singers
Lose Again / Linda Ronstadt
Eternal Flame / Bangles
The Greatest / Ariane Moffatt
夢の恋人 (Lovers Rock Edit) / UG Noodle feat. Seizo
I Want You / Concrete Blonde
I Saw The Light / Todd Rundgren
All About Love / earth, Wind & Fire
Stolen Car / Bruce Springsteen
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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今まさにあとちょっとしかお休みが残っていないっていう中を退屈に過ごしている学生さんも多いかと思います。僕も例年ですとこの3月や4月の頭っていうのが休みを取って家族とどこかに行く唯一の機会だったんですけど、それが去年も今年も無くてとても残念に思っています。子供の1年と大人の1年は進行の速さがもう全く違いますから、僕らは1年我慢しても大体何も変わらないんですけれど、子供はどんどんと大きくなってしまいます。自分は中学の頃などもう親とどこかへ行くこともほぼなかった子供でしたから、自分の子供がもう小学校の高学年になってくると、残された時間が少ないというので焦りにも似た気持ちを感じてしまいます。春休みなんですけど、僕は春休みってすごく好きで小さい時は春スキーの合宿に入れてもらったりして小学生同士で本当に楽しい時間を過ごしましたし、中高生の頃は遊びまくりました。最初にお金を貯めて1人でふらふらと海外を旅行したのも春だったなぁと思い出します。大学受験が終わって、アメリカのホームステイした家に戻ったのはちょうど春休みのことでした。自分がそこから帰国して1年半経った頃だったような気がします。たったそれだけなのに色んなことがその間にありすぎて、テキサスに戻った時にはもう浦島太郎のような気分でした。まだ20歳にもなってなかったですが、自分が大人になったような気がしたのは、アメリカのお父さんとお母さんが空港まで迎えに来てくれた時に、なんだか少し小さくなったことに気が付いたからです。家に帰って、またかつてと同じ洗濯機のある僕の部屋に戻った時、家具も何も変わらずそのままでしたが、ベッドも小さく感じましたし全てが少し色が褪せてしまったような気分でした。1週間そこに泊まって過ごしたんですけど2日目か3日目ぐらいですかね、いつも一緒に寝ていた猫が戻ってきて初めて何も変わらない気がして嬉しかったです。全く声を出さないその猫は夜中になるとどこからかすっと現れてベッドにヒラリと登ってくると、僕のお腹の上に登ってきたりして寝るのが毎日でした。名前を呼ぶとゴロゴロとだけ音がする。虐待された猫で、確か前の飼い主に声がうるさいと声帯を切られてしまったのを引き取られたこの黒猫の最大限の人懐っこさがゴロゴロという音でした。僕が家に戻ってすぐは隠れていたのに、数日経ってから夜中にするっとベッドに登ってきました。そして名前を呼ぶとやっぱりゴロゴロいう。僕はやっと自分の第2の故郷に帰ってきたと、ほっとしたような気持ちになりました。
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滞在中、休みの間の母校である高校にも遊びに行きました。部活で来ている生徒以外は誰もおらず、ガランとした校舎はとても寂しくみえました。誰もいない廊下、そこに立ち並ぶ映画に出てくるような鉄製のロッカー。僕が使っていた場所は知らない子のものになっていました。ちょうど自分がいた時に2学年下の子たちがシニア、上級生になっていました。学校にいた者と色んな話をしましたけど、僕と同級生だった者はほとんど街にはいないということでした。小さな街だったので、高校を卒業すればみんな全米中に散っていくわけです。テキサスの大都市にある大学に通う者、州外へいく者、家族ごと引っ越していく者。まだSNSはおろか、みんな携帯など無い時代の頃の話です。僕は街にさえ戻ればみんなに会えるかなと淡い期待をしていたのでがっかりしたのですが、これがアメリカの映画でよく観た場面なんだなぁとひどく納得もしました。僕は東京生まれの東京育ちで、友達たちや幼馴染みがいつも近くにいて、会おうと思えばすぐ会えるというのが普通だと思っていたのです。こうやって本当にバラバラになっていくことがあるんだ。これが普通の街での日常で、東京が特殊なんだなぁと実感したわけです。そしていつか東京でみんなが近くにいたとしても、この街のようにばらばらになるんだろうか? そして一緒に過ごした時のことがいつか幻のように感じたりする日がくるのだろうか? そう考えて全ての景色が少し物悲しく見えたのも覚えています。そもそもこの人口1,700人の街もいつまでもあるわけじゃないのかもしれないと。小さなガソリンスタンドとそこの横のちょっとした雑貨屋が全て、街のメインストリートと呼べる道にa開いている店が1軒もない街に。あの時から一度も僕はその街に戻れていませんが、たまに連絡を取るアメリカの家族はまだそこに住んでいて、街はなくなっていないということにホッとしていますが、海外はおろか国内も色んなところに行けない春休み。帰省することすら難しいかもしれませんが、なにか自分のルーツやちょっとした昔を振り返るのは、この時期にとても良いことなのかなと思います。沢山の別れがあってその上で新たな生活が始まるのがこういう春の時期なのですから。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。