★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
追悼ヴァージル・アブロー。その功績を人気記事とともに振り返る
★★★★★★★★★★
『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★
#377 --- いつかまた会おう! ---
番組前半はリスナーの皆さんから寄せられた
“お便り”を紹介しながらリクエスト曲もオンエア!
後半のテーマは「ヴァージルの思い出」。
先日、惜しまれつつこの世を去ったデザイナー、
ヴァージル・アブロー。
とあるパーティーで出会って以来、
10年以上にわたって親交があった訓市が
彼の訃報を聞いて感じたこととは?
仕事上ではなく友人として一緒に時を過ごした
ヴァージルの人となり、魅力、思い出など…
訓市が語る。
★★★★★★★★★★
「Pay It Forward」のスローガンで展開している
クラウドファンディングはJ-wAVE冬キャンペーン、
『PASS THE LOVE』の特設サイトをチェックしてください。
★★★★★★★★★★
「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
メッセージをお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからの“お便り”をお待ちしています!
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Heart-Shaped Box / Amber Mark
Maxine / Donald Fagen
Christmas In Harlem / Kanye West
Four / Brendan Eder Ensemble feat. Edward Blankman
All Alone (ふっと一息) / ルースターズ
The Love Parade / Dream Academy
Slide On Me / Frank Ocean
Apocalypse / Cigarettes After Sex
Only In Dreams / Weezer
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★★★
今月の頭ですが、デザイナーのヴァージル・アブローが亡くなりました。まだ41歳。彼は色んなことを手掛けていたので実際彼が何の職業の人だっていうのが分からないっていう人もいるかと思いますが、簡単にいうと元々カニエ・ウェストの元でアートディレクターとして働きながら『OFF-WHITE』という自身のブランドを設立したのが2014年。ファッションショーを中心に回るハイブランドの世界にストリートのテイストを持ち込んで、あっという間にルイ・ヴィトンのメンズアーティスティックディレクターに上り詰めたというのが一番世の中に知られている姿でしょうか。はっきり言って白人だらけのハイファッションと呼ばれるコレクションブランドの中で黒人である彼が、その最高峰といわれるルイ・ヴィトンのディレクターになったというのは当時ものすごいニュースでした。エンターテイメント、映画界でもそうですが出演者には今ダイバーシティが叫ばれてアジア人も黒人もあらゆる人種の人がいますが、裏側を覗くとそこはまだまだ真っ白な世界です。お金を出す出資者やプロデューサー、社長も。そんな中において彼は大きな風穴をあけて、ゲームチェンジャーとして それまでのファッション界の仕来りや慣習というものを結果的に壊した人でした。彼が突然亡くなったニュースは世界中を駆け巡り、Instagramにはあらゆる人種の人がその死を悼んでいましたが、僕もそんな中の一人でした。僕が彼を最初に知ったのは『OFF-WHITE』というブランドを立ち上げた後です。東京によく来ていて、ディナー会で知り合ったのが多分最初だったと思うんですけども、それから話をするようになりました。彼はSNS、Instagramを本当に使いこんでキャリアを築いた最初期のデザイナーでした。気になった若者、面白そうな子を見つけてはダイレクトメッセージで本人に直接連絡する。そしていつも世界中を飛び回っていました。昔、10ヶ月連続で色んな場所で会ったことがあります。会う約束をしていたこともありましたがほとんどが偶然で、ヴァージルにも「お前の仕事は一体なんなんだ!」と言われたことがあります。「よく分からない」と2人で笑い合いましたが、「俺たち飛行機に乗り過ぎで、いつか病気になるかもな。そしたら歳上のクンが先だな」という話をしたことがあります。けれど7歳歳上の僕より、ヴァージルの飛行機の乗り方というのはちょっと尋常じゃありませんでした。
★★★★★★★★★★
彼は家があるシカゴとルイ・ヴィトンのオフィスのあるパリを1ヶ月に6回往復して、その間にドバイに行ったり香港やアメリカに行ったり。2日に1回は飛行気で寝ていたと思います。もちろんその間にも携帯片手に指示を出したりして働いていたのですが…。そして今のキッズと繋がっていないといけないと夜はDJに出かけて行く。彼はSNSを使いこなすだけでなく、真のジェットセッターとして世界中を飛び回り、同時にたくさんのプロジェクトを動かしていました。「どうやったらそんなことが可能なのか?」と始終聞かれていましたが、彼の答えはいつも「やろうと思ったら誰でも出来る。ただそれは簡単じゃないけれどね」。お金を持って家を世界中に建てたり、高級車を乗り回すような人じゃありませんでした。お金の余裕が生まれたら、それを次にやりたいことを可能にする為に突っ込む。僕はそんな彼がとても好きでした。生まれ故郷のシカゴで体調を崩す数ヶ月前、2019年の夏に大展覧会がありました。それは今までの仕事全てを網羅するレトロスペクティブのようなもので、「普通それをやるのはキャリア終盤の人か、死んだアーティストだぞ」と言うと「生まれ故郷の黒人のキッズたちに夢が叶うというところを見せたい」と言っていました。どこへ行っても黒人代表のように扱われ、また本人もそれを意識して行動していましたが、実は本当にフラットな人でした。その故郷シカゴの展覧会のアフターパーティーで「一緒にパーティをやらないか?」と聞いてきた相手がシカゴでは誰も知る人のいない日本人の僕たちだったのですから。一緒に東京で忘年会をやったことがあり、すごい楽しくて「いつかまたやろう!」「今年こそ一緒にやろう!」ときたのが今年の夏のことでした。僕らはコラボをするとか仕事をする関係じゃない、普通の友達でした。そこから連絡が無いのは忙しい証拠と思っていた矢先の訃報でした。「若すぎる」「生きていたらどれだけのことができたのか?」そんな声が世界中に溢れていますが、どうなんでしょうか。普通に働いて普通に寝て80歳まで生きるのと、若いうちにしかできないようなことを半分の時間でやりきって半分の歳で死ぬのと。量より質という言葉がありますが、ヴァージルは確実に質を取りました。短い時間でしたけど誰よりも質量のある日々を過ごしたと思います。アメリカでは亡くなった人に“rest in peace”とか“rest in paradise”と言います。平和に安らかに眠れ、天国で安らかにという意味ですが、僕はヴァージルにそう言う気はありません。なぜなら天国でもきっと移動しまくりながら世界中のキッズたちの動向を見渡し、iPhoneにメモをし続けていると思うからです。いつかまたダンスフロアで会おうヴァージル。そして一緒に踊れると良いね。また、その日まで。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。